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第49話「いつもの集まり」

 授業が終わり、今日も今日とて俺達はいつもの喫茶店に集まる。



「へぇ、今日も来たんだ」

「な、何よ?来ちゃ駄目なの!?」


 そして、今日も遥々東高から喫茶店までやってきた羽生さんと楓花はいがみ合う。

 一見仲が悪そうに見えるが、今ではこれはこれで結構相性が良いのではないかと思っている。


 今日も羽生さんに悪態をつく楓花だが、確かに言う通りで東高はここから決して近くはないのだ。

 それでも羽生さんは、こうして毎回この集まりに参加してくれているというのが俺としてもちょっと不思議だった。

 毎回仕方なく来ている感を出しつつも、なんやかんやあれから羽生さんは皆勤賞なのである。


 ――まぁ世間では、こういうのをツンデレって言うんだろうな


 そんな羽生さんはと言うと、今日も楓花の歯に衣着せぬ物言いにしどろもどろになっていた。

 きっと彼女自身、こういう扱いをされる事には慣れていないのだろう。

 戸惑いながらも怒っている姿を見ていると、逆に普段の自信満々な感じより自然体で可愛いところもあるよなって思えた。


 きっと学校では、美しい彼女の事をみんな崇めているのだろう。

 でも実際には、凄く分かりやすい性格をしているし、それに結構可愛いところもある女の子なのだ。



「あの、良太さん。隣、いいですか?」

「あ、うん。どうぞ」


 そんな事を思いながら今日も二人の痴話喧嘩を眺めていると、星野さんが断りを入れつつ俺の隣にちょこんと座ってきた。

 そして何が嬉しいのか、満足そうに微笑む星野さん。

 その姿は聖女という二つ名に相応しい程、彼女が近くで微笑んでくれるだけで癒されるのであった。



「あ、良太くんの隣」

「えへへ、今日はわたしが座っちゃいました」

「ちょっと!今日はわたしがそこに――」

「はっ?なんで羽生さんが出てくるのよ?」

「い、いや、それはその――は、話があったからよ!」

「話?何よ?」

「そう!ほ、ほら、もうすぐGWでしょ?そ、そのことでちょっとねっ!」


 顔を真っ赤にしながら、露骨に言い訳をする羽生さん。

 それっぽい理由を付けているけれど、咄嗟に今思いついた事を言っているというのが見え見えだった。


 でもまぁ、ここはそんな羽生さんに乗っかっておいてあげることにした。



「そうか、もうすぐGWか」

「あ、あの!良太さんは何か予定でも?」

「いや、特には無いかな。まぁ家で好きなVtuber見るぐらいかな」


 予定を聞いてくる星野さんに、俺は返事をしながらアイコンタクトを送る。

 すると、それに気付いた星野さんは途端に顔を真っ赤にしながら、嬉しそうに微笑んでくれた。

 なんていうか、そんなに嬉しがってくれるなら俺としても嬉しい限りだ。

 リスナー冥利に尽きるってやつだな、うん。



「――また良太くんは」

「な、なんだよ?」

「別に――」


 そして楓花は楓花で、何故か今日も不機嫌になるのであった。



「じゃあ、みなさん宜しければGWにうちの別荘に遊びに来ませんか?」


 そして、ここまで一部始終話を黙って聞いていた柊さんが、驚きの一言を口にする。



「――え、別荘?」

「ええ、宜しければ」


 どうやら別荘というのは、本当にあの別荘なようだ。

 何となく生まれが良いんだろうなとは思っていたけれど、生まれてこの方別荘持ちの人なんて会ったことが無かった俺は素直に驚いた。



「近くに川もあるので、そこでBBQとかも楽しめますよ」

「よし行こう!!」


 BBQと聞いて、ガッツポーズをしながら行く事を即決する楓花。

 まぁそんなお調子者の楓花は一旦置いておくとして、俺は残り二人の反応を伺う。


 羽生さんは何かを考え込むような素振りをしていたが、何か良いことを思いついたのか不敵に微笑むと「分かった、行くわ!」と返事をしていた。

 そんな露骨に何かを企んでいる羽生さんだが、これだけ分かりやすい彼女なら大して心配はいらないだろう。


 そして星野さんはというと、恥ずかしいのかもじもじと悩んでいるようだった。

 でも柊さんの「星野さんはどうかしら、ご一緒できると嬉しいのだけれど」という一言が嬉しかったのか「それじゃあ、行きます」と返事をいていた。


 こうして、四大美女と呼ばれる彼女達の満場一致に満足した俺は、うんうんと頷きながら一言だけ口にする。



「良かったね、みんないってらっしゃい」


 俺は彼女達がなんやかんや仲良くやれている事に満足しながら、そう一言だけエールを送った。

 しかし、俺の一言を聞いた四人はというと、一斉に俺の方を振り返る。

 そして四人とも、まるで信じられないものでも見るような目で俺の事を見てくるのであった。

 他の三人ならまだしも、柊さんまでそんなリアクションをしてきたのは正直ちょっと意外だった。



「いやいや、何言ってるの良太くん」

「ええ、貴方大丈夫?」

「りょ、良太さぁん……」

「驚きました」


 そして四人は口々に、俺に向かって言葉を投げかけてくる。


 まぁ俺は、そこいらのラブコメ鈍感主人公とは違う。

 だから彼女達が、何故そんなリアクションをするのかぐらい分かっているつもりだ。


 でも、よく考えて欲しい。

 女の子四人の中に男一人混ざって旅行に出掛けるなんて、それこそラブコメのハーレム主人公ぐらいだろう。

 普通にハードル高いし、行ったところで絶対にどうしていいか分からなくなるに決まってる。

 しかも相手はあの四大美女だ、どう考えても気軽に俺も行くなんて言える状況じゃないだろと。


 だから俺は、正直別荘にはちょっと興味があるけれど、今回は行くつもりは無かった。

 しかし四人の視線から察するに、どうやらそれを良しとはしてくれないようだった。



「――ほ、ほら、俺男一人だし?」

「何言ってるの、わたし達毎日一緒にいるじゃん」

「あ、貴方がいないと締まらないでしょ!」

「りょ、良太さぁん……」

「ちゃんと部屋も別々で用意できますし、そこまで気になさらなくても大丈夫ですよ」


 柊さんのそのあまりにも建設的な一言で、俺は逃げ道を無くして気軽にノーとは言えなくなってしまう。

 そして楓花や羽生さんのそれは良いとして、さっきから泣きついてくる星野さんにいたたまれなくなった俺は「……分かったよ、行って大丈夫なら行くよ」と力なく返事をするしかなかった。


 すると、俺の返事を聞いた四人は一斉にぱぁっと表情を明るくさせると、何故かハイタッチをし合って喜んでいた。

 そんなに俺が行くのが嬉しいもんかねと少し呆れながらも、悪い気はしない自分がいるのであった。


 こうしてGWは、柊さんの別荘へと遊びに行くことになったのであった。



GWは、柊さん家の別荘へ出かける事になりました。

結局ハーレム主人公してる良太くん、一体どうなるのでしょう。


そして何より、49話でまだGWなことに作者も驚きです。笑

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― 新着の感想 ―
[一言] サミットは定例開催となった/w 争奪戦はトーナメントではなく常時バトルロワイアル。 天使様は外ではお兄ちゃん呼びはしないのね。そういえば。そこらへんも、単なる妹として認識されたくない表れな…
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