魔法少女ミンミンは不機嫌だった
翌朝、朝食を終えた俺はチョーキの道着を着て黒帯を締め、防具と武器を身に着けた。
もちろん神様に貰った鞄もだ。そして鞄や武器ケースに合わせた配色の革ブーツを履く。
家には姿見が無いので魔法の鏡でチェックしてみたが、このコーディネートはなかなかカッコイイ。
その姿を目を細めて見ているお袋は、まるで初出勤する息子のスーツ姿を見ているかのようだった。
「おはようございます」マイラの声だ。
「あら、マイラちゃん、おはよう」お袋が応じる。
マイラは家の中に入って来て俺の姿を見留めて言った。
「仕事場に居るあなたのお父さんに聞いたんだけどマーカス、あんた戦士になったんだって?」
「うん、ギルドの試験に合格したんだ。今日、はじめてのクエストに行く」
そう答えるとマイラはとびきり素敵な笑顔を俺に向けた。
「ぶらぶら遊んでばかりいたあんたがまさか戦士になるとはね。でもなかなかかっこいいじゃない」
「そうだろ?惚れ直したか?」
マイラは笑顔を引っ込め、むすっとした顔をした。
「いつ私があんたに惚れたのよ?ほんとに最近キモいこと言うわね」
どうしたわけか俺の美少年オーラはマイラには効かないらしい。
もっと修行しなきゃなあ。。。
「今からギルドに行くんだけど、よかったら途中どっかでお茶でもしないか?」
「何言ってるのよ、私は学校行くんだからダメにきまってるでしょ。おじさんから話聞いたから顔見に寄っただけよ」
そうだった。マイラは学生だったんだ。
「それじゃおばさん、私これで失礼します。マーカス初出勤がんばってね」
「うん、がんばる」
「マイラちゃん、わざわざありがとう」お袋がそう言って見送った。
マイラが去った後にお袋が言った。
「マイラちゃんもすっかり綺麗なお嬢さんになったわね。お母さんはマイラちゃんがマーカスのお嫁さんになってくれたらうれしいんだけどな」
どうやらマイラはお袋のお気に入りらしい。
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「「マーカス様、おはようございます」」
冒険者ギルドの建物に入ろうとした俺は、昨夜の美少女3人組に呼び止められた。
「ああ、おはよう。昨夜は楽しかったね」
俺がそういうと、彼女たちは一様に顔を赤らめた。
初めての体験が記憶に生々しいのだろう。
「はい、いろいろありがとうございました・・・あの、とても素敵でした」
メイミがやっと小さな声で答えた。
「それと今日のお召し物、とてもお勇ましいです」
「ありがとう。じゃあ冒険者ロビーに入るよ」
そう言って俺が入り口に向かうとメイミ、ハイネ、ミリーの3人の美少女たちも後に続いた。
ロビーに入るとすでに、昨日と同じよに黒いフード付きローブを纏った子供のようなミンミンが居た。
「ミンミンおはよう。早かったな」
「おはようございます」
ミンミンはなんだかふてくされたような顔をしている。
口を尖らせて、丸い顔がさらに丸くふくれているようだ。
「マーカス様、私たちはこれで」
メイミがそういうと、ハイネとミリーもこちらを見てにっこり微笑んだ。
今すぐそれぞれともう一回戦交えたくなるほど、どの子もかわいい。しかし仕事が先だ。
「またあとで」
俺はそう言って、上級冒険者サロンに向かう彼女たちを見送った。
「じゃあミンミン、今日のクエストの打ち合わせをしよう」
そう声を掛けたミンミンはなぜかまだむすっとしている。
「どうしたミンミン、何か怒ってるのか?」
ミンミンは憮然とした表情のまま答えた。
「差し出がましいようですが、マーカス様は女性関係がだらしないように見えますわ」
「ああ、彼女たちのこと?確かに昨夜は少々ハメ外したけどさ、でもミンミンには関係ないじゃない」
「関係なくはありません。パーティーのリーダーが女にだらしないと、のちのちトラブルの原因になります」
「トラブルってどんな?」
「たとえばですね、パーティー内の男女関係が乱れると仲間割れの原因にだってなりますわ」
「パーティー内の男女関係って・・・俺とミンミンしか居ないじゃん」
そう言うとミンミンは顔を真っ赤にした。
「そういう意味じゃありません!今はそうですけど、パーティーが大きくなったらいろいろ問題になります。とにかく自重してくださいませ」
「わかった、わかった。気を付けるよ。とにかく座って打ち合わせしよう」
俺とミンミンは昨日俺が弁当を食べたテーブル席に着いた。
近くのテーブルで冒険者たちが食べている朝食の匂いが漂っている。
・・ぐぅぅーっ
大きな音がした。ミンミンだ。
「あれ、ミンミン、今おまえの腹が鳴らなかったか?」
「いえ、気になさらないでください」
ぐぅぅーっ!
先ほどより大きな音がした。
「おい、ミンミン!お前なんか様子がへんだぞ」
ミンミンの目が虚ろだ。
「お前、腹が減ってるのか?正直に言ってみろ」
「はい。じつは一昨日から何も食べていません」
「えー!なんで?ちゃんと食べなきゃダメだろ」
「でもお金がないんです。今日のクエストが終わるまで食べられません」
なんということだ。俺はあわてて鞄からお袋に貰った弁当を取り出した。
「とにかくこれを食え」
「でも、これはマーカス様の・・」
「いいから食え。俺はサロンでも食べられるから」
弁当を開けてミンミンの目の前に広げた。パン一切れとチーズ、そして肉と野菜をワインで蒸した料理だ。
ミンミンは小声で「・・ありがとうございます」というと、ものすごい勢いで食べはじめた。
「ああ、おいしい・・こんなおいしいご飯、はじめてです」
たしかにお袋の作る弁当は美味いが、それは少々大袈裟だろう。
弁当を食べ終えたミンミンは、こんどはボロボロと涙をこぼし始めた。
「おい、ミンミンどうした?あわてて食べたから腹でも痛いのか?」
ミンミンは顔をぐしゃぐしゃにしながら答えた。
「いえ・・マーカス様はお優しい方です。さきほどは失礼なこと言って申し訳ありませんでした」
「ああ、そんなの別にいいよ」
「ミンミンはマーカス様のようなお優しい戦士様のパーティーに加えていただいて幸せです。精一杯がんばります」
「お・・おお、わかった。がんばろうな」
ミンミンはどうやらなかなか感情の起伏の激しい奴みたいだ。
何気に女性キャラが多いです。




