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Chance!  作者: 我堂 由果
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日本人の遺伝子

 試験休み二日目。リクは笹本と一緒にボウリング場へ来ていた。化学部の親睦会で、仮入部のリクも呼んでもらえたのだ。とはいえ、やはりリクの呼ばれたメインは本入部へ切り替えろというお誘い。でも日頃話す機会のない上級生の二年生達と話ができるのは楽しかった。ボウリングをするのは人生で二度目。一度目は小学生の頃、祖父が連れて行ってくれた。当時リクは小学校低学年だったから、レーンにボールを転がしていただけだった。点数なんて取れたのか覚えていない。今日が二度目と言ったら先輩達が色々教えてくれた。でもボールは思った方向へ行かない。難しい。先輩達は結構遊び慣れている。ストライクやスペアを出しては、大声で盛り上がっていた。

 その後ゲーセンに行ったら皆、結構お金を注ぎ込んで、クレーンゲームでぬいぐるみを取っていた。これも大盛り上がり。笹本も有名キャラクターのぬいぐるみに挑んでいる。

「桜井はやらないのか?」

「うん。俺はいいや」

 家に帰ればリクにはチャンスがいる。それで十分だった。

 その後は焼き肉の食べ放題に行って八時終了。皆でゾロゾロ駅へ向かう。リクは笹本と二人で並んで歩いた。


「どうだった?」

「楽しかった」

「いつでも入部OKだぞ」

「うん。でも皆ゲーセンでのお金の使い方、凄いな」

「遊ぶ時は結構皆あんな感じで遊ぶぜ。お前小遣いいくら貰ってんの?」

「小遣い? 俺の場合は生活費だから、小遣いって考えたことないな」

「うわ、そっか。お前、親と住んでないもんな。家庭教と二人暮らしだよな」

 例の弁護士が偶にやって来ては、キースと二人分の生活費としてお金を渡していく。買い物は二人で行ったり、リク一人で行ったり、キース一人で行ったり。チャンスのお蔭か大体毎月かなり余る。だからそのまま銀行口座へ貯めている。ある程度纏まったらエドに相談してみようと思っている。でもその前に、キースの為に食事のグレードを上げた方がいいのだろうかと、ふと頭に浮かんだ。鶏肉を買う時は地鶏にするとか。牛肉を買う時は外国産や特売品ではなく高級和牛にするとか。鮪の刺身を買う時は本鮪にするとか。キースは文句も言わずに食べるから今まで気にしなかったけれど、キースはもっと高価な食べ物を食べたいかもしれない。今度聞いてみようと思った。駅に着くと電車の上り下りに分かれる。下りに乗る先輩達にお礼を言って、リクは上り電車のホームへ向かった。


 家に着くと直ぐにリクは自分の部屋から着替えを取って来て、バスルームに向かった。全身から当たり前だが焼き肉臭がする。ジャケットやセーターはもうどうしようもないから、ハンガーに掛けて暫く干しておくことにした。ジーンズはランドリーボックスに放り込む。そしてまずは臭い髪の毛を洗う為に頭からシャワーを浴びた。風呂から出ると今度は歯磨き。きついミントのガムを噛みながら帰っては来たが、きっと臭いだろう。全身綺麗にしてやっとリビングに戻ると、そこにはキースが居た。

「お帰り」

「ただいま。歯は磨いたけれど、ニンニク臭かったらごめん」

 リクはそう言って髪の毛をバスタオルで拭く。

「お帰りなさい、リク様」

 チャンスもキースの部屋から出て来た。

「ただいま、チャンス」

「髪の毛を乾かしたら話がある。椅子に座ってくれ」

 キースは苦虫を噛み潰したような顔をしている。髪を急いでドライヤーで乾かすと、リクは椅子に座った。キースは対面に座る。チャンスは食卓の上に置いた。


「何かあったのか?」

「さっき先生からメールがきたんだ。厄介な話だ。ロバート様とリリー様が今、東京に居る」

「え?」

「御二人がなぜ東京に居るのかを説明する為には、またフォレスター家についての話をしなくてはならない。スティーブが七月に先生に送ったメールを見せてもらったが、十九世紀後半までの一族の歴史は聞いているようだな。今日はその続き、二十世紀に入ってからの話をまずはさせてもらう。ロバート様とリリー様の話はそれからだ」

「飲み物用意するな」

 話が長くなりそうなので、リクはキッチンでお茶を入れるとキースと自分の席に置いた。


「十九世紀、一族以外の遺伝子を入れたお蔭で再び一族の数は増え始めた。このまま上手くいくと思っていたが、二十世紀後半に再び一族の数が増えなくなった。更に血が薄まることにより、能力の低い者、痣のない者が増え始めた。一九八〇年代、当時の当主はロバート様だったが、ロバート様のお父上、エド先生のお爺様に当たるリチャード様がまだ御存命だった」

「え? 俺と同じ名前?」

「リチャードは一般的にもよくある名前だし、フォレスター家の家系図を見ていると、何度も出てくる名前でもある。十九世紀以降フォレスター家に一族以外の遺伝子を入れると言っても、それは当然白人に限定されていた。しかしリチャード様は、有色人種の遺伝子にも頼ってみたらと、ロバート様に提案されたんだ。これにはロバート様のみならず、一族中が猛反対した」


 キースはそこで話を中断するとリクに膝掛を渡した。それからエアコンの暖房をつける。今晩は明け方に向けて冷えるとニュースで言っていた。風邪をひかせないように気を使ってくれるキースは本当に気が利くとリクは感心する。キースは席に戻る。


「一族以外の遺伝子を入れたことにより、予てから一族の特徴であった金髪碧眼が減っていた。黒髪・ブラウンの瞳の方が優性遺伝だからだ。それだけならまだいいのだが、有色人種の遺伝子を入れると、コーカソイドの骨格的な特徴を持つ者が減っていく。それではせっかく先祖の優秀な予言者が教えてくれた、有利な外見を保てなくなる。しかしこのままではフォレスター家は衰退していく。ロバート様は仕方なく、一族の何人かを選んで有色人種と結婚させた。その中で、血の薄さを感じさせない程の優秀な子供が生まれたのが、日本人との間のハーフだった。何故かはわからないが、フォレスター家の遺伝子と日本人との遺伝子の相性は抜群だった。そして一九九〇年代以降、ロバート様は日本人と結婚する一族を僅かずつだが増やしていった。しかしやはりフォレスター本家やそれに近い家系に関しては、ロバート様は日本人の血が入ることを嫌がっている。今現在のフォレスター家当主はエド先生だ。エド先生は結婚は好きな相手とすればいいと、一族の結婚相手の国籍も人種も口出しはしない。自分に日本人との子供、お前もいる位だしな。そしてエド先生がフォレスター家の子孫について考えていない分、ロバート様が未だに動いている。年に一、二回、ロバート様とリリー様は日本へやって来て、一族のシングル男性を紹介する為に、日本の社会的地位の高い家系の娘と直接会うんだ」

「じゃあもしかして今回、二人はその為に来日?」

「そうだ。その為の屋敷も都内に一件購入し、毎年そこに一カ月前後滞在している。御二人が東京で見合い相手を探しているだけならいいが、暇潰しにお前にちょっかいを掛けてくる可能性がある。御二人が帰国するまで、また俺が登下校に付き添った方がいいだろう」

「二人に俺を襲う気はないんだろう? 悪口言われても殆ど言葉通じないし。なら一人で大丈夫だよ」

 リクはそう言ったがキースは心配そうだった。下校だけは迎えに来ると言って聞かなかった。

読んでくださってありがとうございました。

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