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とりあえず戦士になった。

俺は対戦相手の戦士に手を差し伸べ助け起こしてやった。


戦士は立ち上がるとそのまま俺の手を高々と上げてくれた。

そして俺の手を握りしめてこう言った。


「まったく歯が立たなかった。歴戦の戦士である俺がまるで子供扱いだ。やはり伝説の超武術カラテは本物だ」


ライラ部長も俺に近づいてきて言った。


「マーカスさんはやはり本当にカラテマスターだったのですね。この町からカラテマスターの戦士が誕生するなんて本当に誇らしいことです」


「つまり試験は合格ということですね」


念のため俺は合否を確認した。


「もちろんですとも。さっそくギルドに登録しましょう。受付に戻ってください」


こうして俺は再びさきほどの受付のある建物に行き、登録の手続きを進めることにした。



美人担当者に名前を呼ばれて俺は窓口に行った。


「マーカスさん、では戦士としてのIDカードをお渡しします。ギルドへの登録費用は10000キルトです」


「え?登録費用は5000キルトと聞いてましたけど」


「それは一般職のギルドの場合です。冒険者ギルドへの登録は10000キルトなんです。1年ごとの更新時にも10000キルトかかります」


美人担当者は申し訳なさそうにそう言った。


俺はしぶしぶ鞄の所持金表示を押して、巾着から10000キルト分の銀貨を取り出した。

親父に貰った、なけなしの金だ。所持金表示はまた9800キルトになってしまった。


「はい、たしかに10000キルト受け取りました。こちら領収書とIDカードです。心配なさらなくても大丈夫ですよ、戦士なら10000キルトくらい簡単に稼げますから」


俺が金を払う時に落ち込んでいる様子を見て美人担当者がそう言った。


「じゃあ、さっそくなんですけど今日すぐに依頼(クエスト)を受注することはできますか?」


「はい、もちろん。それではそこの案内図にある、冒険者ギルドの建物に行ってください」


「そうします」


ここで俺は大事なことを思い出した。


「ところでもうひとつ聞いておきたいんですけど、さっきのHP、MP表示が無いのはどうしてですか?」


「ああ、それはカラテマスターのHP、MPは基本的に無限大だからです」


この答えには、俺はかなり驚かされた。


「あの、無限大ということは、私には無限大に攻撃力と守備力があって、どんな魔法でも使えるってことですか?」


「あ、いえ、そうではなくて、マーカスさんの場合は今レベル1ですので、そのレベルに応じて無限大ってことです。でもおそらくダメージを受けることはほとんどありませんし、クリティカル出現率はほぼ100%です。もちろんレベルなりのクリティカルですけど」


「ああなるほど。たとえば新しい呪文を覚えれば、その魔法は無制限に使えるんですね」


「はい、そういうことになりますね」


うん、それは悪くない。俺は期待以上にチートな存在らしい。あとはレベルを上げていけばいいだけだ。




受付のある建物を出て、農業ギルドと商工ギルドの入った建物の前を通り過ぎる。


その向こう側に、精緻な彫刻で彩られたひときわ立派で風格ある建物があった。

この建物が冒険者ギルドらしい。


入り口から中に入ろうとすると守衛に呼び止められた。


「ああ、ちょっと。一般のギルドはあっちの建物だよ」


華奢な少年である俺はたしかに冒険者には見えないだろう。


俺は守衛にIDカードを提示した。

守衛はそのカードを見て目を白黒させて驚いている様子だ。


「ああああ・・こ、これは失礼しました。カラテマスターの戦士なんて初めてお目にかかります。どうぞお入りください」



建物の中に入ると、そこは広いロビーのようだった。


いかにも冒険者といった風体の男女たちが居る。


剣を背負い頬に刀傷のある男、武闘家らしい女、アラブ風の旅装束の男女。いかにも魔法使い風の少女。

そんな連中ががやがやと会話したり、休憩したりしている。


テーブルと椅子が並べられている一角があるので、俺はそこで腹ごしらえをすることにした。

椅子に座り、テーブルに鞄から取り出した弁当を広げる。



弁当を食べていると、ベリーダンサーのような衣装を着た女が同じテーブルの隣の椅子に腰かけ話かけてきた。


「かわいい坊やね。あなた見かけによらず冒険者なの?」


「はい、新米なんですけど」


「あらあら、冒険者どうしの会話では敬語はタブーなのよ。気を付けなさい」


「ああそうなんですか・・・じゃなくてそうなんだ」


「そう、それでいいわ」


女はケラケラと笑いながら言った。


「パーティーを組んだときに誰がリーダーか敵に見破られないための作法なのよ。例外は魔法使いの女の子ね。魔法少女は敬語で喋る子が多いわ」


「よくわかった。教えてくれてありがとう。覚えておく」


「いいのよ。私はこんな格好しているけど闘士なの。あなたは?華奢な体しているから魔法使いかしら?」


俺はIDを見せて言った。


「いや、俺は戦士だ」


女は目を丸くして絶句し、少しの沈黙の後に口を開いた。


「やだ、ここはあなたの居場所じゃないわよ。あなたの居場所はあっち。上級冒険者サロンてあるでしょ?戦士と魔導士以上はあっちなの」


女の指さす方にはたしかに『上級冒険者サロン』と書かれた部屋の扉があった。


「こんなところでお弁当なんか食べなくても、あっちにはレストランもバーもあってすべてフリーなのよ。私も早く戦士になってあっちに行きたいわ」

戦士にはなったけど、目指すは勇者!まだまだ道は遠いです。

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