第52話「BBQ」
「それじゃ、早速始めましょうか」
荷物を運び終えリビングで少し休憩していると、柊さんのお母さんが立ち上がってみんなに号令をかける。
これから一体何を始めるのかと言えば、それは勿論テラスでのBBQだった。
予め買い揃えてくれていた食材をテーブルの上に並べる。
肉、野菜、そして魚介類と、正直この人数にしてはちょっと多いように思える食材の数々。
しかもその一つ一つが素人目でも良い食材で、これからこの肉を食べれるのだと思うだけで途端にテンションが上がってくる。
「りょ、良太くん。これ、シャトーブリアンって書いてあるよ……」
「あー、あれな、知ってる。昔よく食べたわ」
「そういうのいいから」
俺の下らない見栄張りより、その霜降りの極限を尽くしたような現物のお肉に釘付けになる楓花。
それは羽生さんや星野さんも同じで、美少女三人が興味深そうに食材に見入っている姿は中々ギャップというか可愛らしいものがあった。
「今日は麗華のお友達が一緒だって言うから、お母さん気合入れて買いすぎちゃったの。残しても勿体ないから、みんな遠慮せず食べちゃってね」
「「はい!」」
そんなお母さんのフォローもありつつ、楽しいBBQがスタートとなった。
まずは準備の担当分けをする。
まずは普段から炊事になれている柊さんとお母さん、そして意外と家庭的な羽生さんの三人が食材の下ごしらえをし、それから星野さんはお皿を並べたり飲み物の準備に回った。
その結果、残った俺達兄妹が火起こしを担当する事となった。
まぁ火起こしと言っても着火剤に火を付け炭火を用意するだけだから、ちょっと熱い以外どうという事はない。
まぁこれは男の仕事だよなと思いながら俺がせっせと火を起こしている横で、ただその様をしんどそうに隣で見ているだけの楓花。
やはりここでも、残念ながら妹の干物っぷりは健在なのであった。
「――良太くん、楽しそうだよね」
「ん?そうか?まぁ楽しいよ」
「ふーん、わたしとは話さなくても楽しいんだ」
「なんだよそれ、いじけてんのか?」
「別にそういうわけじゃないけど――馬鹿」
「うぉ!?お前、火扱ってるんだから叩くんじゃねーよ」
「ふんだっ」
何やら不機嫌な楓花は、いきなり俺のことを叩くとそっぽ向いてしまうのであった。
何にそんな不機嫌になっているのかは分からないが、とりあえず一つ言える事はお前も突っ立ってないで手伝えって話だった。
◇
そして食材が揃ったところで、BBQ開始となった。
男の俺は率先して肉や野菜を焼き、そして焼けた物からみんなに配っていた。
「あ、あんたばっかりにやらせるのも悪いから、手伝うわよ」
すると、そんな俺を気遣ってくれたのか羽生さんが隣へやってきて一緒に焼くのを手伝ってくれた。
しかし、まさか羽生さんが手伝ってくれるとは思わなかった。
ちょっと似た者同士だとは思っていたが、当たり前のように与えられたお肉をただ美味しそうに頬張る楓花とは大違いだった。
「お、ありがとう助かるよ。熱くない?」
「え?だ、大丈夫よこのぐら――あつっ!」
「ほら、たまに油跳ねるからさ。大丈夫、火傷してない?」
「へ、平気よこのぐらい!」
でも何だろう、手伝いに来てくれたと思ったら、まるで絵に描いたようなツンデレ仕草を発揮する羽生さん。
しかし、アニメとの大きな違いと言えばそこに全くデレが無い事である。
そう思った俺は、せっかくだからどうにか彼女をちゃんとツンデレさせる事ができないかという謎の挑戦をしてみる事にした。
「駄目だよ、火傷だったら跡になっちゃうよ、見せて」
「は?べ、別にこのぐらい見せなくても――」
「いいから」
そう言って俺は、グラスに入っていた氷を取り出すと羽生さんの手を無理矢理取って確認する。
すると、白く透き通るような肌に少しだけ赤くなっているところがあるため、恐らくそこがさっき油が跳ねたところだろう。
だがこの程度なら、確かに火傷を心配する程では無さそうだった。
こうして俺は、どうだ?俺の親切攻撃は?と若干のやってやった感と共に羽生さんの手から顔へと視線を移すと、顔を真っ赤にする羽生さんの姿が目に飛び込んできた。
「も、もう平気だからいいでしょ」
「あ、ああ、ごめん」
そして恥ずかしそうに手を引っ込める羽生さんに、俺も慌てて手を離した。
――ちょ、ちょっとやりすぎちゃったかな
顔を赤らめながら恥ずかしがる羽生さんの姿に、俺まで顔がどんどん熱くなっていくのを感じてしまう。
そして、そんな俺達のことを、やっぱり不満そうに眺める楓花の姿が目に入ったのであった――。
一人を除いて、何だかラブコメしてきてますね。
続きます!
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