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人狼ゲーム -八つ目の大罪- 作者:寂尾蘭太
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09、吊り

桐生「……」

桐生は放心している。
残る8人も口を開く者はいなかった。

セイギノミカタ「では、これより処刑を開始します!」

同時に椅子と円卓が回転を始めた。

日菜々「わっ」

斉藤「うおっ」

そして、電気椅子の前に桐生星華が来たところでピタリと止まる。

桐生「あ……」

はっとしたように桐生が背後の電気椅子を認める。

桐生は電気椅子の方へ椅子ごとゆっくりと近づき始めた。

桐生「あ、ああ、いやあああ!」

暴れる。
ベルトと首輪を掴み、叫ぶ。

桐生「いやああ!助けて!誰かあああ!」

桐生の抜けた円卓は再びゆっくりと回転を始める。
これから死にゆく者の様子を、全員が見届けられるように。

全員唖然としていた。
その事態をぽかんと見つめ、微動だにしない。

まだ心のどこかで、殺すということに向き合ってなかったのだろう。

そこに口を開いたのは九十九だった。

九十九「よく見ろ。そして目を背けるな。
これは皆で出した答えだろう?
自分を守るためなんて言い訳にしかならん」

桐生「助けてえええ!」

九十九「人を殺すとは、
こういうことだと自覚しろ」

重い言葉だった。

九十九か。
実の母を殺した犯罪者だが、よくわからない男だ。

桐生「助けて!」

日菜々「……うう」

日菜々は苦しそうに耳を塞いだ。

桐生「助けて!誰か!お願い!助けてよおお!」

桐生が金網の中で止まった。
同時に機械が作動する音が響いた。

桐生は多量の水を頭から被り、ずぶ濡れになる。
これから流れる電気を通しやすくするためと想定出来るだろう。

桐生「げほっげほ……た、助けて。やめて……」

そこで桐生がはっと何かに気付いた様子を見せた。
死の直前の様子としては少し奇妙だった。

セイギノミカタ「準備オッケー!
桐生星華、処刑執行!!」

桐生「あは……はは」

最期。
笑った。なぜ?

大きな電気音と、耳を塞ぎたくなるような絶叫が部屋中に響いた。










独白
『嫉妬の大罪』



あれは……今から5年前になるわ。
私がまだ高校生の時の話ね。

私の通う高校は、県内一の偏差値を誇るお嬢様女子校だった。

勿論、パパが金積んで入学させてくれたんだけど、
幼い頃からの英才教育のおかげで勉強についていけないことはなかったわ。
まあ財閥の一人娘なんだし、当然の人生って感じだったかな。

でも私の人生は、そこで狂いかけた。

クラスに1人、めちゃくちゃ賢い子がいてさ。
その子は学年トップの成績だった。

頭もよくて、それなりに可愛かったし、おまけに性格もよくて、何より大して金持ちでもない普通の家庭出身ってのもイラついたんだよね。

だから私はその子をいじめた。

不思議とその子に嫉妬してた子って結構いてさ、
待ってたかのように便乗してきたのを驚いたの覚えてる。

私物をゴミ箱に捨てたり、髪の毛切ったり、トイレに入ったあと上からバケツで水を被せたりしてやったわ。

不登校になると思ってた。
成績も下がるだろう。
そうなりゃよかった。

でも次の日も、その次の日もその子は学校に来るしトップをとり続けた。

その頃には、その子の姿、声、存在。
何もかもが腹立つようになってたのよね。

……何でなんだろうな。
今となれば、何であそこまで人を憎めたかわからない。

で、事件が起きたのが、3年生の秋頃。

うちの高校に来る一番大きな大学推薦の枠。
それをその子がとっちゃったの。

先生達は、その子がトップの成績だと言う理由は勿論のこと、これだけ辛い状況でがんばったのを評価したらしいわ。
つまりいじめは黙認してたのね。

……それがどんな結果を生むか全くわかってないわよね。

10人くらいでその子連れ出して、いつもよりちょっとハードないじめをした。
そして私は、とんでもないことを思いついた。

「小夜子、そいつの携帯とって」

「はいよ、どうすんの星華?」

「大学に推薦辞退の電話入れてやるの」

めちゃくちゃ抵抗された。
かつてないほど泣き喚いてた。

でも私達は、聞く耳持たなかった。
それを笑ってた。
恐ろしいほど冷徹だった。

「……推薦辞退させていただきますー
おたくのようなくそみたいな大学行きたくないんでー」

その後は、その子何言っても放心してた。

あとでわかったんだけど、その子の家庭思ってたよりずっと貧乏で、その推薦じゃないと進学は難しかったみたいなの。

でもその大学に進学はしたかったみたいで、だからいじめられても休まずに、皆勤賞狙ってたし、成績も落とさなかった。

ずっと涙を流しながら、耐えて手に入れた夢をその場で奪われた。
心が壊れちゃってもおかしくないよね。

その子はその日の内に、校舎の屋上から飛び降りたわ。

次の日ニュースを見て、私は思った。
大変なことをしてしまったって。

学校は警察の調査があり、しばらく休校になって、1週間後にパパに呼び出された。

パパに全部バレてた。
物証、証言、そして遺書。
確かないじめの証拠。
全てが私を不利にする内容だったらしい。

だからパパは全て揉み消してくれた。
元々、警察のトップとはいい関係だったみたいだし、高い金積んでくれた。

そして、私は思った。
よかった。私の人生は助かったんだって。

……だって、そんなことで退学になって、人生棒に振っちゃうの最悪じゃない。
世間に報道されてたら、私の人生は死んだも同然だったんだから。

私の大罪、嫉妬。
嫉妬って言うのは、確かに人間を死に追い込みかねない大罪のひとつなんだなって学んだよね。

……ふふ、こんな考えだからなのよ。
こんな考えしか出来ないから、吊られちゃったんだと思う。

私は性格のせいか、育ちのせいか、
主観的にしか考えられない。
客観的になんて考えたことない。

最期、それに気付いた。
助けを求めた私に対して、他の人達の顔がいじめをしていた昔の私に見えたわ。
そりゃ助けてくれるわけないよね。
逆の立場になって、少し可笑しかった。

まあひとつ言えることは、他の人間の考えを客観的に考えられない私は、こういう心理ゲームに全く向いてないんだとわかったことかな。



桐生星華、死亡。
1日目、昼のターンにて処刑。





1日目、昼のターン終了。

1、前島康隆
2、羽賀亮也
3、牧村芽衣子
4、織田武臣
5、山井小百合
6、九十九一
7、桐生星華………死亡、1日目処刑
8、斉藤章三
9、桃山日菜々

残り8人。



逆に言うと、人の気持ちが理解出来た上でそれを平然と握り潰せる人間。
人狼がそんな人間なら、村人チームの勝つ目は厳しいだろう。

だって私が最期に見たものは……
人狼の、笑っている顔だったんだから。
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