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00、プロローグ

人狼。

普通の人間と変わらない様子で人を装い、人知れぬとこで牙を剥き人間を襲う。


人狼は少数だが、人間が多数集まる場所に人知れず潜んでいる。


あなたは隣にいる人が人狼でないと言い切れますか?




イラスト:やらかし屋のペンギン様

挿絵(By みてみん)




懇願される。


「助けて……日菜々」


やめて、そんな目で見ないで。


「ねえ、お願い助けて日菜々!」


やめて!私は助けられないの!


「死にたくない……いやあああ!」




目を見開いた。見慣れた天井。

汗びっしょりの体。目には涙。


またあの夢か……


体を起こした。

嫌な過去を再現するだけの悪夢。

最近見ることは減っていたが、また見てしまった。


あの事件から1ヶ月。

つまり私の中で、あの時の罪の意識がまだ消えていない証拠か。


そう、私が殺したんだ……


手が震えた。

そして、しっかりと自覚する。


母「日菜々!そろそろ起きて用意しなさい!灰司君、待たせちゃうわよー」


母の声が部屋の外から届き、はっとした。

そうだ、早く準備しないと。


日菜々「……はーい!もう起きてるよ!」


震えていた手を固く握り、ベッドから出た。











『人狼ゲーム −八つ目の大罪−』

イラスト:ちー様

挿絵(By みてみん)











私の名前は、桃山(ももやま)日菜々(ひなな)

どこにでもいるような普通の高校2年生。

挿絵(By みてみん)


日菜々「じゃあ行ってきます!」


母「はいはい、行ってらっしゃい」


ドアを開く。

そこには見慣れた顔がある。


灰司「おはよ、日菜々」


日菜々「灰ちゃん!おはよー」


灰司「ちょっと今日遅れてるぞ、急ごう!」


日菜々「うん」


母「灰司君、いつもありがとう。今日もよろしくね」


灰司「いえいえ、行ってきます」


母「2人とも行ってらっしゃい」


見送る母を背に、少し駆け足で見慣れた通学路を今日も辿る。


日菜々「ごめん、待ったよね?」


灰司「少しだけ走れるか?遅刻はよくない」


日菜々「大丈夫!」


彼は自然と私の手を引く。


うわー……顔赤いって言われたら、走ったからだって言おう。




彼の名前は、清水灰司(しみず はいじ)

幼馴染であり、同じ高校のクラスメイト。

父が警察のお偉いさんなせいか、いつだって真面目で真っ直ぐだ。

挿絵(By みてみん)


どこにでもいる普通な高校2年生の私に比べれば、灰司は少し特徴的なのかもしれない。


あ、でも私の普通じゃないところがあるとすれば、1ヶ月前に少し悲しい経験をしたこと。


親友を亡くした。


すごくショックだった。

彼女が死んだ日は、ショックで何度も吐いてしまうほど。

何がそこまでショックだったかと言うと、親友だった私は彼女の死を止めてあげられたかもしれないのに助けてあげられなかったこと。


当時は学校に行けないほど心を病んだ。


灰司が毎日登下校を一緒にしてくれるのは、このためだ。

おかげで今はこうして普通に学校に行けるようにはなった。


しかし彼女が助けを乞う姿は、今も夢に見る。


これが私の罪。




灰司「ふう、こんだけ走ればもう大丈夫だろ、お疲れさん!」


日菜々「うん!」


ひと気のない道で、歩を緩めた。

時計に目を落とす。間に合いそうだ。


灰司「今日一限何だっけ?」


日菜々「英語だよ」


そこで気付く。

こんな舗装も曖昧な道に、似つかないフルスモークの大型車が停まっていた。

こんな車が停まっているのは初めて見た。


灰司「一限英語か、宿題やったか?」


日菜々「したよー、もちろん」


その車に近づくたびに、何故か不安になる。


灰司「さすが成績優秀者」


日菜々「普通でしょ」


車の後部座席のドアが開き、スーツの男が現れた。


灰司「ん?」


その男は、何をふざけているのか被り物のマスクで顔を隠していた。

マスクは、休日のデパートの屋上などで、子供向けに行われている戦隊ヒーローのものだとわかる。


マスク「桃山日菜々さんだね?」


日菜々「え?……あ、はい」


灰司「何だあんた?」


マスク「一緒に来てもらおう、車に乗ってくれ」


日菜々「え?」


灰司「日菜々、知り合いか?」


日菜々「んーん、知らないよ」


灰司「おい、あんた誰だよ?」


マスク「……いいから来い!」


私に向け、大きな手が伸びて来た。

それを灰司が払いのける。


灰司「日菜々に触んな!」


マスク「くそ……ガキが」


マスクの男は灰司に掴みかかる。


日菜々「灰ちゃん!」


灰司「日菜々!逃げろ!」


私は動けない。まだこの状況についていけない。


灰司「おい、逃げろって!」


日菜々「で、でも」


灰司「いいから!こいつの狙いはお前だ!早く逃げて警察に電話してくれ!」


ゆっくり一歩引く。

そうか、警察に電話しなきゃ。


灰司「早くいけ!!」


日菜々「う、ごめん灰ちゃん!」


踵を返し、走り出した。

背後から声が聞こえるが、振り返らず全力で走る。

灰司がマスクの男の追跡を遮ってくれているのだろう。


日菜々「はぁ、はぁ」


今走って通学してきた道を、全力で逆走する。


不安は当たった。


何なんだあの男は?

狙いは自分だった。

目的は誘拐?

車に乗せてどこに連れていくつもりだったのか?

なぜ顔を隠している?


混乱した頭に疑問が跳ね回る。


畦道を抜け、曲がり角を曲がり、その陰に隠れ後部の様子を伺う。


……誰も追ってきていない。


急いで携帯を出し、警察にかけようとする。


日菜々「はぁ、はぁ、はぁ」


灰ちゃんは無事なのかな?

早く、早く助けを呼ばないと。


ちょうど発信を押した時、背後に気配を感じた。


振り返ろうとしたが、すぐ口に布のような物を覆われる。


日菜々「んん!」


視界が歪む。


うそ、先回りされてたの?

これ何かの薬?


マスク「悪いな」


意識が遠のく。


灰ちゃんごめん……

……ああ、英語の宿題……

出せそうにな……い……


腕がだらんと下がり携帯が地面に転がったところで、ようやく携帯は警察に繋がった。


しかしもう遅かった。











No.9、桃山日菜々

無事捕獲。


これで全員だ。


???「さあゲームが始まる。

結末はハッピーエンドか、はたまたバッドエンドか。

この目で見て、楽しませてもらおうじゃないか

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