↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Chance!  作者: 我堂 由果
2/427

友人笹本

 宅配が届いた翌日もリク周辺は何ら変化もなく、学校へ行き、授業を聴き、即行家に帰ってきた。中学時代同様でも違う理由で、教室にはリクが居辛い雰囲気がある。ここは私立の名門校だからなのか、そういう子供を集めているのか、帰国子女やハーフが多かった。クラスにもゴロゴロいた。お蔭でリクの外見と名前は中学時代程浮いてはいない。しかし直ぐに困ったことが起きた。その帰国子女やハーフ達に話し掛けられ始めたのだ。彼らはリクをバイリンガルとでも思ったのだろう。当たり前のように英語で話し掛けてきた。日本語で親の出身国を聞いてきたりもした。リクはバイリンガルではない。父親など片手で数えられる程しか会ったことはない。更に英語が最不得意科目。ここ数日で数人が話し掛けてきた。

「俺は英語名だけど、日本語しか話せないよ」

 その一言で相手は途端に複雑な表情になり、別の生徒の席へ移動して行った。リクは溜息を吐いた。もうしばらくすれば誰もリクに話し掛けてこなくなる。そして中学時代同様クラスに一人の友人もできないだろう。リクは落ち込んだ。


 マンションの部屋に戻ると、リクは先程コンビニで買った商品の入った袋をそっと冷蔵庫にしまった。夕飯は昨晩の残りのカレー。ご飯は朝タイマーで炊けるように仕掛けておいたので、帰宅後直ぐにブザーが鳴って炊き上がっていた。いつもは夕飯を食べ風呂入って寝るだけ。でも今日はリクにとっては特別な日だ。カレーを食べ終わると冷蔵庫から先程のコンビニの袋を取り出す。中にはデザートとオレンジジュースが入っていた。デザートはスーパーやコンビニでよく売っているケーキが二個入ったパック。小振りなイチゴがのっている、ショートケーキ二個。そのうちの一つを素手で掴むと、ムシャムシャと齧り始めた。ケーキを持ってない方の手で、オレンジジュースをペットボトルからラッパ飲み。リクは壁に掛かったカレンダーに目をやる。そして今日の日付をじっと見た。去年の今日も今年と同じ状況だった。リクはこの部屋に独り。今日リクは十六歳になった。


 翌日も学校へ行き授業を受けた。授業は各科目成績毎にクラス編成がなされていて、リクはほぼ、どの教科も平均的な位置にいる。唯一成績が悪いのが英語で、英語は下から二番目のクラスの教室にいた。

「お前さ、帰国とかハーフとかじゃないの? 名前からそう思っていた」

 英語の授業が始まる前に後ろの座席の男子生徒から背中を指で突かれて、振り向くといきなりそう言われた。名前順に座らされているホームルームクラスでもリクの後ろの席の、笹本圭祐(ささもと けいすけ)だった。

「ハーフなんだけど、英語は不得意」

「普通、ハーフってバイリンガルにならねえ? この学校そういう奴多いけど」

 それが笹本の常識らしく、笹本は不思議そうに言い返した。

「外国人の父親には殆ど会ったことがない」

「へ?」

 そこで英語教師が教室へ入って来た。号令が掛かっている。話は中断しなければならない。

「昼休みに続きな」

 笹本はリクの耳にそう囁いた。


 昼休み学食で一緒に昼食を食べながら、笹本は根掘り葉掘り聞いてきた。笹本は食事中とは思えない位よく喋る。リクの境遇に興味津津のようだ。笹本は中学からこの学校に入りそのまま高校へ上がってきた内部進学生だった。リクと笹本に三人の男子生徒が近付いて来た。三人は笹本と同じ内部進学生の友人と言う。雨宮翔(あめみや しょう)、川原ルカ(かわはら るか)、田端智哉(たばた ともや)と紹介された。リクも笹本もフツメンだがこの友人三人はイケメン。三人共高一にしては背が高いし女子にもてる顔立ちだった。うち一人川原は間違いなくハーフとわかる濃い顔、残り二人も怪しいと言えばかなり怪しい顔立ちで、リクは二人もハーフだろうと予想していた。話を聞くと笹本と川原が小学校時代近所に住んでいて同じ小学校に通っていた。でも川原は中二の時に学校の側に引っ越して、今は笹本の近所に住んでいない。その川原の親と雨宮・田端の親が知り合いで、何となく四人でつるむようになったと聞かされた。

 笹本もその友人達もリクに対して気さくで、皆リクの境遇を同情してくれた。学校内の色々なことを矢継ぎ早に教えてくれる。行事は何があるとか、先生の評判とか。中でも全員が急に真面目な顔をして周囲を気にして、小声でこっそり教えてくれたのが評判の悪い生徒達についてだった。

 一組に(リクと笹本は三組)乱暴な三人組がいる。社会的地位が高い親や祖父が学校に貢献していて、三人は中学時代もかなりの問題を起こしていたが、全部揉み消された。逆に彼等に酷い目にあわされた生徒の方が退学させられ、泣き寝入りするしかなかった。とにかくクラスも違うし大丈夫だとは思うけれど、絶対連中に関わるなよと四人は言いつつ、顔を見合わせ頷き合っていた。


 今日の昼は友達ができそうで嬉しかった。四人共いい奴だから是非このまま友達になりたいと思った。もう無理だと諦めかけていた友達ができるかもしれない。リクは何となく気分がよかった。そんないつもと違うテンションで自宅に戻り夕飯を終えたリクは、昨日までのリクなら絶対そんなことはしないのに、無意識にそのやる筈のない行動をしてしまった。

 何故か部屋の隅に無造作に置かれている発泡スチロールの箱を手にしていたのだ。例のロボットが入った、あの箱。箱を二つに割って、再びあのロボットと対面する。そして、取り出したロボットがつるつるにきれいに磨かれていた所為で。

「うわっ」

 手からするりと滑り落ちて、結構な勢いで床にぶつかった。急いで拾い上げて、テーブルの上に立たせてみる。外見を一通り見てオロオロしていると、いきなりピーっと甲高い音がして、ロボットの目が光った。綺麗なブルーの色を放っている。そして何やら喋り始めた。

「やばい、どうしよう、壊した?」

 ロボットは一方的に喋り続けている。英語、フランス語、色々な国の言語を回して何かを確認していた。しばらく何かブツブツと言っていたが、突然喋るのを止めた。今度は黙ること十数秒。

「位置計測、北緯三十五度東経百三十九度。ここは日本ですね」

 ロボットが初めて日本語を話した。

読んでくださりありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。