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人狼ゲーム -八つ目の大罪- 作者:寂尾蘭太
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32/33

31、ゲームマスターco

羽賀「まじかよ……」

日菜々「そ、斉藤さんはスケープゴート。
私が裏で糸を引いてた真の援交の斡旋屋。
そして友達を手にかけた人狼だよ。

あはは!人を見た目で判断しちゃダメだって、みんな言ってたじゃん」

羽賀「……お前、まじでやばいやつだったんだな」

日菜々「だから斉藤を最初に噛んだんだ。あんたと前島みたいに、万一バラされたら困るもん」

それにあの時私は、霊能者を噛むことを避けたかった。
桐生を身内切りした意味が消えるからね。

斉藤が素の村人をひいてるのは、私には予想出来た。
あいつが役職なんてひいてたら、もっと震えてたり、何も話せなくなってるだろうからね。
斉藤を殺しておくのが、今後に一番都合よかったんだ。

日菜々「そうそう、あとあのハゲさ!
初日の議論中、関係を隠そうとしてる私に、日菜々ちゃんっていつもみたいに馴れ馴れしく呼びやがるから、静かに睨みつけてやったよ。
お前は、最初に殺してやるからもう何も喋るなって。
そのあとさり気なく、桃山さんって言い直してたけど……」

全く!
私のことだけを、下の名前で呼ぶなんて、ここに来る前からの知り合いって気付かれちゃうかもしれないじゃん。

羽賀「……それだけでわかんねえよ」

日菜々「でももしバレてたら、あいつの存在自体が信用とりのゲームで不利になるからね。
前島みたいにヘイト稼いだら吊られかねないしさ。
まあ、死人に口無し。これも人狼ゲームの
醍醐味だよね」

私は口の前で人差し指を立て、口角を上げた。

羽賀「斉藤とお前も、もともとの知り合いだったのか」

日菜々「……セイギノミカタは私達参加者を七つの大罪に例えた。
傲慢、強欲、憤怒、怠惰、暴食、嫉妬、色欲。最初に言ってたよね?
あんたと前島がセットで傲慢。
私達は9人。もう1組、共犯関係がいることも考えればわかりそうだけどなぁ」

羽賀「……」

セイギノミカタ「ゲーム終了です!
このゲームの人狼は、桃山日菜々さんと桐生星華さん。
狂人は、織田武臣さんでした。
改めて、おめでとうございます!

そして
占い師は、山井小百合さん。
霊能者は、前島康隆さん。
騎士は、九十九一さん。
村人は、羽賀亮也さん、牧村芽衣子さん、斉藤章三さんでした。
おつかれさまでした!」

日菜々「よし!全問正解!」

羽賀「……」

セイギノミカタ「それでは、敗者チームの処分を始めます!」

円卓が回転する。
羽賀の背後に、狼の牙が来たところで回転は停止する。

羽賀「何でだ?」

日菜々「ん?」

羽賀「何で最後に俺を残したんだ?
少なくとも牧村か俺は選べただろ?
何で俺を残したんだ?」

日菜々「ふふ、やっとそこに触れてくれるんだね」

羽賀「?」

日菜々「ずるいよ羽賀さん。
私に演技をやめろって言ったんだから。

……あんたこそ演技はやめにしてよ」

羽賀「……何の話だ?」

日菜々「私は、ゲームに勝つために全員の大罪を予測した。
でね、その結果一番警戒しなきゃって思ったのが羽賀さんなんだ!」

羽賀「……」

日菜々「ふふ、あんたさぁ……」

羽賀「……」

日菜々「本当にルールを守り、死ぬつもりなの?
……セイギノミカタさん?」

羽賀「……え?
俺が、セイギノミカタ?」

不思議そうな顔の羽賀。

まだとぼける気?
あんたミスしたことに気付いてないの?

日菜々「初日の決選投票の時。
あんたが私のことを下の名前で呼び始めた時。
あんた私に言ったよね?

