ミンミンに武器を渡した
翌日の午前、俺とミンミンは町を出た北部にある湿地帯に来ていた。
先日受注したもうひとつの依頼、スライム狩りのためだ。
スライムというのはゲームではたいてい冒頭に、雑魚モンスター中の雑魚モンスターとして登場する。
つまり弱いモンスターの定番キャラ扱いだ。
しかしナメてはいけない。
なにしろスライムに転生して有名になった奴も居るくらいだ。
ググったところによると、スライムは剣や打撃などの物理的攻撃には意外に強いらしい。
たしかにゼリー状のアメーバみたいなものだから、衝撃には強そうだ。
そうは言ってもまったく物理的攻撃が通用しないわけでもない。
俺はクリティカル発生率100%だそうだが、今回はそれほど手加減しなくても殺さない程度に倒せそうである。
(スライムはその消化能力がゴミや産廃処理に利用されるので、生体での捕獲が買い取り条件となっている)
「ま、き、え、す! ふ ぉ ー ー す ら い む !」
ミンミンがマキエスの呪文を唱えると、今回は何かバニラのような甘い香りが周囲に漂った。
しばらく待っていると、辺りからぷよぷよした半透明のスライムが集まってくる。
スライムは本来アメーバ状のモンスターなのに、なぜか目と口が存在する。
もしかするとDQはこの世界にも影響を及ぼしているのかもしれない。
俺は集まってくるスライムどもを片っ端からぶん殴って気絶させた。
このマキエス狩猟法は非常に効率が良い。
ミンミンが集める、俺が狩るという単純なパターンで大量の獲物を短時間で捕獲できる。
今回のスライムは83匹も捕獲できた。24,900キルトの稼ぎである。
しかしその反面困ったこともある。
今回も気が付くとミンミンがスライムの1匹に包み込まれ、あやうく消化されてしまうところを助けたのだ。
攻撃系の魔法を持たないミンミンは敵のターゲットにされやすいのだ。
何か対策が必要である。
ギルドでスライムを売って手に入れた24,900キルトのうち、3割の7470キルトをミンミンに渡す。
「俺は上級冒険者サロンに寄ってから帰るから、お前は先に家に帰っていてくれ」
「帰りは遅くなられるのですか?」
「うん、たぶん遅くなる。先に休んでいてくれ」
ミンミンはむすっとした顔をしたが、俺はせっかくこの世界で得たモテ力を十分に楽しみたいのだから、これだけは勘弁してほしい。
それからの数週間、俺とミンミンはこんな調子で低レベルモンスター狩りでレベルと金を稼いだ。
クエストの後には、サロンの女の子たちとのお楽しみも欠かさない。
相手の女の子も最初の3人にとどまらず、気に入った子は次々とベッドに誘い込んだ。
このように俺はなんだかすごく充実した毎日を送っていたんだ。
そのうち、勇者になるとかそういう目的も、もうどうでもよくなってきたほどだ。
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ある日、仕事後のお楽しみを終えた俺が家に帰ると、家の前にマイラが立っていた。
「あれ、マイラ。こんな時間にどうしたの?」
マイラは眉間に皺を寄せたきつい目で俺を睨みながら言った。
「マーカス。あんた、戦士になって頑張ってると思ってたけど、結局毎日遊び歩いてるんだね。ちっとも変ってないじゃん」
「いや、ちゃんと仕事はこなしているぞ。でも仕事には息抜きも必要だろ」
「あんたはね。あんたはそれでいいかもしれない。でもあなたのパーティーの子はどうなのよ」
マイラはいつもつんつんしているが、今日は特に機嫌が悪いようだ。
「ミンミンのことか?俺は別にミンミンを束縛してないぞ。あの子はあの子で好きにすればいいじゃないか」
「あの子、毎日目を真っ赤に腫らして帰ってくるのよ。知ってた?」
知らなかった。しかしどうして?
「ミンミンは泣き虫だからなあ。なにか困ったことでもあるんだろうか?まさか誰かに虐められてるとか?」
ふーっ・・とマイラは大きなため息をついた。
「あんたは昔からそう。ちっとも変ってないわ。とにかくあんたは女の子の気持ちがぜんぜん分かってない」
「・・・はあ。。たとえばどういう点が?」
俺のこのリアクションにマイラは激怒した。
「馬鹿っ!!あんたのそのすっとぼけたところがとにかく最低!ほんとうに救いがたい馬鹿だわ」
マイラは俺を罵倒するだけ罵倒すると、怒ったまま踵を返すように立ち去った。
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家に入ると俺はミンミンの部屋をノックした。
「俺だマーカスだ。ミンミン、もう寝てるか?」
「マーカス様?おかえりなさい。今開けますね」
しばらく待つと、出てきたミンミンはいつもどおりローブを着てフードをしっかり被っている。
「ミンミン、これをお前にあげようと思って」
俺は紙の包みをミンミンに渡した。
「マーカス様、なんですか?プレゼントをいただけるのですか?今日は何かの記念日でしょうか?」
そうミンミンは不思議そうに、少しうれしそうに言って紙袋を開けた。
そして紙袋から黒い、細長く四角い物体を取り出す。
「なんですかこれは?」
それは俺がツーハンの呪文で取り寄せた物だ。
14800キルトもした。
「それはスタンガンだ。スイッチを入れると80万ボルトの電流が流れる武器だ」
「80万ボルトの電流?それは電撃系の魔法のようなものですか?」
「そのとおりだ。お前は攻撃魔法を持たないから、このアイテムで身を護ってほしいんだ」
「マーカス様・・ありがとうございます。大切に使います」
ミンミンはまた泣き出しそうな顔をしている。
よほどうれしかったに違いない。
俺はマイラのいうほど、女の子の気持ちが分からないわけじゃないんだぞ。




