第4話「登校」
次の日。
今日からは通常授業が始まるため、俺はいつも通りセットした目覚ましで目を覚ますと、それから朝の支度を開始する。
昨日は楓花のせいで帰り際色々あったのが若干気がかりではあるが、まぁ妹だと伝えてあるし大丈夫だろうと自分に言い聞かせ、俺は軽い気持ちでリビングへ向かった。
「あ、おにいちゃんおはよー」
すると、何故か俺より先に楓花が起きており、既に支度を終えた状態で何事も無いような涼しい顔をしながら朝食をとっているのであった。
「おはよう楓花。――ていうか、何で今日はもう起きてるんだよ……」
「え?嫌だなぁお兄ちゃん、一緒に学校行くために決まってるじゃん」
嫌な予感がした俺は、さりげなく楓花に理由を確認すると、残念ながらその嫌な予感は的中していまっていたのであった。
「お、おい、昨日も言ったろ?兄妹で一緒に登校とか恥ずかしいだろって」
「え?それならわたしも言ったよね?分からせるからって」
戸惑う俺を楽しむように、楓花はそんな事を言ってくるのであった。
昨日言ってたあの謎の一言はそういう意味だったのかと、俺は今になって頭を抱えてしまうのであった。
ていうかそもそも、なんで楓花はそこまでして一緒に行きたがるんだ?
恥ずかしいのはお互い様なはずなんだけどなぁ……。
「あら、いいじゃない楓花もまだ学校に慣れないんだし、一緒に行ってあげなさいよ」
「そうだぞ良太。兄妹仲良くなハッハッハッ」
そして、そんな兄妹のやり取りを最初から聞いていた両親までも、楓花の味方についてしまったのであった。
確かに客観的に考えて見みると、間違っているのは俺のような気がしなくもないのだが、それでも恥ずかしいものは恥ずかしいし、何より楓花と居ると何かと目立ってしまうのが一番気がかりなのだ。
「てことで、今日から宜しくね?おにーちゃんっ♪」
甘えるような、それでいて勝ち誇るような絶妙な表情を浮かべながら微笑む楓花。
こうして俺は、渋々楓花と一緒に登校する事になってしまったのであった――。
◇
家を出ると、外は綺麗に晴れ渡っていた。
まだ桜も咲いており、そんな景色にこれから新たな一年が始まるという事を実感させられるのであった。
俺は一回大きく伸びをすると、今日も一日頑張ろうと気合を入れた。
「良い天気だねー。さ、早く行こう良太くんっ♪」
しかし今日も楓花は、一歩家を出ると俺の事をお兄ちゃんではなく良太くんと呼んでくるのであった。
本当に何の嫌がらせかは分からないが、今日の楓花は朝から何がそんなに嬉しいのか、とにかく上機嫌でノリノリなのであった。
「……なぁ楓花、どうしてもお兄ちゃんじゃ駄目なのか?」
「んー、駄目かな♪」
「駄目ですか」
「うん、駄目♪」
「……もういいよ分かったよ」
なんだかこれ以上言っていると、まるで俺が妹にお兄ちゃんと呼ばせたがっている変態兄貴みたいに思えてきたので、もうどうでも良くなってきた。
まぁきっと、兄の事を名前で呼ぶ妹なんてきっと沢山居るだろうと思いながら、理由は相変わらず謎だが慣れない妹からの名前呼びを受け入れる方向で考えるようにした。
「ところで楓花、新しい学校は上手くやっていけそうか?」
「んー、どうだろ?」
「どうだろって、なんか客観的だな。大丈夫か?」
「まぁいいよ、大丈夫大丈夫」
「自分の事なのに、随分と適当だなぁ……」
自分の話をしているのに、楓花はまるで他人の話をするようにさらりと流してしまうのであった。
やっぱり他人に興味が無いのか、それとも俺が思っている以上に図太い性格をしているのか何なのか。
「だってね」
「だって?なんだよ?」
「へへっ、だってまた同じ学校に良太くんがいるもん」
そう言って嬉しそうに微笑む楓花を前に、俺は思わず顔が熱くなるのを感じた。
何妹にドキドキしてんだよという話だけど、今のデレは中々兄の俺でも刺さるものがあった。
流石は四大美女と呼ばれるだけあって、至近距離でその笑顔を向けてくるのはずるい。
そして、いつも家での干物姿ばかりに見慣れてしまっていたが、ちゃんとした楓花ってよく見るとこんなに可愛かったんだな――。
「――ま、出だしが肝心だから、ちゃんと友達作るんだぞ」
俺は照れ隠しをしながら、さりげなくそう伝えて置く。
やはり環境が変わった時、出だしで友達作りを失敗するとすぐにグループが出来て取り残されてしまうなんて事が起きがちだからな。
だから楓花には、そうなっては欲しくはなかった。
出来る事なら、俺の時と同じように良い友達に囲まれて楽しい学校生活を送ってくれたらいいなと思った。
「友達かぁ……まぁ気が合いそうな子いたらそうするよ」
しかし楓花は、返事はしたもののやっぱりどこか客観的というか、そんなに気にしてなどいない様子だった。
まぁ、一人が好きな人も居るだろうから、友達が沢山いる事が全てではないと思う。
それでも、やっぱりクラスで孤立して悩むような事にはなって欲しくないから、一人でも良いからそういう気が合う友達が見つかるといいなと思った――。
「――うん、でも心配してくれてありがとね!今のはちょっと嬉しかったから、特別に楓花ちゃんポイントを3ポイントあげるよ」
「ハハッ、なんだよそれ。集めたらなんかいい事あるのか?」
「10ポイント集めるとなんとっ!」
「な、なんと?」
「――えへへ、やっぱり秘密っ♪」
そう言うと楓花は、歩いている桜並木を駆け出して行った。
そして、桜が舞い散る中振り返って微笑む楓花の姿は、まるで天使が舞い降りたかのようにただただ可憐で美しかった――。
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