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狼少女・アマラとカマラ

レイナは何やら工作活動に入ったようなので、俺たちは適当な宿に荷を下ろすと、とりあえず市内の様子を見歩くことにした。


市内はこうして見る限り平穏である。

わずか1週間ほど前に武力制圧された都市にはとても見えない。


俺たちは小さな食堂に入った。

店は50代くらいの親父とおかみさん2人で切り盛りしているようだ。



親父に昼食を注文するついでにちょっと質問してみた。


「なあ親父。マシウス新王てのはどんな王なんだ?」


親父は営業スマイルを引っ込め、少し緊張した表情で応えた。


「・・・マシウス新王様・・それは偉大な方でございます。はい」


「ふーん。それでマシウス新王てのは何者なんだ?どこから来た?」


そう聞くと親父は、身をかがめながら辺りをキョロキョロと見まわしてから小声で言った。


「お客さん、旅の方だね。あまりそういうことを人目につくところで聞くもんじゃないよ」


その親父の傍らにおかみさんが慌てたように近づいて囁いた。


「お前さんこそ余計なことを言うんじゃない。お客さん方、ウチはもう店じまいだよ。出てっておくれ」


追い出されてしまった。



しかたないので俺たちは他の食堂に入り、今度は飯を食ってから店の主人に尋ねた。

しかし、ここでも反応は同じようなものだ。


それ以降、市内のあちこちでマシウス新王について聞き込みしてみたが、まともに答える人間はいない。


やはり新王都は市民を完全に自由にさせているわけではないようだ。

おそらくは密告制などを布いて、相互監視させているのだろう。


・・・ということはつまり、そろそろ。。。


「お前たち、何をこそこそと嗅ぎまわっておる。王国のスパイか?」


やはり出た。

新王都の役人らしいのが重装備の兵士を3名引き連れている。


「俺たちは・・・」


一瞬、俺は何か言い訳しようと考えたのだが、どうせレイナも居ないしすぐバレる。

それに俺はそろそろ、まどろっこしいことが面倒になってきていたのだ。


「俺たちはバチャタン解放のためにやって来た戦士パーティーだ。覚えとけ!」


言うと同時に目の前の役人の腹に前蹴りを叩き込んで倒す。

そして素早く腰にぶら下げた武器ケースからトンファーを取り出すと、両手に装着した。


「ミエル、ライカ、どうせ遅かれ早かれ暴れるつもりだったんだ。今やるぞ!」


「望むところだ、マーカス!」ミエルが剣を抜きながら応える。


「ほんとにもう・・・」ライカは呆れ声で熱線銃(ヒートブラスター)を引き抜いた。


斬りかかって来た兵士の一人の剣を左手のトンファーで受け、右のトンファーで横面を殴りつける。

新しい俺のトンファーは、兵士の兜を大きく凹ませるほどの威力があった。


残りふたりの兵士はミエルとライカがあっさりと料理したようだ。

王国軍の兵士も、この程度なら大したことなさそうだ。


しかしそのとき、ビィイイーーーッ!!っと耳をつんざく音が鳴り響いた。

倒れていた役人が呼子を鳴らしたのだ。


見ると街角のあちこちから出るわ、出るわ。

アリの群れのように兵士たちが湧いて出てきた。数百名は居るだろう。


「ああー、ミエル。これはちょっとヤバいかもなあ」


「ん~。。やはりいくらなんでも多すぎるよね」


「ほんとにもうっ!!」


俺たちは走った。

土地勘のない市街地を逃げるのは一苦労だが、途中数名の兵士たちをなぎ倒しながら、俺たちは人気の無い路地に走りこんだ。


しばらく走ると、後ろからおそろしくハイペースな複数の足音が聞こえてきた。

走りながら後ろを見る。


腰と胸に白い布を巻き付けただけのような軽装の少女がふたり、俺たちを追って裸足で走ってくる。

人間のスピードではない。まるで猟犬だ。

・・・王都軍のモンスターか?


ふたりの少女は、俺たちを追い越すと数メートル先でこちらを向いて立ち止まった。


少女たちの歳はせいぜい14~15歳くらいに見える。

おそらくは双子らしく、ふたりともそっくりな顔かたちをしていた。

しかしモンスターなら油断はできない。・・・やる気か?


「「私たちに着いてきてください」」


ふたりは「モスラ」の小美人のように同時に同じ言葉を喋った。


「どういうことだ?」


「話は後です。すぐに追手が駆け付けますから」


今度は向かって右側の少女だけがそう言った。


少女たちは、俺たちが着いていける程度にセーブしたスピードで走り出した。

俺たちもそれを追って走る。


路地を走り抜ける手前の建物の床下の隙間に少女たちは滑り込んだ。

俺たちも後を追う。


床下にあるマンホールのような穴に少女たちはもぐりこんだ。


いや床下の穴はまさにマンホールそのものだった。

その中は広い下水道である。ひどい悪臭がするが、少女たちはどんどん先に進む。

かなり進むと、広い部屋のようなスペースに到着した。


部屋の中には3歳から10歳くらいまでの男女12人の子供たちが居た。


「ここなら追手に見つかる心配はありません」


少女のひとりがそう言った。


「お前たちは何者だ?」俺は尋ねた。



「私はアマラ」「私はカマラ」



・・・え?アマラとカマラだと?


「お前たち、狼少女か?」


俺がそういうと少女たちはかなり驚いた顔をした。


「どうしてそれを・・・?」


やはりこの世界はパラレルワールドだ。


俺が前に居た世界では、アマラとカマラは狼に育てられたというインドの少女たちだった。

もっとも後に、それは発見者といわれていた人物による嘘だったとされている。

しかしこの世界のアマラとカマラは本物らしい。


・・・どうりで脚が速いわけだ。。

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