自分を庇ってくれた親友の死体なんて見た後、こんなゲーム出来ないだろうって。

私は助けてくれたとは言ったけど、庇ってくれたとは言ってない。
何で具体的に知ってるの?」

羽賀「……」

日菜々「ねえ?聞かせてよ」

羽賀「……くくく」

低く笑い始めた。

羽賀「あーあ、ミスったなー
なら教えてやろうか?
俺の大罪を……」










俺はクズだ。

「だー!またハズしちまった……」

生粋のギャンブル中毒。
今日はパチンコ、昨日は競馬、その前は裏カジノ。
全部惨敗だった。

勝てないとわかってる。
いや負けるほうが多いと理解してる。
けど、やっぱり依存してしまう。
俺は博打打ちとして強運、プライドだってあるんだ。
最後は自分の思い通りになるだろう。
そういう根拠のないオカルトじみた考え方は致命的だった。

「あー、やべ。
借金取り立て今日じゃん、どうしよ……」

300万か。
結構いったな。
仕方ねえ……

「あ、もしもし。明美?
ちょっと今、困っててさ。助けてくんない?」

彼女を呼び出す。

「実はギャンブルで負けちまって……」

「ええ!いくら?」

「30万だ」

「嘘でしょ、どうするの?」

「まずいよな……
早く結婚するための資金調達だったんだ。式も指輪も。明美に喜んでもらいたくて……」

「……そ、そんなの言い訳にならないよ!」

「ああ、俺が間違ってた。
で、今借金取りに催促されててさ。
ここで働けばすぐ返せるし、プラス結婚のための金も稼げるって」

「……」

「でも今は女じゃないと雇ってもらえないって言われて……」

「……」

「あ、別に変な仕事じゃないよ?
そこで働ければ、すぐ結婚出来るからすごく悔しくて」

「……私にそこで働けって?」

「……ああ。でも勿論、断ろうと思ってる。いくら結婚が早まるとはいえ、明美にそんなことお願い出来ないからな」

「……いいよ」

「えっ?」

「そもそも私と早く結婚するためにしたことなんでしょ?ならいいよ働いても」

「まじで言ってんの?」

「お金があれば、結婚してくれるんでしょ?」

「勿論だ!すぐにしたいよ!」

「なら、いいよ」

「まじでか!
……すまん!恩にきる!
金がまとまったら、すぐ結婚しような」

「うん、待ってるから亮也……」

よしよし、金が手に入る。
すぐにヤクザどもを呼んで、明美を連れて行ってもらった。

行き先は勿論、風俗だ。
そう、俺は女を売った。

結婚するってのも嘘だ。
定番の常套句。

恋は人を盲目にする。
いいところを絶賛し、具合の悪いことは認めない。
ちょろいもんさ。

そうさ、女を売ること自体これが初めてじゃない。
クズの俺の常套手段さ。
橋本明美と書かれた連絡先を削除する。

「約束通り、借金はチャラ。
これは報酬だ」

ヤクザから差し出された封筒を受け取る。

「うわ、こんなに?
いつもすみませんねぇ」

やった!これで……
これで、またギャンブル出来るぞ!





そんなある時、どうしても払えない状況が来てしまう。

「待ってくれ!必ず払うから!ちょっと待ってくれりゃ、また女引っ掛けて売るから頼むよ!」

ヤクザに連れて行かれる俺。
やべ、人生終わったかな?

