俺たちはなかなかよいチームかもしれない
町を出て東の森林地帯に向かう。俺はこの世界に転生してから町を出るのは初めてだ。
ラミラス地方の広大な平原を歩くが特になにも起こらない。
なるほどゲームのように歩くだけで簡単に低レベルモンスターに遭遇するわけではないようだ。
1時間ほど歩くと、目の前にかなり大きな森林地帯が見える。
「あの森がラビットの生息地ですわ。ほら、他の冒険者たちの姿も見えます」
ミンミンが指さす方向に、数名の冒険者らしい人々が歩いているのが見える。
「ラビットはこの広大な森に点在して暮らしているので、彼らが10体探し出して捕獲するのにはかなり時間がかかります」
「それをミンミンが一か所に集めて一網打尽にしようってわけだ。しかし集めたところに他の冒険者が来ないかな?」
「ラビットは用心深い生き物ですから、目立つ草原にウロウロ出て来ることは普通ありません。なので他の冒険者はそんなところに来ませんわ」
森に足を踏み入れてしばらく歩くと、中央の草原地帯に出た。
なるほど他の冒険者の姿は見えない。
「ここだな。ミンミン、それじゃ頼むぞ」
「はい、マーカス様」
ミンミンはローブの内懐から魔法使いの杖を取り出し草原に立った。
このワンドは魔法の効力を増幅させるアイテムだ。
短い両手を精一杯大きく広げて、精神を集中する。そして呪文を唱えた。
「ん ~ っ・・・ま、き、え、す ! ! !」
次に両手をぐるぐると回して呪文のつづきを唱える。
「ふ お お お お ーーー っ! ! ら び っ つ ! !」
このミンミンが呪文を唱えるときの魔法フォームはとてもかわいかった。
それはもう、頭をなでなでしてあげたくなるほどかわいい。
しかしこの『かわいい』は小さな子供が一生懸命やってるのがかわいいみたいな意味なので、ミンミンには言わないことにしよう。
ミンミンが呪文を唱え終わると、辺りになんともさわやかな香りが広がった。
表現するのが難しいが、何かのハーブのような香りだ。
周辺の森からがさがさと音がする。ときどきドンドンと地面を打つような音もする。
「来ますわ!思っていたよりたくさんいるみたいです」
ミンミンがそう言った瞬間、たくさんの白い大きなもふもふした毛玉ようなものが四方の森から飛び出してきた。
・・・これがラビットか。
俺の知っているウサギよりかなり大きい。子豚くらいのサイズはある。
それが素早く跳び回る。
「あっ!」
1匹(ウサギの一種だから1羽というべきか?)が大きく跳びあがり、ミンミンの頭を蹴飛ばしたのだ。
体の小さなミンミンは軽く吹っ飛ばされてしまった。
「ミンミン!大丈夫か?」
ミンミンは倒れたまま答える。
「大丈夫ですマーカス様。それより早く捕まえてください」
昨夜ググったところによると、ラビットの主な攻撃法はこのジャンピングキックらしい。
そしてラビットの急所は後頭部の両耳の中間あたりだそうだ。
ここを強く打てば、ラビットは気絶するらしい。
しかし気を付けなければならない。
俺のクリティカル発生率は100%だそうだから、かなり手加減して打たないと殺してしまう。
殺してもいいのだが、その場合は直後に血抜きの処理をしなければ売り物にならないので面倒臭いことになる。
できるだけ生かしたまま捕獲したいのだ。
そのためにはもちろん武器などは使えない。
俺はつぎつぎに飛び掛かってくるラビットの後頭部を手刀で打った。
ミンミンの魔法のおかげで判断力を失っているラビットたちは、単調に俺に跳びかかって来てくれる。
だから俺はさほど苦労することなくラビットたちを気絶させていった。
およそ5分もたったころには、俺の周りはもふもふした毛玉の山のようになっていた。
このとき、俺の鞄から聞き覚えのある電子音のファンファーレが鳴ったが確認しなくてもわかる。
今、俺はレベルが上がったはずだ。
「よーし、全部片づけたぞ、ミンミン・・ミンミン!?」
俺は倒れたままのミンミンに駆け寄った。
「大丈夫か?ミンミン」
「・・マーカス様・・目が回って立てません」
「はやく回復呪文を使え」
「マーカス様はお怪我はありませんか?」
「俺はノーダメージだ。人の心配よりまず自分の心配をしろ。すぐに回復呪文を唱えろ」
ミンミンはようやくワンドを自分の頭に押し当てて呪文を唱えた。
「・・な、お、る、ん・・」
ワンドがまぶしく光った。
光が収まると、ミンミンがむっくりと立ち上がった。
「治ったか?大丈夫なのか?」
ミンミンはにっこり笑った。
「大丈夫ですマーカス様。さあ、ラビットの数を数えましょう」
ラビットの数はなんと54匹だった。
16,200キルトの稼ぎだ。
俺はラビットを1匹づつ鞄に入れた。
容量無制限の鞄なので、すべてのラビットが収まる。
その様子をミンミンが目を丸くして見ていた。
「便利な鞄ですねえ、マーカス様。こんなの魔法アカデミーでも見たことありませんわ」
「神様から貰った鞄だからね。あの神様、頼りない爺さんだと思ってたけど、思えば俺によくしてくれてたんだよなあ」
「神様?神様に会われたのですか?やはりマーカス様は神に選ばれた特別な存在なのですね。マーカス様に出会えてミンミンはほんとうに幸運です」
「いや、幸運なのは俺の方だよ」
「え?」
ミンミンは自分がダメージを負っているのに回復呪文を使わなかった。
それは戦闘中の俺の身を案じてのことだ。
こんなに心の優しい仲間とパーティーを組めたことが、幸運でなくてなんだろうか。
◆マーカス
レベル:2
職業:戦士
スキル:カラテ
魔法:ググル ツーハン
武器:サイ ヌンチャク トンファー
防具:チョーキの道着 チョーキの防具
アイテム:魔法の鏡
所持金:2800キルト
◆ミンミン
レベル:2
HP:20
MP:20
職業:魔法使い
スキル:王立ラミラス魔法アカデミー卒
魔法:ナオルン ポイズナイ マキエス テレポ
武器:
防具:魔法使いのローブ
アイテム:魔法使いのワンド




