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なんでか巫女が現れた

次の日から俺とミエルは午前中は村の外を歩き回り危険種の高レベルモンスター退治に出かけた。

レベルと金を稼ぐためだ。


ありがたいことに、危険種の高レベルモンスターは経験値も高いうえに、退治するだけでいちいち買取所に持ち込まなくても報酬は自動的に冒険者IDにチャージされる。

しかも1体10万~30万と高額だ。これは銀行でいつでも換金可能だ。


おまけに俺のような低レベルスタートの冒険者なら、一気にレベルが跳ね上がる。


ミエルもレベルがアップしたが、俺はそのミエルに追いついたので揃ってレベル25の戦士となった。

金も300万キルト以上貯まったので、懐が温かい。


村に戻って冒険者の酒場で昼飯を食うと、午後からは魔法使いのオーディションだ。

しかし今日も碌な奴が来ないので、俺たちはほとんど諦めかけていた。


「ミエル、今日も三流の手品師みたいなのしか来ないなあ」


「最初からミンミンさんみたいに優秀な魔法使いとパーティーを組めたのは、マーカスは特別にツイてたんだよ。普通はこんなもんさ」


「もう諦めて現状勢力で行くか・・・」


「そうだな。あれ?なんか奇妙な格好した女の子が入って来たぞ。あれはなんだ?」


ミエルがそう言うので俺は酒場の入り口の方に目を向けた。


その姿はミエルやこの世界の人間には奇妙に見えるだろうが、俺にはとても見覚えのある衣装だった。



・・・巫女?



白い着物の上衣に、赤いスカート状の袴。

それはまさに日本の巫女の装束そのものであった。

ヒメカットの黒髪に巫女の衣装の童顔の娘は、まるでコスプレイヤーのようだ。



その巫女は入り口からバーに直行してバーテンに言った。


「お酒をください。できるだけ強いのを」


「ウチは未成年者に酒は出さないよ」


バーテンはぶっきらぼうにそう言った。


巫女は黙って微笑みながら懐からIDカードを取り出しバーテンの目の前に突きつけた。


それを一瞥したバーテンは、グラスを取り出し透明の液体を注いだ。

巫女は硬貨をバーカウンターに置くと、グラスを手に取りちびちびと旨そうに飲み始めた。


しかし冒険者の酒場にか弱そうな娘がひとりというのは、狼の群れに羊が紛れ込んだようなものだ。

早速、闘士(グラディエーター)崩れのガラの悪そうな男たち3名が巫女に絡みはじめた。



「ねえちゃん、かわいい顔して昼間っから酒盛りか?それならこっちに来て一緒に飲もうぜ」


「いいえ、私はひとりで飲むのが好きですの。遠慮いたしますわ」


巫女は涼しい顔をしてそう応えるが、もちろん連中はそれで引き下がるような(やから)ではない。


「おいおい、何を酒場で気取ってやがる。いいからこっちへ来いよ」


巫女の手首を掴んで引き寄せようとした。



「マーカス、助けに行くぞ」


立ち上がろうとするミエルを俺は制止した。


「いや、ミエル。少し様子を見ようじゃないか」



闘士崩れの男が片手で巫女の右手を柄んで引き寄せようとするが、巫女はビクとも動かない。

涼しい顔をして、左手でグラスを煽っている。


焦った男が両手で腕を掴んだ瞬間、巫女はその腕を頭上に振りかぶり、斬り降ろすように振り下ろした。

大きな男が弧を描くように吹っ飛び酒場の床に叩きつけられる。


まるで合気道のような技である。



仲間の男たちは驚いて一瞬たじろいたが、すぐにいきり立って言った。


「ふん、元気のいい娘だぜ。俺たちの宿にさらって楽しませてもらうとするか」


「あなたたち程度じゃとても私の相手は務まりませんわ。どうせ大したモノ持ってないんでしょ」


「な・・なんだと・・」


この巫女はかなりケンカ慣れしているようだ。




巫女はもう一度グラスを煽ると、右手の人差し指と中指を伸ばして剣印を作り、男たちの眼前に突き出した。

そしてその指に霧を吹くように酒を吹きかけると、酒に火が着き炎となった。


その炎は男のひとりの髪の毛に引火した。


「うわあああ!!!あちち!!」


巫女は剣印を結んだ手を縦横に切った。


炎はまるでドラゴンのようにうねりながらもうひとりの男を襲う。


この巫女は炎を操る能力(ちから)を持っているらしい。




男たちは火だるまになった。これはさすがに放置しておくわけにはいかない。


俺とミエルはそれぞれ傍にあったテーブルクロスをはぎ取り、のたうち回る男たちに被せて火を消そうとした。

そこにバーテンがバケツに汲んだ水をぶっかけ、ようやく完全に火が消えた。


2人の男は酷い大やけどを負っている。

耐えがたい苦痛に呻いていた。



「おい、お前ちょっとやりすぎだ」


俺は巫女を睨みつけて言った。


「そう?私はまだやりたらないですけど」


巫女は笑いながら酒を煽ろうとしたが、グラスは空になっていた。


「バーテンさん、お酒をもう一杯くださいな」


バーテンから酒を受け取った巫女は、そのグラスを一気に飲み干す。


そしてもう一度右手で剣印を作ると、床に倒れ呻いている男たちに向けて横に切った。


なにやら呪文か祝詞(のりと)のようなものを唱えている。



男たちのうめき声が止まった。


「あれ・・もう痛くない。。」


ふたりともきょとんとしている。

あれほどの大やけどが跡形もなく治癒していたのだ。

この巫女は回復系の魔法のようなものが使えるらしい。



「お前、ほんとうに巫女なのか?」


巫女は驚いた顔で俺を見た。


「あなたは巫女を知っているの?驚いた。この国に来て巫女を知っている人にあったのは初めてですわ」


「この国へ来ただと?お前はどこから来たんだ?」


「海の向こう・・ハポン国からですわ」


・・・ハポン国・・ラテン語で日本のことだ。


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