「待て。そのクズの人生俺が買おう」

そんな時、現れたのがあいつだった。

「自分の欲のために人を売るクズ。
くく、傲慢だなお前。
何も疑問に感じず、ただ金のため動くお前のようなやつがほしかった。これでお前の人生は俺のものだ」

「俺に何をさせるつもりだ?」

「なに大したことじゃないさ。
俺の正義の裁きを執行するために協力者が必要なんだ。
今度はお前が、盲目的に従う番だ。
俺の指示にな!」

そいつは探偵。名は前島康隆と言った。





「津島亜梨沙だな」

「あ?何よあんた?」

「悪質な轢き逃げ殺人犯だが、未成年ということもあり数年で出所か。
一緒に来てもらおう」

スーツにグラサンの俺。
いかにもそっち系の人間に見える俺。

こいつを拉致しろとの命令。

そしてその後は、ご察しの通り。
康隆が更正のためのゲームを用意してる。





「い、痛い!
し、死ぬ!死んじゃうよお!
お願い!助けて!!」

「津島亜梨沙……どうだ理解したか?
これが、単車に轢き逃げされた老婆の最期の痛みだ。

彼女も助けてもらいたかったろうな。
恋人とのデートを優先し、走り去る貴様の背中を見て、何を思ったかわかったか?」

「……してやる」

「ん?」

「殺してやる!殺してやる!殺してやる!
体にこんな傷あったら、二度と彼氏出来ないだろうが!!
てめえ!いつか絶対ぶっ殺してやるからな!!」

「ふん……貴様に更正の余地はなさそうだ。
貴様に、いつかなんてない。
もういい、死んで償え」

「え?や、やだ!いや……ぎゃあああ!!」





「あーあ、死んじまった」

「ふん、こいつにも更正の可能性はない。
死んで当然だ。
いつものように死体を処理し、戸籍は売れ」

「へいへい。
……なあ康隆」

「何だ?」

「犯罪者を裁くため、犯罪に手を染める。
俺たちは一体何なんだろな?」

「そんなもの決まっている」

「ん?」

「正義の味方さ」

「正義?」

「ああ。こいつら犯罪者も己の正義に従い、道を外した。
俺が本物の正義というものを教えてやらなければならない」

「ふーん、俺からしたらお前も死んだこいつらも変わらんけどな」

「ふん」

「……なあ康隆!」

「何だ?」

「なら俺らも、別の正義に裁かれる時が来ても文句言えないってことだよな?」

「……ふん、詭弁だな。
そんなことはない。
俺が……
俺らこそが真の正義なんだからな」

傲慢だな。
ま、俺も人のこと言えんけど。

俺の大罪、傲慢。

そうさ、選んでる自体で傲りなのさ。

恋愛ひとつとっても、そう。
なぜ選ぶ側に勝手に回ってるんだ。

好きも嫌いも傲慢。

正義も悪も、そう。

人間は気付かずに傲る生き物なんだから。





「ったく!また拉致かよ。
今回は拉致る人数多いし、指示のメールも雑だし、康隆のやろう何考えてやがんだよ」

1人、フルスモークの車の中で憤る。
今日拉致するターゲットの写真に目を落とす。

「この子が今回の拉致ターゲットね。
へえ、可愛いJKじゃん!うへへ」

下心が出る。今日数人拉致した連中の中で、一番好みだった。

「で、これが逃走した時のルート予想ね。へえ、よく把握してんだな。
ならわざと逃がして、この辺で待ち伏せるか……」

そうこうしてる内に、ターゲットが来た。

「それにこんなもん被って顔隠せとかバカだろ。まあ仕方ねえ、仕事すっか!
よいしょ!」

用意されたふざけた物で顔を隠し、車から降りた。
ターゲットに話しかける。

「桃山日菜々さんだね?」

「え?……あ、はい」

「何だあんた?」

「一緒に来てもらおう、車に乗ってくれ」





けたたましいベルの音。
寝ているのに起こされる。

「ふあーあ、うっせーなー。今何時だ?」

あれ?いつの間に寝てしまったんだ?
俺は指示通り、拉致した奴らを円卓に並べた後、康隆と待ち合わせしてた筈じゃ?
動けねえ、何で俺まで座らされてるんだ?

「え?何これ?外れないよ」

「ちょっと何よこれ!私をどうするつもりなのよ!」

やっぱり!俺が拉致した連中じゃん!
てか康隆もいるし!
何だこの状況。まさか……

「あれ?俺も拉致られちゃったの?はは……やられたな」

そう、いつだって選ぶ側だって選ばれることがあるのさ。










日菜々「ふーん、面白い話をありがとう」

羽賀「ふっ、ここで俺が肯定しようが否定しようが、お前はその言葉を安易に信じたりしないだろう?」

日菜々「ま、そうかもね。
でも本当だとしてさ、何でそんな大事なこと言わなかったの?」

羽賀「はっ、言えるかよ。
俺が皆さんをここに拉致してきましたー……ってか?
セイギノミカタが死ねばゲーム終了とか言われてた中、言えるわけねえじゃねえか」

日菜々「あはは!ま、そうだね」

本当、何でこんなルールあるんだって思ったわな。

羽賀「そうさ……お前らには傲りしかない」

日菜々「?」

羽賀「いいか、よく聞け!
信じるも信じないも、好きも嫌いも、正義も悪も、全部傲慢さ!
騙すことがあれば、騙されることも必ずある!
俺らを殺したことを生涯忘れんな!
そして、いつかまた別の人狼に食われるのを震えて待ちやがれ!」

これは桃山日菜々だけにではなく、俺を利用したゲームマスター、セイギノミカタにも言っている。

こいつらの心に、生涯忘れられないような遺言を……

俺の生涯最期のギャンブル。

日菜々「……あっそ。
……もう死んでいいよ」

椅子が勢いよく引かれる。
ドンドン遠くなる円卓。
せせら笑う桃山日菜々。

あーあ、ちくしょう!
……またハズしちまったかな?





