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はじめてバトルしてみた。

とりあえず俺はマイラに話しかけてみることにした。


マイラは美少女なのでちょっと緊張したが、この世界では彼女は俺の幼馴染なのだ。


「やあマイラ。今日もきれいだねえ」


そういうとマイラはきょとんとした顔をしている。


「はあ?・・マーカス、あんたふさげてるの?頭だいじょうぶ?」


若い女の子に話しかけるのはやはり難しい。

俺も若い男の子なんだけど、中身はおっさんなのでイマイチ上手い言葉が出てこない。


「ああいやマイラ。俺たち幼馴染で長い付き合いだよね?そろそろもう少しなんというか、打ち解けた関係になってもよくない?」


マイラはむっとしたような表情だ。


「あんた何、突然わけのわからないこと言いだして。それって私を口説いてるわけ?やっぱり頭おかしくない?」


「ええ~と。いや、ほら俺たち若い男女なんだから、そういうのもありかなと。ちょっとそう思ったんだけど」


マイラは細い腕を胸の前に組んで口をへの字に結んだ。


「あのねえ・・なんで私がいい歳して無職でブラブラ遊んでるあんたと打ち解けた関係にならなきゃいけないの?キモいよ、今日のあんた」


キモイと言われてしまった・・・やはり中身おっさんなのが表に出てしまっているのだろうか?


そのときである。



「おうおうお前ら!なに街中で痴話げんかしてるんだよ。おっ、ねえちゃん別嬪さんじゃねえか。そんな小僧放っておいて俺たちと遊ぼうぜ」


全員が茶色の長い髪とヒゲを蓄え、やたら体格の良い大男の3人組が突然絡んできた。



とても分かりやすいならず者たちである。しかし異世界初心者にいきなりこの展開はヤバいな。

できれば穏便に済ませたいものだが、マイラはかなり気が強いようだ。


「ちょっとあなたたち、他人の話に割って入らないでよ。関係ないでしょ」


ああ、言っちゃった。

これはトラブルになりそうだ。


「はあ?なんだ、かわいい顔して気の強ええねえちゃんだな。気に入ったぜ、ちょっとこっちに来い」


大男たちのひとりが太い腕をマイラの肩に回して引き寄せた。

マイラの顔が苦痛に歪んでいる。


やれやれだが、どうやらこれはこの世界で初めての戦闘(バトル)イベントの始まりのようだ。

しかし、こんな大男3人相手はキツいよなあ・・でも始まっちゃったものは仕方ない。


「やめろ!マイラから手を離せ」


そう叫ぶと大男たちは一斉に俺の方に顔を向けた。


いや大男たちだけではない。

あたりにに居る人々すべてが足を止めてこちらを見ている。


「兄ちゃん、勇者にでもなったつもりか?おい兄弟。女の前でカッコつけたがる馬鹿がどういう目に会うか、思い知らせてやりな」


マイラの肩に手を回している大男が仲間たちに命じた。

どうやらこいつが兄貴分らしい。



他の2人の大男はニヤニヤ笑いを浮かべながら、のっそりと俺に近づいてきた。


俺はとにかく身構える。


俺から見て左側の大男が握りしめた拳を大きく振りかぶり、俺に殴りかかって来た。



・・・あれ?遅い。



俺は大した腕前ではないが、一応は空手の有段者だ。

その俺の目には、いったん振りかぶってから振り回す大男のパンチは、とてもスローモーションに見えた。



俺はそのゆっくりなパンチを身をかがめてかわし、大男の腹に右の中段逆突きを決めた。



さらに身を起こすと同時に、ドタドタした足取りで迫ってくるもうひとりの大男の腹を右足刀で蹴りこんだ。


ふたりの大男は地面にうずくまった。


それとともに周りにいる群衆の拍手喝采が聞こえた。


どうやらこの世界では、素手の格闘技はあまり発達していないようだ。

これはいい。テンプレにある転生前には大したことのないスキルが、異世界ではすごい威力を発揮するというのはこういうことか。



マイラの肩に手を回している兄貴分の大男は驚いた顔で俺を見つめていた。

奴の頬を汗が伝わるのが見える。冷や汗をかいているのだろう。


「おい、早くその薄汚い手をマイラから離せ」


俺が言うと怯えた表情の大男の兄貴分は、それでも俺に向かって来た。

やはり奴にもそれなりのプライドがあるのだろう。


「・・・んのやろう!」

野太い声で怒鳴っている。


しかし動きやはり遅い。

フットワークというものを知らないドタバタした脚を軽く蹴飛ばすと、兄貴分は大きくよろめいた。


素早く(いや空手をやるものとしてはそれほど速くもないのだが)兄貴分の背後に回り込み、髪の毛を掴んで仰向けに引き倒した。


俺は兄貴分の頭を地面に押し付けながら、拳で奴の鼻をグリグリしてやった。


「お前ら、今度このあたりで見かけたら足腰立たなくしてやるぞ。わかったか」


「・・わ・・わかった。勘弁してくれ」


兄貴分は涙目でそう答えた。

群衆は先ほどより大きな喝采を上げた。


近くの商店の人々が俺に駆け寄って来て口々に礼を言う。


「あのならず者たちを退治してくれて、ありがとうございます」


「私たち、いつも奴らにたかられて困っていたんです」


「あなたのような強い人は初めて見ました」


うーん。なかなかいい気分である。


異世界序盤の滑り出しとしては悪くないんじゃなかろうか。



「マーカス、大丈夫?怪我はない?」


マイラも駆け寄って来た。


「うん、怪我するほどの相手じゃなかった。そっちこそ大丈夫?」


「肩を強く掴まれたから痛かったけど、別に怪我はないわ」


マイラは肩をぐるぐる回しながら言った。


「それよりマーカス、あんたいつの間にあんな術を身に着けたの?あんたがこんなに強いなんて思ってもみなかったんだけど」


俺はどう説明すればいいか分からなかったので、適当に答えることにした。



「うん、通信教育で習ったんだ」


「・・・?ツーシンキョーイク?何それ」


「ああいや・・そうだ!それより早く家に帰らなきゃ。親父が怒ってるんだったよな」

どうやら町のならず者レベルが相手なら、楽勝できる程度には強いみたいです。

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