表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

24/64

第24話「お茶」

 放課後。


 俺は今日も楓花、そして柊さんというお馴染みの豪華面子と共に一緒に帰宅する。


 帰り際、石川さんが何か話しかけてこようとしてきたのだが、そこへ楓花達が現れた事で石川さんは「やっぱ何でもない、ごめんね!」と言って部活へと向かって行ってしまったのが俺はちょっと気がかりだった。


 何か用事でもあったのだろうかと思いながら、今日も楽しそうに話しながら一緒に帰宅をしている四大美女二人の背中を眺めながら、俺は一歩後ろを一人歩いていた。


 こうして見ると、柊さんの綺麗な黒髪のストレートヘアーに、楓花のフワフワとした茶色いロングヘア―、二人ともその後ろ姿だけでも美少女オーラが漂っており、こうして見ているとその名の通り天使と大和撫子が楽しそうに会話をしているように見えた。


 ――この二人は、一体何をそんなに楽しそうに話してるんだか


 俺は二人を眺めながらそんな事を考えていると、突然後ろを振り返ってきた楓花に声をかけられる。



「ねぇ、良太くんもそう思うでしょ?」

「ん?すまん聞いてなかった」

「もうっ!だから緑茶とほうじ茶なら、ほうじ茶のが美味しいよねって!?」

「は?何の話だよ」


 何事かと思えば、楓花は緑茶とほうじ茶どっちがいいかなんていう謎の質問をぶつけてきたのであった。

 一体何の話しをしていたらそんな二択が生まれるのかは知らないが、そんな心底どうでも良い二択に対して俺は仕方なく答えてやる。



「まぁ、どっちかって言うなら緑茶だな」


 たしかにほうじ茶も美味しいが、やっぱりどちらかと言えば緑茶の方が飲む機会も多いため俺は素直にそう答えると、柊さんはうんうんと頷きながら満足そうに微笑み、対して楓花はまるで信じられないものを見るような目で俺の事を見ていた。



「良太さんもこう言っているので、多数決で緑茶の勝利ですね」

「うう、お兄ちゃんのバカ……」


 どうやら今の俺の一言で、二人の勝敗が決したようである。

 話しから察するに、柊さんが緑茶派で、楓花がほうじ茶派だったのだろう。


 だがあまりにも下らないその争いは、俺からしてみればやっぱり心底どうでも良かった。

 全く、美少女二人揃って何の話しをしているのかと思えば、どっちのお茶の方が美味しいかを言い争っていたのである。

 昼のミートボールの件といい、楓花が絡むとどうにも緩いと言うか下らない事ばかり起きるのであった。


 こうして駅で柊さんと別れ、それから俺は楓花と二人で帰宅しているのだが、さっき俺が緑茶と答えたのがよっぽど納得いかないのか楓花は道中ずっと不機嫌そうにしているのであった。



「あのー、楓花さん?そろそろ機嫌直して貰えませんかね?」

「ふん!知らない!」

「――あのなぁ、たかがお茶の好みぐらいでそんなに怒る事じゃないだろ」

「――そういう話じゃないし」


 そう言って、不満そうにそっぽを向く楓花。

 じゃあどんな話だよと、俺は一向に機嫌を直す様子の無い楓花にただ呆れる事しか出来なかった。


 そんな時、丁度前方に自動販売機が目に入ったため、俺はその自動販売機に並べられている飲み物のラインナップを確認した上で、楓花に声をかける。



「おい楓花、なんか飲むか?」

「え?」

「好きなの買ってやるよ。俺はそうだなぁ――これにするか」


 そう言って俺は、お金を入れてほうじ茶のペットボトルのボタンを押した。



「楓花がほうじ茶の話しをするから、俺も久々に飲みたくなったじゃねーか。――うん、まぁほうじ茶も普通に美味しいな。やっぱり引き分けってとこかな」

「――もう、なにそれ。それじゃ勝負にならないんだけど」


 ちょっとわざとらしかったかもしれないが、俺がほうじ茶を買って飲んで見せた事で、どうやらようやく楓花も多少機嫌を取り戻してくれたようだった。



「じゃあ、わたしはこれ」


 そして、機嫌を直した楓花がそう言って指さした先にあったのは、ほうじ茶でも緑茶でもなく、コーラだった。



「お前、この流れでコーラかよ……」

「いいじゃん別に!ほら、お茶持っててあげるから早く買ってよ!」

「お前なぁ」


 楓花の態度に呆れながらも、たしかにお茶が邪魔だったから俺は言われた通り楓花にお茶を渡して財布から小銭を取り出していると、なんと楓花は勝手に俺のお茶を飲んでいた。



「あ、お前勝手に!」

「もう、別にいいでしょ?減るもんじゃないし」

「いや、どう見ても減ってるだろ――ったく、ほらよ、金入れたから好きなの早く押せ」


 そう言って楓花からごっそり減ったお茶を返して貰うと、楓花は嬉しそうに宣言通りコーラのボタンを押した。



「いやぁ、えらいすんまへんなぁ良太はんー」

「何キャラだよ、ったく」


 本当、楓花の相手をしていると疲れるなと思いながら、俺は喋って乾いた口をほうじ茶で潤わせる。



「――あっ」

「ん?なんだよ?」

「べ、別にー?じゃあ、帰るよ良太くん」


 少し頬を赤らめた楓花は、そう言うとコーラを買ってやった俺を置いてさっさと先に歩き出した。


 こうして今日も俺は、相変わらず自由な楓花にただただ振り回されるのであった。



四大美女が何を話しているのかと思えば、緑茶とほうじ茶どっちが美味しいかでした。笑


ちなみに私は、ほうじ茶も結構好きです。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] コンビニでホットの飲み物を買った時、ほうじ茶です。
[一言] 麦茶は? /w ほうじ茶は大量に作ってもそんなに劣化しないで作り置きできるから、うちではほうじ茶(でも今は麦茶が主)でしょうかねえ。緑茶は家ではずいぶん飲んでないな。 間接に気が付いたのは…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