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神様はわりと頼りない爺さんだった。

転生前のキャラクター設定はあまり重要ではないらしいが、ざっくりと記しておこう。


俺はそこらに居る普通のおっさんで、職業はいわゆる自由業。独身で彼女なしだ。

いちおう空手の有段者だが、あまり練習熱心ではないし強くもない。


以上。ま、こんなもんでいいだろう。


さて、次はいよいよ転生だ。


転生するにはまず死ななきゃいけない。


しかしどうやって死ねばいい?


良い案が浮かばないので頭を切り替えるために散歩に出かけることにした。


仕事場から、道路をはさんだ向かいにあるコンビニにコーヒーを買いに行こうと横断歩道を渡ろうとしたとき、スマホをいじりながら運転しているトラックが突っ込んできた。



━━…━━…━━…━━…━━…━━━━…━━…━━…━━…━━…━━


気が付くとあたり一面真っ白だった。


一瞬、雪景色かと思ったがどうやら違うようだ。


ああなるほど、ここは雲の上か。

ということは、俺はトラックに轢かれて無事に死んだわけだ。

死んで無事というのはなんだかおかしいが、とにかく計画どおりなので良しとしよう。


で、ここはおそらく天国とかそういう場所に違いない。

これは転生前にワンクッション置くパターンだな。


「そうじゃ、ここは天国じゃ」


真っ白な景色にまるで保護色のようで気づかなかったが、目の前に白いチュニックにサンタみたいな白い髪と髭の爺さんが立っていた。

分かりやすいアイコンだが、この爺さんがいわゆる神様なのだろう。


「そのとおりわしは神じゃ。世のすべての(ことわり)(つかさど)る絶対者じゃ」


「ああこれはどうも。神様、はじめまして」


俺は神様に丁寧にごあいさつした。


おそらくこの天国での神との対面が、後に転生する世界で俺が無双するために重大な意味を持つはずだ。

ここは神様のご機嫌を損ねないようにせねばなるまい。


「お前はええと・・ああ、トラックに撥ねられて死んでここに来たわけだ。なのでこれからここで暮らすわけだが、何か質問はあるかね?」


いや、ここで暮らすための具体的な説明が何もないのにいきなり質問はないだろう。


というか、俺は天国で暮らすつもりはない。

ちゃんと魔法とか冒険とかの世界に転生しなけりゃ意味がないのだ。



「神様、あの~すみません。・・おそらくなんですが、俺が死んだのは計画違いとか、なんかそういうの無いですかね?」


え?と驚いた表情を見せた神様は、なにやらノートのようなものをチュニックの内側から取り出してページをめくった。


「あ、ええと、ありゃ・・ほんとうじゃ。お前はまだ死ぬ予定じゃないな。何かの間違いでここに来てしまったか」



予想通りだ。こうでなきゃ、物語が進まない。


しかし神様はほとほと困った顔をしてこう言った。


「予定にないお前にここに居てもらうわけにはいかんのじゃが、お前の居た世界ではお前はすでに死んでおる。今さら生き返らせるわけにもいかんし。はて、どうしたものか」



まったく頼りない神様である。ここは俺が助け船を出してやるしかないようだ。


「あのですね、別に元の世界じゃなくてもいいんです。どこか魔法とか冒険とかの世界に転生させてもらえませんかね?」


「うーむ・・なんか最近そういうのを希望する者が増えたね。まあしかしこっちの手違いではあるし、希望通り転生させてやろう」



神様が手をかざすと、目の前に門のようなものが現れた。


「この門を通ってゆくがよい。お前の望む中世ヨーロッパ風の剣と冒険と魔法の世界じゃ」


「あ、いやちょっと待ってください」


俺は焦った。このまま手ブラで異世界に転生するわけにはいかないからだ。


神様から何かチートなギフトを貰わなければ異世界ですぐに殺されてしまうだろう。

行ったとたんにここに逆戻りなんて、まったく話にならない。


「ええと、ボクはここにそちらの手違いで来たわけなので、それなりの保障が何かあってしかるべきでないかと思うのですが」


「保障じゃと?」


「はい、新しい世界で生きていくために役立つ何かアイテムをですね、頂戴できないものかと」



神様はまた困ったような顔をして白く長い髭を手で撫でおろした。

そうしてしばらく考え込んだ後で、近くの雲の中をゴソゴソとかき回して何やら革で出来たショルダーバッグのような鞄を取り出した。


「では、これを持ってゆくがよい」


神様はその鞄を俺に手渡した。


「これは一体なんですか?」


「見てのとおりの鞄じゃ。では達者でな」


神様が手を振ると、目の前の門が開いた。俺は強力な力でその門の中に吸い込まれていった。


━━…━━…━━…━━…━━…━━━━…━━…━━…━━…━━…━━


気が付くと俺はどこかの町中に立っている大木にもたれて座っていた。


あたりは商店街のような市場らしく、賑やかに人が行き交っている。


俺は目の粗い布で出来た服を来て、革サンダルを履いている。

俺の傍らには、革製の鞄があった。


どうやら俺は異世界に転生したようだ。


しかし、神様の奴・・・こんな鞄ひとつ持たせて転生させやがって。。


嘆いても仕方ないので、俺はその鞄を開けてみた。


かぶせになっている蓋を開けると、その裏側に何か文字が書かれている。

よく見るとそこにはこう書かれていた。



レベル:1


職業:無職


スキル:カラテ


魔法:ググル


武器:


防具:


アイテム:魔法の鏡 


所持金:10000キルト


とりあえず異世界転生は完了しました。


ちょっと話が走りすぎのような気もしますが、どうせ後でモタつくからまあいいか。

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