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エピローグ:旅立つ俺たちはまだ魔王の脅威を知らなかった

「世話になったなメアリー・シェリー。ありがとう」


俺はメアリーに礼を言った。


「礼には及ばんさ。あたしはちゃんと報酬をいただくからね」


ライカはかなり感動しているようだった。


「メアリー先生、インチキなんて言ってすみませんでした。本当に不死の科学が存在するなんて・・私などは科学者としてまだまだ未熟です」


「お若いお嬢ちゃん博士。それはキャリアが違うからだよ。お嬢ちゃんもあたしの歳まで研究を続ければそれなりの成果は出るさ。お励みなさい」


「ありがとうございます」


屋敷の中からビクターとパーシーがミンミンの衣服と所持品を持って出てきた。

それをライカが受け取る。


「ビクターとパーシーはあたしの初期作品なのさ。複数の死体の優れた部分を繋ぎ合わせて完璧な人間を造ろうとしたんだ。結果は見ての通り出来損ないだったけどね。それでもよく働いてくれる大切なあたしの家族さ」


母親を知らずに育ち、子供や夫を失った悲しみをエネルギーに、死を撲滅する研究に人生を捧げているメアリー。

彼女がビクターとパーシーを見つめる目には、たしかな愛情が感じられた。


「いいかいお嬢ちゃん博士。この世のすべては科学で説明がつくことばかりなんだ。たとえ今説明できなくても科学的思考を止めてはいけない。神秘も魔法もいずれは科学が解明する。それをするのがあたしたち科学者の使命なんだよ」


「はい、肝に銘じます」


ライカはそういうと、報酬の金を支払った。

そして俺はチョーキの装備一式をメアリーに渡した。


「確かに受け取ったよ。これはオマケだ。お嬢ちゃん博士、あんたに預けよう」


それは束になったノートだった。


「これは・・・まさか!」


「あたしの研究ノートさ。蘇生術のレシピが書かれている。あんたに熱意があるなら、これをさらに完成させることができるでしょうね」


「こんな大切なものを・・・」


「この研究はあたし一人で抱え込むべきものじゃないのさ。しかし悪人の手に渡すわけにはいかない。あんたを見込んで渡すんだから大切にしておくれ」


「はい。必ず!」


ライカは蘇生術のノートを受け取った。

そして俺に向かってこう言った。


「マーカス、ミンミンちゃん蘇生の費用は私が全額持つわ。そんなお金惜しくないほど貴重なものを手に入れたから」


・・・正直、それはかなり助かる。。


こうして俺たちはメアリーの屋敷を後にし、バチャタンへの旅に出ることになった。



━━…━━…━━…━━…━━…━━━━…━━…━━…━━…━━…━━



メアリー・シェリーは神は存在しないと言った。


しかし、神は存在するし神の視座というものがある。

これから記す出来事はその神の視座に基づくものであり、俺はまだ知りえなかったことだ。



それは俺たちがメアリーのもとを立ち去って数日後の夕刻のことだ。



メアリーはビクター、パーシーとともに大広間で夕食のテーブルに着いていた。


そのとき激しく扉を叩く音がした。


「なんだい、食事時に騒がしいねえ。ビクター、もう少し後にしてもらうように言ってきなさい」


ビクターが玄関の扉に向かおうとしたそのとき、木材の割れる大きな音が響いた。

何者かがその扉を破壊したのだ。



驚いた3人が玄関の方を見ると、そこにひとりの男が立っていた。



背の高さはビクター、パーシーほどではないが、彼らよりも発達した筋肉の持ち主なのでより大きく見える。

素肌の上にきらびやかな装飾が施されたベストを羽織っており、ゆったりしたパンツを履いている。


その顔には一切の贅肉が無く、鋭く切れ込んだ目は冷酷な光を放っているようだ。

短く刈り込んだ髪のある頭部に、王冠のように宝石を散りばめた鉢がね状のヘッドピースを着けている。

歳は30歳前後くらいに見える。


そしてその体全体から強烈な邪気を放っていた。



「ひさしぶりだな、メアリー・シェリー」



その男は地底から響くような低く太い声でそう言った。


「あ、あんたは・・・」


メアリーは額から冷や汗を流している。


「あんたは、魔王・・・」


魔王と呼ばれた男は低く籠った笑い声を上げた。


「食事時にすまんな、俺も呼ばれていいかね」


「あ・・ああ、かけとくれ。しばらくだったね。何も扉を壊さずとも少し待ってくれれば開けたのに」


男は黙って席に着いた。


「ビクター、お客に食事を持ってきておあげ」


そう言いながらメアリーが目配せをすると、ビクターは席を立った。


「魔王、あんた突然なんの用だね?まさか飯を食いに来たわけじゃあるまい」


男は上目遣いでメアリーの顔を見つめた。


「メアリー、お前も老いたな。お前の不死の科学もまだ完ぺきではないようだ」


メアリーの顔が恥辱に歪んだ。


「あんたは腹が立つほどまったく変わらないね。悔しいけどあんたが唯一の成功例だよ」



男はテーブルに置かれたワインを自分で杯に注ぐと一気に飲み干して言った。


「最近、また蘇生術を行ったようだな。今回はかなり成功したようじゃないか」


「どうしてそれを?・・ふん、さすがに魔王だよ、耳が早いね。しかし生き返った子は消えちまったから、成功したといえるかどうか」


「いや、見事に成功してるよ。まあそれはいい。俺が関心あるのはお前が受け取った報酬だ」


「報酬だと?魔王ともあろう者がこんな細々と暮らしている老人の金に関心があるのかね?」


「金の話じゃない。他に受け取った物があるだろう」


メアリーのこめかみを汗が伝った。


「あれは俺の物だ。俺に寄こすんだ」


「パーシー!!」


メアリーが叫ぶと、パーシーが男に跳びかかった。

男にしがみつこうとしたパーシーは、まるで蠅を追うように振られた片手で払い飛ばされてしまった。

パーシーは頭から壁に激突してそのまま動かなくなった。



「魔王様、この男を捕まえました」


破壊された扉から、ビクターを両脇から抱えた2名の鎧姿の戦士が入って来た。


「その男の持ち物を取り上げろ」


ビクターが持っていたものは、勇者チョーキの装備一式だった。



「さてメアリー・シェリー。お前の蘇生術は俺にとってはもはや邪魔でしかないんだ。お前たち3人には消えてもらうことにする」


男がそう言うと、手下の戦士のひとりが剣を抜いてビクターの腹部に深く突き刺した。


「ビクター!!」メアリーが悲痛な叫び声をあげた。


「メアリー、あの世というものが存在するならそこで仲良く暮らせ。無神論者のお前の行くあの世があるのかどうかは知らんがね」


メアリーは唇を噛みしめ、そして男の顔を睨んだ。


「覚えておくがいい。いずれあんたを殺しに行く勇者が現れるよ。それはあんたの血を引く者さ、魔王チョーキ!!」



その夜、メアリーの屋敷を焼き尽くした炎は、遠くの村々でも目撃されたほど大きかった。

ひとまずこの回を第一章の最終回とします。ちょっと長めの序章になりましたね。


さて、再生して姿を消したミンミンはどこへ行ってしまったのか?

また再び出会うことはあるのだろうか?

そしてこれから始まるであろうバチャタン攻略の顛末はどうなるのか?

知られざる魔王の正体が勇者チョーキってどういうことなんだ?

つか、今ここでそれを知らせるか?普通。


それらの答えはまだ作者にもまだわかりません・・・マーカスからの連絡を待つことにします。

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