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Chance!  作者: 我堂 由果
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三人の性格

「最近また見かけなくなっちゃったよね。ほら、交差点の外人」

「でもまだこの辺に住んでるみたい。駅前スーパーで買い物してるの見た子がいるよ。特売の納豆、一杯買ってたって。ちょっとびっくり」

「えー、スーパー? 特売? 納豆? うっそ、似合わない」

 リクが放課後教室の掃除をしていると、教室の隅で話し込む二人の女子の会話が聞こえてきた。会話から話題になっている人物はキースだと直ぐにわかった。但し納豆はキースではなくリクの食料だ。気になる話題に女子二人にさり気無く視線を向けると、二人は顔を見合せて笑っていた。

「見た子が言うには、見掛ける度に結構な量の食料買ってるんだって。一人暮らしじゃないかもって」

「友達とルームシェアしているとか?」

「もしかして女の人と暮らしているとか?」

「女の人? でもあの外見なら彼女はいるかも。彼女いいなぁ、羨ましい」

 女子二人は楽しそうに喋りながら教室から出て行った。リクは洗った雑巾を雑巾掛けに干すと、他の掃除当番達と掃除終了を担任に報告しに行った。掃除が終わるとリクは下駄箱へ向かう。


 広瀬と知り合ってから数週間が過ぎた。何が広瀬に気に入られたのか、リクは学食や廊下擦れ違う度に、広瀬から気軽に声を掛けられた。あれから直ぐに笹本は雨宮や川原や田端に広瀬の話をしたが、三人共、広瀬の噂は聞くが直接話したことはないと言っていた。ただ広瀬は当然、学年では顔と名前を知らぬ者のいない有名人であった。広瀬は一組で、例の正月の三人と同じクラスだ。雨宮と田端と川原は四組。笹本も含めて四人共、中学時代も広瀬と同じクラスになったことはないが、いくつか知っている話を教えてくれた。

 クラスメートとは普通に仲がいいが、特に親しい友人関係はバスケ部のメンバー。他に広瀬と親しい生徒は思い浮かばないと四人共、言っていた。女子にはもてるが彼女はいない。告白する女子は多いが以前雨宮が言っていた通り、片っ端からふっていた。


 先程昼休みも学食で笹本と二人で昼食を食べていると、食べ終わった食器を片付けに向かう広瀬に声を掛けられた。

『桜井と笹本も毎日学食?』

 度々話をしているうちに、広瀬はリクの友人笹本まで認識し始めた。

『うん。広瀬も? お弁当とか親に作ってもらわないのか?』

 そういえばリクもよく広瀬を学食で見掛ける。

『俺、一人暮らしだから。親は二人共アメリカ』

『え?』

 リクは広瀬が一人暮らしだとは思いもしなかった。てっきり両親と暮らしているものと思っていた。それは笹本も同じだったらしく、食事の手を止めて目を見開いて驚きの表情をしている。学食の入り口から雨宮、田端、川原の三人が入って来るのが見えた。リクの目の動きで三人が来るのがわかったのか、広瀬もそちらを横目で見る。

