第一章 第二話 Begins
目指せ一日一話!
白い光が消えると、そこには草原が広がっていた。
空は澄み渡り、草は青々と生い茂り、心地よい風が頬を撫ぜる。
そこに寝転がり、自然を感じながら昼寝をしたらどんなに気持ちいいだろうか。
そんなことを思いながら、あたりを見渡す。左から右へと。
そして再度あたりを見渡す。今度は右から左へと。
ない。そう、街がない。
「どこが近くだーーーー!!!!」
『・・・』
大声で叫ぶが、遮蔽物もない草原で声は空しく掻き消える。
(おいおいおいおい! どうすんだこれ!? このまま異世界きた瞬間に餓死ですか!? やっぱりあんなガキ信じるんじゃなかった! 怪しいと思ったんだよ! 変な奴についていっちゃ駄目なんて今どき幼稚園生だって知ってるよ!!!)
『君、命の恩人にそれは失礼じゃないのかな?』
「へ・・・・?」
声が聞こえた方に顔を向けると、にっこりと笑っているマイヤがいた。
「なんでいるんだ!? さっきまでいなかったのに!」
『君さ・・・、見渡すっていう意味は分かっているかい?こうやるんだよ?』
マイヤはそう言って、その場で一回転する。
「!?」
『気付いたかい? 君は左右180°くらいしか見えてないよね? 首を曲げただけなんだから』
「!!??」
『はぁ~、どうやら君を選んだのは間違いだったのかもね。 まぁいいけどさ、君が探してる街だけど僕の後ろに見えるよね? あそこの街にギルドがあるから、とりあえずそこに行くといいよ。今回は特別に街に入るお金とギルドの登録料をあげるからさ。』
マイヤはそう言って銀貨10枚をくれた。
「お、おう。ありがとう。あとなんかごめんなさい・・・。」
『これからはもっと注意を払うんだよ? まぁ幸いここから街までは魔物もでないだろうし、僕はここで帰るとするよ。それじゃぁ第二の人生を楽しんでね♪』
マイヤはそう言って、一瞬でいなくなった。
「ふぅ~、まさか死角をとってくるとは思わなかった。次からは、後ろも確認しよう・・・」
大志はそう決意しながら、街に行くことにした。
☆☆☆
街に着き門兵に銀貨2枚を払い中に入ると、そこは大勢の人で賑わっていた。
街を突き抜けるように大きい道があり、そこに沿って様々な露店がでている。
ある店では林檎のような赤い実が銅貨1枚で売られ、違う店では見たことのない魚が銅貨3枚で売られていた。
(多分、銅貨1枚で100円くらいの価値なのかな? それにしても本当に異世界のようだな・・・ってか異世界か!)
心の中で一人ノリ突込みをしながら歩いているとラノベやアニメで見たような武器や防具を身に着けたいかつい冒険者らしき人が出入りしている建物を見つける。
明らかにギルドっぽい。
(あ~、やっぱりギルドのお決まりイベント、新人いじりが起きそうだな・・・)
諦めと期待を半々にギルドの中に入ると中はとても綺麗だった。
入ってすぐのところに受付があり、その横には食堂らしきものがある。
ただ一点を除けば、想像通りのギルドだった。
誰も新人いじりをしてこないのだ。
(おいおい、殴られるのも覚悟で来たのに期待はずれだよ)
そう思いながら、受付に行くと美女がいた。
「ようこそギルドへ!本日の要件は依頼ですか?それともギルド登録ですか?」
「えっと、登録をしに来ました。」
「ありがとうございます。私は受付を担当しています、ソフィアです。では、まず登録用紙の記入をお願いします。また登録料銀貨3かかりますがよろしいですか?」
「大丈夫です。」
そう言って用紙に記入しながら、あることに気付く。
(そう言えば文字も読めるし、言葉も通じてる。こんな便利なことができるなら日本にいたときに欲しかったよ・・・)
そう思いながらも記入し、再度受付に持っていく。
「タイシさんですね。では、これからギルドカードを発行させていただきます。お手数ですが、この指輪に魔力を通していただけますか? あなたのステータスを計るので」
そう言って指輪を渡してくる。
「・・・魔力ってどうやって通すんですか?」
「はい?」
「「ギャッハハハハ!おい聞いたかお前ら!魔力も通せない馬鹿がギルドにきやがった!今時、乳飲み子ですら魔力通しなんてできるのによう!」」
突然、笑い声と共に罵声があがる。
どうやら、この世界では魔力通しは一般的であるらしい。
というよりやっぱり新人いじりはあったみたいだ。
「「奇妙な服きてるからどんなやつかと思って様子見したのが馬鹿だったぜ! さっさとお家に帰んな!」」
(服・・・?)
今まで色々ありすぎて気付かなかったが大志はスーツ姿だったのだ。
色々思い出せないがおそらく死ぬときに来ていたのだろう。
「おい聞いてんのか!? さっさと帰れって言ってんだよ!!」
野次の中の一人が再度そう言って肩をつかんできた。
プツリ・・・。
何かが切れる音がした。
「・・・あ? 帰りたくても帰る場所なんてねぇんだよ!! いちいち突っかかってくんな!! お前はそんなに偉いのか?この糞虫が!!」
切れてしまった。
(ラノベで数多くの新人いびりを見てきたが、実際はこんなにむかつくのか。よく楽しみになんてできるな!)
「てめぇ、調子のんなよ!? 」
男はそう言ってナイフを取り出す。
「はい!そこまで!!」
正に一発触発。そんな絶妙なタイミングで声がかかり、とてつもないプレッシャーがかかる。
「おい。お前たちいい加減にしろ。ただでさえ、人手が足りないってのによ。」
「「す、すいません!で、でも魔力通しができないっていうもんだから、冒険者にはならないよう勧めようかと思って・・・」」
(おい、お前ら嘘つくなよ・・・。楽しそうに野次ってたじゃないか!)
口に出そうと思っても、とんでもないプレッシャーがかかってて言葉がでない。
「ほう、魔力通しができない? 魔力がないのかい? どれ」
喧嘩を止めた男がそう言って俺に目を向けると、とてつもない悪寒が走る。
体の中を得体の知れないものに撫でられている感覚におそわれる。
「!!・・・魔力あるじゃないか。どれ、ここは俺が直々に魔力通しを教えてやるか。おっと、すまなかったな、これで話せるだろ」
男はそう言って一度視線を外すと全ての硬直がとける。
「げほっ・・げほっ・・・あ、あなたは?」
「おう俺か?俺はリアムだ。 一応ギルドのトップランカーだ。 ところで坊主、魔力通しを教えてやるから指輪をしな」
(何でそんなすごい奴が俺に??)
色々言いたいことはあるが、教えてもらえないと登録ができないわけで、とりあえず指輪をつけることにする。
「よし。つけたな。 坊主、魔力ってのは精神力のようなもので、それを魔素に働きかけて事象を変化させるのが魔法だ。 その指輪は魔素でできている。指輪に何でもいいから光れと念じてみな」
(念じるだけでいいのか!それならできそうだな)
指輪に意識を向けると、体内で何かに撫ぜられている感覚におそわれる。
さっきの感覚に似ているが、これは嫌な感じがしない。
「もっと強く念じてみろ」
そう言われ、さきほどより意識を向ける。
そうすると指輪はまるで応えるかのように激しい明滅し、そして砕け散った。
「「「「「え?」」」」」
リアムという男以外、全員がそう口にしたのだった。
さっそく評価もらえました!
頑張って書くので、よければ感想、評価お願いします!