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第40話「そして気が付く」

「あー、もう!違うから!星野さん!こちらは妹の楓花と、お友達の柊さん!それから楓花、こちらは星野さんと言って、色々あって最近知り合ったんだけど、ここでちょっと人生相談に乗っていただけだ!」


 痺れを切らした良太さんが、自棄になったように説明する。


 それでも疑う楓花さんに、おどおどとした様子の見知らぬ美少女。

 そこにわたしまで居合わせてしまっているのだから、良太さんからしたらもしかしなくても最悪な状況でしょう。


 それでも事情が説明された事で、この状況が解消される――わけもなく、だったら何の相談なのだと次の疑問に食い下がる楓花さん。

 しかし、そこは良太さんが兄としてしっかりと釘を刺した事で、結果的に事態はすぐに終息したのでした。

 他の方の事情にまで踏み込むのは宜しくない事は、楓花さんも理解はしていたようです。


 こうしてようやく落ち着いたように思われたので、楓花さんと一緒に押し寄せてしまったお詫びも込めて、ここは良太さんに助太刀する事にしました。



「良太さん――いえ、星野さん?その相談というのは、わたし達がいたら不味いですか?」

「え?あ、そんな、別に大丈夫ですけど――」

「そうですか。わたし達もお店に入った手前、何か注文しないと迷惑になってしまいますので、問題無ければご一緒させて頂ければと思いまして」

「は、はい、そうですね。わたしは大丈夫です、けど――?」


 少し困った様子の星野さんは、良太さんに向かって確認するような視線を向ける。

 そんな星野さんに気が付いた良太さんが小さく頷いた事で、無事ご一緒出来る事になったのでした。


 良太さん達からしてみれば恐らく迷惑なのでしょうが、それでもこの状況に少しワクワクしてしまっている自分がいる事に、わたしは変わったなと思わず笑ってしまいました。




 ◇



「星野さんって、もしかして星野桜さんですか?」

「え?は、はい、そういう貴女は、柊麗華さん、ですよね?」


 見知らぬ美少女が星野さんと名乗った事で、わたしはある程度確信をもってフルネームを聞いてみると、やっぱり本人でした。

 そして星野さんも、驚くことにわたしのことを知っておりました。


 その容姿からもしかしてと思っていたのですが、どうやら星野さんも同じことを思ってくれていたのは素直に嬉しい事でした。


 こうして同じく四大美女だなんて呼ばれているわたし達は、初対面でもシンパシーのようなものを感じていたのでしょう。

 それは楓花さんの時と同じであり、また新たな仲間とも呼べる方とこうして知り合えたという事は、わたしにとっては素直に喜ばしい事でした。



 こうして、星野さんの相談事はどうやら後日で良いとの事なので、わたしは新たに知り合えた同じ境遇の同士とも呼べる星野さんと交友を深める事が出来ました。

 星野さんは普段から一人でいる事が多いとの事で、理由を聞いてみればわたしと似たような感情を抱いている事が分かりました。

 だから、その気持ちがよく分かるわたしは、星野さんと馴染むのに大して時間を要しませんでした。


 そんな似た者同士とも言える女の子とこうして知り合えたのも、今目の前で仲良く兄弟喧嘩をしている良太さんと楓花さんのおかげだなと思うと、本当にこの二人と出会えてよかったと改めて思えた。


 それに、この二人に出会えたからこそ、今のわたしはこれだけ変わる事が出来たから。


 そんなわたしだからこそ、お節介かもしれないけれど星野さんにも同じようになって欲しいと思いました。

 もしかしたら相談事というのも――なんて思いもしましたが、言われていない以上詮索する事はしないでおきました。


 それから小一時間、みなさんと一緒にお茶をするこの時間は、わたしにとってただただ有意義な時間となりました。

 こうした関係の広がりは、初めは楓花さんが居るおかげだと思っていたのですが、最近ではもしかしたら楓花さんでは無く良太さんが居るおかげなのではないかと思っています。


 現に、星野さんとは良太さんのおかげで知り合う事が出来ましたし、楓花さんと仲良くなる事が出来た事だって良太さんのお気遣いあっての事でしたから。


 そう思うと、やっぱり良太さんはわたしにとっても特別な存在であり、今では欠かす事の出来ない大切な人の内の一人でもあるのでした。


 入学して僅かひと月足らずで、わたしの周りはこんなにも変化している。

 今のわたしは、そのことが嬉しくて堪らなかった。



「あ、柊さん、駅まで送って行こうか?」

「いえ、お構いなく」


 お店を出ると、良太さんから送っていこうかと声をかけて下さいました。

 わたしはそんな良太さんの有難い申し出をお断りしつつ、一人で駅へ向かって歩き出す。


 ――送って行こうか、ですか


 駅へ向かって一人歩きながら、さっき言われた言葉を思い出す。

 これまでの人生、純粋な善意から男性の方にそんな事を言われたのは初めてでした。

 元々は星野さんとの用事があり、そして楓花さんもご一緒している状況でも、これから駅へと向かって逆方向へ一人帰らなければならないわたしの事を気遣ってくれる。

 そんな良太さんの優しさが、わたしは嬉しかった。

 だからわたしは、一人歩きながらもどうしても頬が緩んできてしまう。


 そして、そんな打算の無い純粋な優しさを前に、わたしの中で一つの感情が生まれつつある事を感じながらも、それはまだ胸の奥に大事に秘めておく事にしました。



 ――それでも、もし何かのキッカケがあれば……


 なんて事を考えながら、いけないと分かっていてもその全く予想の出来ない未来に少しワクワクしてしまっている自分がいるのでした。

以上、柊さん視点でした。

ラブコメが加速してきているように思います。

その上で、楓花ちゃんはどうする?そして、四人目の四大美女とは!?

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― 新着の感想 ―
[一言] 「まだ」ね。きっとそれはそう遠くない将来。 そう。血で血を洗う戦争が始まるのは/w
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