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占いなんて信じない

遅くなりました⋯⋯⋯⋯⋯

この2人のことを、一体どれだけの人が覚えているだろう。


「なあ日女川、この先輩たちって⋯⋯」

「ああ、球技大会の時、蓮を怪我させた先輩たちだ」


斎藤と暮野の顔が強張った。俺は蓮の前に出て背中に庇いながら2人組を睨みつけた。真夏だと言うのに妙に冷え込んだ緊張感が間を漂う。

金パとゲジ眉が険しい顔をさらに引き締めた。そして俺たちの方へ一歩踏み出し、



「「お久しぶりです姉御、兄貴!」」


びしっと姿勢を正してお辞儀をした。



「は⋯⋯⋯⋯?」


斎藤と暮野が一斉に間の抜けた声を漏らした。


「お久しぶりです、金谷先輩、繭田先輩」

「兄貴ぃ! 元気そうでよかったっす!」

「うるさいです先輩。しゃべらないでください」

「はっ!! すんません姉御!」

「え? 日女川?? 待って、どういうこと?」

「⋯⋯⋯⋯⋯????」


にこやかな笑顔で挨拶を返す蓮、反してめんどくさそうに答える俺。相変わらずやくざ映画の下っ端みたいな態度で声を張る2人の先輩。混乱した様子でわたわたし出す斎藤。表情は変えないまま顔色だけを高速で変えるという離れ業を披露する暮野。⋯⋯てか誰が姉御だ。


「いや、見ての通り金パ先輩とゲジ眉先輩だけど?」

「⋯⋯梓、金谷先輩と繭田先輩ね?」

「⋯⋯⋯⋯んで金パ先輩とゲジ眉先輩がどうかしたのか?」

「覚えろよ! って、そうじゃなくて!」


蓮の訂正を聞き流し斎藤に向き直った。うさ耳をぴょこぴょこさせながら戸惑っている斎藤を見て、言いようのない疲労感に襲われる。お前まだつけてたのかようさ耳カチューシャ。次第に見慣れて違和感がなくなってきてるじゃねえか。次からお前のことうさ子ちゃんって呼ぶぞ。


「なんでその先輩に頭下げられてんの!? てか姉御って何!!??」

「お前もうるさいうさ子。ちょっと黙れ」

「うさ子って誰!?」


叫ぶなうさ子。焦りと混乱で顔面がすごいことになってるぞ。鬼の形相とうさ耳カチューシャ。どう考えても危ない人だ。近寄りたくない。

すすっと自然に距離を取ろうとしたが、うさ子に服の裾を掴まれた。逃れようともがいていると、蓮が温和な笑顔を浮かべながら口を開いた。


「まあまあ梓、斎藤は球技大会の後のこと、何も知らないんだから」

「⋯⋯そうだったか?」

「そうだよ知らないよ!!」


⋯⋯⋯⋯マジか。これは俺の落ち度だな。悪かったうさ子。今からちゃんと説明す⋯⋯


「俺たち梓姉御と兄貴に惚れたんっす!」

「で、舎弟にしてもらったんっすよ!!」


興奮した様子の金パとゲジ眉に遮られた。だから姉御じゃないって言ってるだろうが。


「しゃ、舎弟!?」

「いや落ち着け斎藤、”しゃてい”とは”射程”の間違いだろう。きっと日女川のストレス発散用サンドバックにでもなったに違いない」

「⋯⋯暮野、それって結局意味変わんなくない?」


お前らちょっと落ち着け。


「だってつい最近まで険悪だった連中だよ!? 訳分かんないって!!」


そろそろ斎藤が倒れそうなので、とりあえず簡潔に説明しよう。


「いや、あの後一応丸く収まって「姉御! 今日も可愛いっすね! 俺と付き合ってくださげふぅっっっ!!!」

「⋯⋯でな、とりあえず血祭にはならなくて済んだ」

「いや、意味わかんないんだけど」


話している最中に乱入してきたゲジ眉にお約束の回し蹴りをたたき込んで言い終える。どうした斎藤。今の完璧な説明で何か分からない点でもあったか?

じとっとした目を向けてくる斎藤に視線を返していると、下から不気味な笑い声が聞こえてきた。横目をやると、地面で伸びてるゲジ眉先輩が鼻血を流しながら笑っている。背筋に寒気が走った。


「さすがっす姉御。かっこいいっす⋯⋯」


何こいつMなの?


「⋯⋯あれ、こんなところに巨大な虫が⋯⋯」

「ひ、日女川! 落ち着け!!」

「落ち着いてるよ? すっごく」

「どこがだよ!? 明らか殺人鬼の目になってるぞ!?」

「大丈夫だ斎藤。ちょっと首の骨を折るだけだから」

「それ確実に死ぬから!!」


「あの⋯⋯」


羽交い絞めにしてくる斎藤と暴れる俺で騒いでいると、さっきまで黙っていた蓮が口を挟んできた。



「先輩方、何か御用があったんじゃないんですか?」



⋯⋯⋯⋯⋯。


場が沈黙した。



ーーーーー



「占い?」

「そうっす姉御!!」


ふーん。どうでもいいな。ちなみに俺の呼び方についてはキリが無いのでスルーすることにした。


「残念ですけど、全然興味ないです」

「えーーー!? そう言わないでくださいよ!!」

「俺たちのクラスかの有名な”オーメンソルーター”がいるんすよ!!」

「は? 何その中二病丸出しの名⋯⋯「”オーメンソルーター”だと!?」


いやだから誰だよ。学校の中二は水島だけで十分だ。


「ま、まさか日女川知らないの?」

「うん」

「マジかよ⋯⋯」


斎藤が信じられないと言わんばかりの目を向けてくる。ちなみにうさ耳は飽きたらしく外されて鞄の中にしまってある。うさ子ちゃん卒業だ。


「”オーメンソルーター”は今ネットやメディアで大注目されてる凄腕占い師だよ」

「はあ⋯⋯」

「本当に当たるらしくて、占ってもらうには半年とか1年とか待たないといけないらしい」

「ふーん」

「この間なんかテレビで一週間分の天気予測をやって、正答率100%を叩きだした」


⋯⋯⋯⋯は?


「ああ。それなら俺も見た」

「暮野も!? じゃあその後の週間音楽ランキングの予想は⋯⋯」

「見た。あの後ずっと確認しているが、順位どころかCDの売り上げ枚数まで一致している」



⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯へ??


「私も、つい4日前にニュースで報じられてた失踪女児の居場所、占いで当てたって今朝テレビで見たよ」



「はあぁぁぁああ!!??」


何!? どういうこと!?


「な、なんだよ日女川、いきなりそんな声出して」

「なんだよじゃねえよ!! もはやそれ占いじゃないじゃん! 予言者じゃねえか!!」

「なるほど、だから”神託の解明者オーメンソルーター”⋯⋯」


おいこら斎藤。何納得してんだよ、変だと思わないのか? てかそもそもなんでそんな超人がこの学校にいるんだよ。



「とりあえず、会ってみませんか?」


金パ先輩がにこやかに笑いながら言った。



占いなんて信じない。でもここまですごいのなら会ってみる価値はあると思った。




久しぶりですね、金パ先輩、ゲジ眉先輩。私もまたお会いできる日が来るとは全く思っていませんでした。


金パ「それって俺たちのこと意外と気に入ってるってことですよね??」

梓 「いや、単に新キャラ考えるのめんどくさかっただけだと思うぞ」


⋯⋯⋯⋯梓くん、そういうこと言わなくていいです。横で金パ先輩涙目になってるじゃないですか。意外とガラスのハートなんですよ彼は。

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