『じゃあ、またな』

 そう言って通り過ぎようとする広瀬をリクは呼び留めた。いつもそうだ。何故広瀬はそんな行動を取るのか不思議だった。

『広瀬は雨宮と田端と川原と顔を合わせたくないのか? どうして三人が来るといつも居なくなるんだ? 何かあったのか?』

 広瀬は三人を視界に入れるといつも、逃げるように居なくなる。広瀬は一瞬驚いた顔をしたが、次に困ったように笑った。

『ばれたか。はっきり言って俺、あの三人は好きじゃない。何て言うか、裏表がありそうで。桜井はそう感じないのか?』

 そう言い残し広瀬は素早くいなくなった。リクは驚いた。後一口か二口で食べ終わるのに、そこで箸が止まってしまった。あの三人の性格の裏には、この家系特有の歪みが潜んでいる。日頃は周囲と問題なく上手くやっていてわからないが、偶にリク達に対して口にする言葉に、その身勝手な思考と過激な性格が垣間見えた。エドもキースもチャンスまで、リクの身の回りはそんな性格の人間の集まりだ。リクはもう慣れたし諦めた。彼らは頭がいいし何でも思い通りになると思っているし、何を言っても無駄なのだ。正月の話では三人と親しい笹本が、三人の性格を感じ取っていた。それならわかる。間近で言動を見たからだ。しかし広瀬と三人との接点は学年トップクラスの授業中しかない。それだけでわかるものなのだろうか。

『広瀬には三人の性格がわかるんだな。スゲーな』

 笹本もそう言うからには、やはり広瀬が鋭過ぎる気がする。三人がリク達のテーブルにやって来た時にはもう、広瀬の姿は学食内になかった。猛スピードでいなくなっていた。


 リクは上履きから通学靴に履き換えると校舎の外へ出た。上着のポケットからスーパーで買って帰る品物の書かれたメモを取り出す。校門へ向かいながらメモの内容を確認した。バスケ部は今日も活動日だ。一人暮らしの広瀬は部活の後で自炊するのだろうか。コンビニ弁当を買っている姿や自炊をしている姿を想像してみるが、それは外見クールな広瀬には似合わず、リクは周りに人が居ないことを確認してから一人笑った。


 家に着くと直ぐに、部屋からチャンスを連れたキースが出て来た。リクに話があるので帰宅するのを待っていたと言われた。

「一時間位前に佐久間先生からメールがきた。明後日から学校は三連休だろう。佐久間先生が正月のエド先生の続きを指導したいそうだ」

 明後日から三日間校舎が入学試験に使われる為、手伝いで登校する生徒以外は休校日となる。リクは手伝いが無いので笹本と遊ぼうと思っていた。でも佐久間が呼んでいるなら行った方がいい。

 エドが日本に居る時練習したのが最後で、あれからリクは痣もトーチも使ってはいない。ポールから体育の授業の許可が出て、痣からトーチの力を出し始めたのが先週の初め。それまでは大人しく過ごしていたのだ。でも、もう直ぐ二月だ。そろそろ訓練が始められるだろうし、始めたい。

「明後日また佐久間邸へ行けばいいのかな」

「ああ。俺とチャンスも呼ばれた。そのまま二泊してもいいみたいだ。どうする?」

「夜チャンスが遊んでもらえる時間があるのなら泊らせてもらおうか」

「返事をしておく」

 あれからもう直ぐ一カ月。ポールは一、二カ月で慣れると言っていた。もう痣を大人並に使っても大丈夫かどうかリクは確認もしたかった。大丈夫なら大人用の長時間訓練が毎日できる。三月にはウィルが十六歳になる。ウィルは十六歳になったらリクを殺してやると夏休みに言っていた。四月以降はいつウィルがリクの目の前に現れてもおかしくない。ウィルはきっとエドが年始に言っていた、一族の上位実力者だろうとリクは予想していた。


 リクはまだ痣を使い始めたばかりだ。ポールから使用許可が出てから色々試してみた。勉強中は確かに脳へ力が集まってくれるが、驚異的に成績がよくなる程の凄さはなかった。成績に影響はほぼない。脳に関してはどうやらリクには才能がない。ちょっとがっかりした。体育の授業中は逆に目一杯力をセーブした。運動に夢中になると体の思わぬ部位に力が集まってしまい、接触した相手を怪我させてしまいそうだった。下手したら死なせてしまう可能性だって多大にある。上手く扱えば人に怪我をさせずに、体育の授業で力を使って活躍できると三人から言われたが、リクには無理だった。完全にコントロールする自信はない。失敗して人を傷付けてしまったらと考えるとやっぱり怖い。いつもの鈍い桜井でいいと思っていた。そして総じて思った。多分自分は上位実力者ではないと。

読んでくださってありがとうございました。

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