第61話「自覚と決心」
「みんな、良い子達だったわね」
みなさんとお別れして、帰りの車内。
運転席の母が、嬉しそうに今回の感想を話してくる。
「ええ、皆さん本当に良いお友達です」
「ふふ、麗華にも良いお友達が出来たみたいで安心したわ」
「そうですね」
母の言う通りだった。
同じ四大美女と呼ばれてきた彼女達とは、境遇が同じだったこともありすぐに打ち解けることができた。
これまでの人生、常に一定の距離を置かれてきた対人関係だけれど、みなさんとは等身大のお付き合いが出来ている。
そのことが、わたしはとにかく嬉しかった。
胸を張ってお友達と言える出会いが出来ていることに、ただただ感謝したい気持ちでいっぱいなのであった。
「まさか麗華から、別荘でBBQだなんて言い出すとは思わなかったもの」
「ふふ、だって大切なお友達ですから」
誘う時は勇気が要ったが、今ではやっぱり企画して良かったという気持ちでいっぱいだった。
それだけ、今回の集まりはわたしにとってもずっと楽しかった。
きっと母からしても、わたしがこうしてお友達と楽しく過ごしていることに満足しているのだろう、嬉しそうに微笑む母の顔にはそう書いてあるようだった。
「それにしても、最初は驚いたわ。まさか本当に、麗華に負けないぐらい可愛い子ばかりだとは思わなかったわ」
「ええ、嘘ではなかったでしょう? みんな本当にお綺麗です」
「ふふ、じゃあ麗華も負けてられないってわけね」
「何の話です?」
「さぁ? 何かしらね」
そう言って、全て分かっているかのように微笑む母。
そんな母の態度に、わたしは顔が熱くなってくるのを感じた。
――バレバレ、ですよね
そう、もうわたしの気持ちは母にバレているのだろう。
気持ちを知られていたことが恥ずかしくはあるけれど、この際だから少し相談してみることにした。
「わたしは、どう見られてるんでしょうか」
「そうね、他の子も可愛いから心配になっちゃうわよね。でも、麗華ちゃんだって負けてないわよ。だから、わたしの見立てではまだ五分五分といったところね」
「五分五分、ですか」
「うふふ、自分の娘だけど、麗華ちゃんをもってして五分五分だなんて普通に考えて可笑しいけどね」
面白そうに、コロコロと微笑む母。
何を笑っているのかは言われなくても分かるため、わたしも一緒に笑った。
たしかに自分で言うのもなんだけれど、これまで何度も告白されたり異性の方からアプローチされてばかりだったわたしが、いざ自分から向き合おうと思ったら確率は五分五分だなんて、よりにもよってなんでそんな争いをしているのだろうと。
「みんな可愛いし、個性もそれぞれ。女性として優劣を付けるのは無理に近いのだけれど、それが対良太くんとなると話は別ね」
「別、ですか」
「ええ、対良太くんとして見た場合――」
「楓花さん、ですよね」
「あら? 分かってるのね」
やはり、当たりだったようだ。
母の見立てでも、やはり楓花さんが一番良太さんに近い。
それはわたしも分かっていたことだから、そのことに対して何も言うことは無い。
昨晩、わたし達は同じ部屋で眠った。
勿論お友達と一緒に寝るという経験は楽しかったし、そのことに対しては満足している。
しかし、それでも良太さんの隣はやっぱり楓花さんだったのだ。
妹なのだから、当然と言えば当然だろう。
しかし、その当然でも明確な距離として感じられた。
このことに対して、家族でも無いわたしがずるいなんて思うことはきっと違うのだろう。
それでも、良太さんの妹として、わたし達より近い距離に当たり前のようにいられる楓花さんが羨ましくないと言えば、それは嘘になる。
今のわたしがそんな風に思ってしまうのは、あの時の良太さんの何気ない一言がキッカケだった。
それは、別荘へ到着して荷下ろしをしている時のこと。
不意に良太さんから言われた「親子揃って美人」と言われたという誉め言葉。
普通に考えれば、ただのリップサービスというやつだろう。
けれどわたしにとって、ニッコリと微笑みながら純粋に良太さんが言ってくれたその言葉が、どうしても嬉しかったのだ。
人間何がキッカケになるかなんて、本当に分からないものだなと実感する。
わたしの場合、あの時の一言がキッカケになったのは間違いない。
そんな、人からしたら些細なキッカケでも、わたしはそれから良太さんを見る度に、前以上にドキドキしてしまっているのだからもう仕方が無い。
あの言葉をそのまま受け止めるなら、もしかしたら良太さんもわたしに気があるのかなと思うだけで、こんなにも欲してしまう自分がいるのだから――。
「それで、麗華ちゃんはどうするの?」
「どう、ですか……そうですね、このままじゃ駄目ですよね」
「そうね、のんびりなんて出来ないわね」
「ええ、だからわたしも頑張ってみます。上手く行っても行かなくても、後悔だけはしたくありませんから」
「うん、よく言った! 応援しているわよ。それから、このことは勿論パパには黙っておくわ」
そう言って、悪戯にニッと微笑む母。
そんな母に釣られて、わたしも思わず笑ってしまう。
きっとこの道は、簡単では無いのは確かだろう。
けれど、さっき言葉にした通り後悔だけはしないように頑張ってみようと思う。
胸の奥にしまっておくはずだったこの感情と、わたしはちゃんと向き合うことに決めたのであった。
四大美女、最後の一角も動き出す決意をする。
ついに、ラブコメの開幕である!!(61話)




