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インサーバー

作者: 泉宮 かおる

 

 インサーバーが一般公開となったのは、今年の十一月のことだった。

 オンラインライフゲームと銘打ったこれは、二十一世紀最後の年にして最大の話題となった。


 人が生活できるレベルの設備が整えられた多機能オンラインゲーム。

 当初はそんな曖昧な情報しかなく、ゲームとネット通販が混ざっただけだ、と低く評されていたが、公開一ヶ月前に流されたデモムービーは世界の目を集めた。

 インサーバーは現実の生活すべてに適応した疑似ライフゲームであった。

 食事や睡眠、生死までもが現実の自分とリンクしており、ゲーム内で仕事をし、稼いだ金で生活していくこともできる。

 二十一世紀中頃から、経済の九割が家に居ながらすべてをこなせる新しい形、第四次産業へと変わっていったし、食べ物を電子に変換する技術もとっくに完成していたため、電話一本で自宅の電子レンジに届くようになっていた。

 それを応用し、ゲーム内で食事を取れば現実の体も満たされる、そんな技術が開発された。

 もちろんゲームであるから、自分のキャラは何度でも作り直せるし、好きな見た目を追求できる。整形のような膨大な資金も必要ない。

 

 ゲームをプレイするにはアカウント登録が必要で、そのための専用の腕時計がある。

 これを付けていると心拍数や空腹度をはかることができるため、現実の自分とゲーム内の自分が見事にリンクできるというわけだ。

 この腕時計は無害の電磁波を体に流し、二つ以上付けてもエラーが発生してしまうため、アカウントを複数所持することは不可能になっている。

 

 インサーバーの一般公開から一年で全人類がアカウント登録を完了した。

 特に強制があったわけではないが、便利さは世を魅了した。

 ゲーム内で恋に落ちて結婚システムを利用する人もいたし、犯罪はネット上に残された足跡で徹底的に検挙された。

 ネットポリスも生まれたため、犯罪の抑制は完璧なものになった。


 ところが。


 完全なネット社会によって人は外出しなくなった。

 ネット上で運動すれば現実の体も鍛えられる。

 ネットで食事を注文すればネットの中で食事を済ませる。

 結婚も何もかも、生活と人生のすべてがネットでまかなえるのだ。


 外出の必要はなくなった。

 自動の清掃ロボットが街を掃除してくれるし、ゲームのサーバーもネットから管理できる。

 もちろん異性の関わりもない。キャラと自分との違いで嫌われることを恐れたからだ。

 ネットでは結婚し、子供のプログラムを作成することができる。幸せには不自由しなかった。


 つまり、現実には新生児は無かった。

 人の生命を電子化することは難しく、幾つもの失敗を経て動物実験こそ成功したものの、人体実験は倫理的に問題があると規制されてしまっていた。


 インサーバーの公開から五十年。若年層の一切が無くなり、人類滅亡のカウントダウンは秒読みを早めていた。

 何度もネットニュースになったが、人々は画面の前の幸せに逃げ込んだ。

 科学で解決できると決め付けた。

 ゲーム上は相変わらずで、若々しい男女が仲睦まじく暮らしていた。


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