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鍛冶屋の親父に説教されたので仕事探そうと思います。

俺はマイラと連れ立って家に向かった。


「ねえマーカス、私ちょっとだけあんたを見直したよ」


「へえ、そうなの?」


「うん、単に怠け者で遊んでるだけかと思っていたら、あんな術をいつの間にか身に着けてたなんてさ。陰でそういう努力する人とは知らなかったもん」


いや、努力はまったくしていない。なにしろテンプレ的にも努力はタブーと心得てここに来たのだから。

しかし、そういうふうに誤解してもらえるのはいいことだ。特に美少女の好感度が上がるのはいい。



先ほどまで居た市場の中心地からやや外れたところに俺の家はある。


どうやら俺の記憶は今すぐに必要な分だけが上書きされるようで、実は家への帰り道はたった今知ったばかりだ。

この世界の全貌がいまだ見えないのがもどかしいが、おそらく俺の脳みそがパニックを起こさないための配慮なのだろう。



「じゃあ私はここで。お父さんと上手くやってね」



俺の家が見えたところでマイラがそう言って別の方向に歩いて行った。


マイラの家はここからそう遠くはない、ご近所さんである。

気は強いが美少女のマイラとは、これからも絡む機会が多そうなので楽しみだ。


だいたいマーカス(俺なわけだが)。

ぜったい女にモテそうな美少年のくせにこんなかわいい女の子がご近所の幼馴染で、今まで男女関係になれてないってヘタレすぎるぞ、俺!



俺の家は鍛冶屋を営んでいる。

家の表側は仕事場になっていて、親父が槌を振るっているのが見える。


記憶がどんどん上書きされていく。


親父の名はハルカス。

転生前の世界での俺の親父と同じく、頑固を絵にかいたような男だ。


少年時代に鍛冶屋に弟子入りして30年以上。

根っからのの職人気質だ。



俺が家に近づくと、仕事の手を止めて親父がこちらを向いた。


「マーカス、こっちへ来い」


苦虫を噛み潰したような顔で親父はそう言った。


「また遊びまわっていたのか。まったく店を手伝いもせず、どういうつもりだ」


マーカスは俺なわけだが、どうやら俺はかなりの放蕩息子のようだ。

とりあえず俺は黙って親父の説教を聞くことにした。


「お前も18になっただろう。男18といえばもう立派な大人だぞ。いつまでも放蕩息子にタダ飯食わせる気はないからな。ちゃんと仕事を見つけてこい」


まったくごもっともなご意見である。ちゃんと働け、俺。



たしかこの種の世界にはギルドという職業組合があるはずだ。

そこはおそらく職業安定所の機能も有しているはずである。


そこで俺は親父にこう言った。


「わかりましたお父さん、僕は明日ギルドに行ってきます」


この返答はとても意外だったようで、親父は目を丸くして驚いた顔をした。


「なに?ギルドに行くと?本当か・・お前ふざけてないよな?」


「ふざけてません。僕はちゃんと仕事を見つけて働きますよ」


親父は居てもたってもいられない様子で槌を放り投げると、家の奥に向かって大声で呼びかけた。


「かあさん!かあさん!大変だ、すぐに来てくれ」


家の奥から母親がやって来た。俺の記憶がまた上書きされる。


お袋の名前はミオナ。転生前のお袋のように太ってはいないし、ずっと美人である。

なるほど、マーカス・・つまりこの世界の俺は母親似のようだ。


「どうしたんですか、おとうさん。そんな大声出して」


「かあさん、マーカスが・・マーカスが心を入れ替えて働くって言うんだ。信じられん」


お袋は優しく微笑んでこう言った。


「なに言ってるんですか、おとうさん。マーカスだって将来のことくらいちゃんと考えてますよ。じゃあ今夜は前祝いにご馳走しましょうね」



━━…━━…━━…━━…━━…━━━━…━━…━━…━━…━━…━━


翌朝、朝食後に親父が言った。


「マーカス、ギルドで仕事を見つけたら登録費用が5000キルト必要だ。他にも何かと物入りだろうからこれだけ持っていけ」


テーブルの上に銀貨10000キルトが置かれた。


それほど裕福というわけではなかろうに、親というのはありがたいものである。


俺は親父に礼を言って金を受け取ると席を立ち、ちょっと小ましな服に着替える。

リクルートスーツは無いが、いうなれば就職面接に向かうのだ。


お袋は弁当と飲み水の入った袋をくれた。


俺はそれを例の鞄に仕舞う。


鞄の裏蓋に所持金が19800キルト、アイテムに弁当が追加表示された。


鞄を肩に掛け、家を出る。両親が玄関まで見送ってくれた。


さていよいよギルドだ。わくわくしてきたぞ。

ちゃんとした仕事がみつかって働いたら両親も喜ぶし、マイラともいい関係になれるかもしれませんよね?


ところで転生前の世界の知識がなんでも検索できるググルの呪文て、画期的なすごいアイデアだ!!と自分では思っていたのですが、わりと多くの方が似たようなことを書いているみたい。この程度のことは誰でも思いつくもんなんだなあ。

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