視界が赤く染まる中、俺は考える。

でも俺はひとつだけあえて教えなかったことがある。

それは、セイギノミカタの正体。
俺は実は知っている。
いや、知る機会があった。

だから最後、桃山日菜々だけにではなく円卓に向かい発言したのだ。



「……羽賀、いけ。必ず捕まえて来い」



あーそっか、なるほどね。
今わかったわ。

この情報を持った俺が保身に走らず、この話をみんなに共有出来た時、セイギノミカタを殺せるシチュエーションを作り出せたってわけか。

最期。もう一度、円卓へ目を向けた。

もう、遅えわな。

そう、セイギノミカタとは……
……あいつのことだよ。



羽賀亮也、死亡。
ゲーム終了後、敗者チームにて処刑。





七つの大罪

1、前島康隆………傲慢(主犯)
2、羽賀亮也………傲慢(共犯)
3、牧村芽衣子……強欲
4、織田武臣………憤怒
5、山井小百合……怠惰
6、九十九一………暴食
7、桐生星華………嫉妬
8、斉藤章三………色欲(共犯)
9、桃山日菜々……色欲(主犯)





日菜々「……」

羽賀の死体を眺める。

羽賀さん……
私を最初に信じてくれた村人。
セイギノミカタに利用され、私達を拉致した人……

彼だけじゃない。円卓に囲まれた9つの死体を見る。

牧村さん……
伝説の詐欺師Mr.ハロウィン。
自分のチームの勝利と、自身の生き残りを具体的に考えられていた人。
パワープレイの時は、ありえないくらい人狼っぽかった最強の村人……

きょろきょろと死体に目を配った。
記憶がゆっくりと遡る。

九十九さん……
指名手配殺人犯なのに、唯一全員生還を目指し、自分の命を差し出してまで実現させようとした騎士……

織田さん……
自分の死を受け入れ、人生最期でまで嘘をつき、私のために役目を果たしてくれた狂人……

みんながぼやけていく。
自分が何で泣いているのかわからなかった。

山井さん……
全ての答えを知っていたのに、結局最期まで自分の保身に走った占い師。彼女の動きがひとつでも違えば展開は変わってただろう……

前島さん……
みんなのリーダー格で初日から私が人狼だと言い当ててた人。
そして私が黒出ししたことで死に追いやった霊能者……

もうすごく昔のことような感覚だった。

斉藤さん……
私の共犯者。生きててほしくなかったから、私が直接最初に殺した村人……

桐生さん……
最初に死んだパートナーの人狼。
協力して人狼チームとして戦ってたらどうなってたのかな?

生きてるのはもう私だけ。

そして……
左へ目を向ける。

灰ちゃん……

日菜々「灰ちゃん……勝ったよ。
言われた通り、私生き残ったよ」

血塗れの愛した人へ呟く。
涙が溢れた。

セイギノミカタ「桃山日菜々さん!
お疲れ様です。
あなたは正義の仲間入りだ!」

カシャン

忌々しい首輪とベルトが同時に外れる。
これで自由。立ち上がれる。

日菜々「……うっ!」

吐き気を催し、すぐに部屋の端へ逃げる。
そして吐いた。

日菜々「うっ!うぇ!うえええ……」

平気なもんか。
人をこれだけ殺したんだ。

「げほ、ごほ……うぅ……
違う。
私のせいじゃない。
仕方なかった。
人狼を引いたから仕方ない。
やらなきゃやられてた。
どうせどいつもこいつも犯罪者だもん。
殺されて当然なんだ。
私は悪くない私は悪くない私は悪くない私は悪くない」

震える両肩を掴み、ブツブツと嘔吐物へ呟く。
そして自分を正当化する。

私の心は弱い。
明日香の時もそうだった。
もともと私は、犯罪に手を染める選択が出来ても、罪悪感はしっかり残るタイプ。
人を死なせてしまうのが嫌だって話は、本当だ。

悪党ぶらないと、本当に心がおかしくなってしまいそうだったんだ。

日菜々「うぅ……」

ギィィ……

たまたま目の前にあった扉が開く。
その先にある光。

帰れる……
また平凡な日常へ。

フラフラと外へ歩く。



カシャン



背後で首輪とベルトが外れる音がした。

えっ?生きてる人間なんて、もう私以外いないのに……

記憶が勢いよく遡る。



「もしも、ゲームマスターである僕が死んだりして……」



「セイギノミカタが死ぬこともあるみたいな言い方だよね」



「おい、質問無視かよ!」



「答えてもくれんのか……」



「あとから質問されても受け付けないからね」



「この目で見届けさせてもらうよ」



まさか……
そんな、まさか……



パチパチパチ

拍手の音。

振り返ると、円卓にひとり……

さっきまで死んでいた者が立ち上がり、私を賞賛していた。
次回、最終回です!
+注意+
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