謎ばかり増えてしまった
「アマラとカマラ、どうして俺たちを助けた?」
俺が問いかけると、アマラが応えた。
「あなたたちが新王都の役人や兵士と戦うのを見ました。あなたたちはバチャタン解放のためにやって来た戦士なんでしょう?」
「その通りだ。俺は戦士マーカスだ」
「僕は戦士ミエル」
「私はライカ。科学者よ」
俺たちはそれぞれ自己紹介した。
「よかった。私たちは、あなたたちのような戦士が来るのを待っていました」
「しかしここの市民たちは口が堅い。状況がよくわからないんだ。説明してくれるか?」
今度はカマラが口を開いた。
「はい。私とアマラはもともとこの都市の住人ではありません。幼いころ狼に育てられた私たちはジャングルで捕まってから、サーカスの見世物として各地を周っていました。3年ほど前に私たちはサーカスを逃げ出して、この街にたどり着き地下に隠れ住むようになったのです」
ここでアマラが話を引き継ぐ。この調子でアマラとカマラは交代で喋った。
「この街は豊かなので、表立ってではありませんが仕事も貰えます。私たちは脚の速さを買われて、メッセンジャーの仕事をして食べて行けました」
「おかげで私とアマラはやっと安住の地を手に入れたと喜んでいたのです」
「ところが一週間ほど前に、あの新王都軍がやってきて、兵士の大群と恐ろしいモンスターたちがこの街を制圧しました」
「王国に任命されている領主は公開処刑され、バチャタンの役人や兵士たちは今も牢獄に収容されています」
「市民たちは厳重な緘口令を布かれています。密告者には賞金が出ますので、恐ろしい相互監視社会になりました」
「ここに居る子供たちは、元役人たちの子供です。両親が牢獄に捕らえられているので、私たちがここでかくまっているのです」
「どうかぜひ、この子たちの親を助け出し、バチャタンを新王都から取り返してください」
途中から、どっちがアマラでどっちがカマラか分からなくなってきたが、とにかく彼女たちの話はわかった。
「2つほど質問がある。まず、マシウス新王というのは何者なんだ?」
「それは私たちにもわかりません。でも領主の公開処刑のときには姿を見せました。新王は大きなドラゴンに跨っていました」
「ドラゴンライダーか!?噂には聞いていたが、本当にそんな奴が居るんだな」
ミエルがそう言った。
「もうひとつの質問はお前たちについてだ。お前たち狼に育てられたにしては、話し方に教養が感じられる。どうしてだ?」
アマラとカマラはお互いに顔を見合わせ、そして頷いた。
「バチャタンで私たちを匿って仕事を与えてくれた博士が、読み書きを教えてくれたのです。その博士も新王都に捕らえられています」
「マシウス新王は博士の研究に興味があるようなのです」
まだマシウスの素性はよくわからないが、だいたいの状況はわかった。
「なるほど。その博士の名はなんというんだ?」
するとアマラとカマラはまた同時に応えた。
「「ビクター・フランケンシュタイン博士です」」
・・・フランケンシュタインだって!?
まさか??俺は鞄から魔法の鏡を取り出しググルの呪文を唱えた。
検索窓に「フランケンシュタイン」と打ち込み検索する。
「『フランケンシュタイン』(Frankenstein)は、イギリスの小説家、メアリー・シェリーが1818年3月11日に匿名で出版したゴシック小説」
※出典:Wikipedia
メアリー・シェリー!!
転生前の世界ではメアリーは小説『フランケンシュタイン』の原作者だったんだ。
なんで今まで気が付かなかったんだろう。俺は自分の無知を恥じた。
そしてビクターとはこの世界ではメアリーの生後すぐに亡くなった息子の名だ。
彼女が造り上げた人造人間の名もビクターだった。
しかし、この街に居るビクター・フランケンシュタインは彼ではないだろう。
では、ビクター・フランケンシュタインとは何者なんだ?
結局、謎ばかり増えてしまった。




