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一触即発!

更新が遅くなっていますが、必ず最後まで連載しきりますので気長にお待ちいただければ嬉しいです。


※バグって変な文章になっていたので、修正しました。申し訳ございません。以後気を付けたいと思います

「日女川、王子と文化祭デートか?」

「黙れKY。キムチヨーグルトでも食ってろ」

「何それまずそう」

「いや、意外とうまい」

「え!? うまいの!?」


ああ。キムチの辛さとヨーグルトの甘さを含んだ酸味が絶妙だ。両方発酵食品だからな。相性は醤油とバニラアイス並だ。⋯⋯いや、今はそんなことが言いたいんじゃなくて⋯⋯。


「暮野、なんで斎藤と一緒にいるんだ?」


俺の言葉に暮野は廊下にもたれ掛かりため息を吐いた。頭にのせられたピンクのうさ耳がぴょこんと上下する。


「いや、暮野がさ、教室で1人寂しそうにしてたから誘ったんだよ」

「あれは誘ったとは言わない⋯⋯」


暮野が身じろぎするたびにうさ耳がぴょこぴょこ動く。それが意外に可愛くてツッコみたくて堪らないが、ぐっと我慢して暮野の顔を観察した。目に光は無く眉は下がり気味、顔色も悪い。心なしか話す声にも覇気がなく疲れが滲み出ている。


なるほど。斎藤に強制連行されたんだな、気の毒に。


「で、日女川は何やってたんだよ。やっぱりデートだろ?」

「ち、違う!」

「⋯⋯何むきになってんだよ」


斎藤がかえって疑わしそうな目でじろじろ見てくる。衝動的に蹴りが炸裂し、斎藤がうめき声を上げて床に崩れ落ちた。顔に血液が集中しのぼせてきた。変だな、気温が急に2,3度上がったみたいだ。地球温暖化の影響だな。


「⋯⋯っ、相変わらずキレッキレだな」

「斎藤お前もう息すんな。二酸化炭素が増える」

「え!? 理不尽!」


よろよろと壁をつたって立ち上がる斎藤を、蓮が横から支えた。斎藤が「ありがとう」と言って蓮の肩に触れる。それがなぜか面白くない。


「斎藤、大丈夫?」

「ああ、王子は優しいなあ」

「おい斎藤。蓮に触るな」

「日女川、今日機嫌悪い?」


知らん。俺が聞きたい。


「ごめんね。梓、今日生理なの」

「おいコラ蓮、何言ってんだ」

「そうなのか日女川」

「暮野もめんどくさいところで入ってくんな!!」


何なんだお前ら! 俺は今暑くて不調なんだ。あんまり激しいツッコミはきついんだよ。ちょっとはクールに振る舞ってくれ。

膝に手をついて荒い息を吐く俺に、斎藤は頭をぽりぽり掻くと申し訳なさそうな顔をした。


「あー⋯⋯。なんかごめんな? デートの邪魔して」


おいコラなんでそうなる。デートじゃないって言ってんだろうが。


ひめかわに蹴り殺される前に退散するな。行こうぜ、暮野」


斎藤が暮野の肩に腕を回し、蓮に軽く手を振ると踵を返した。


は!? ち、ちょっと待て! なんか誤解してるだろお前ら!


「お、おい、お前ら待「斎藤! 暮野!」


歩き出した2人に蓮が声を掛けた。声を遮られたことにムッとして彼女を見ると、蓮はなぜか恥ずかし気に目を泳がせながら、小さな声で話し出した。


「梓とは、デートじゃないから⋯⋯」


おお、さすが蓮! 誤解を解くために呼び止めたんだな。さすが俺の自慢の幼馴染だ。


「だから⋯⋯、4人で回らない?」


うんうん⋯⋯⋯⋯え??



なんでそうなった??



ーーーーー



「じゃあまずはどこから回る?」


俺の隣にはいつもより2,3倍テンションが高い斎藤。


「模擬店は?」

「さっき梓と行った」

「じゃあ校舎内からだな」


後ろには仲良さげに並んで談笑する蓮と暮野。



どうしてこうなった⋯⋯。


俺は確か蓮と2人で文化祭を回っていたはず。それがいつの間にこんな大人数になっているんだ。


「そういえば暮野、野球部で回らなくていいの?」

「ああ、断った」


そしてなぜ蓮と暮野はあんなにも仲がいいんだ。前から思ってたけどさ、君ら2人の間に何があったわけ?


勘違いしないように言っておくが、別に蓮と2人きりが良かったとかじゃない。あれだ、姉を取られた弟の気分。⋯⋯あれ? 蓮はイケメンだから兄貴か? あれだ、漫画でよくある最強の兄で越えられない壁ポジショ⋯⋯


「よし、ここにしようぜ!」


斎藤の声で我に返る。立ち止まって指さされた方を見、


”怖いお化け屋敷 マジで怖いよ”



「お化け屋敷かよ!?」


そのまま叫んだ。展開がベタすぎて泣けてくる。もっとひねった話を考えろよ”天の偉い人”!


しかもなんだこの異様に強調してくる看板は。強調しずぎて逆に笑えてくるんだが。周りを飾る淵にも、よく見ると小さな字で“怖い”とか“超絶恐怖”とか“(゜Д゜;)”、“(゜∀゜)バカメー”などが模様のように書いてある。⋯⋯中に混じってる舐めた顔文字はなんなんだ。殴り飛ばすそコラ。


「じゃあ俺と日女川、王子と暮野ペアで入ろう」


⋯⋯は?


「ちょっと待て!」

「なんだよ日女川、いきなり怒鳴るなって」

「どうもこうもあるか! なんで俺のペアが斎藤なんだよ!」


カッとなって叫ぶ。やっと頭が冷えてきたのに逆戻りしてしまった。


「そんな嫌がらなくても⋯⋯。あ、そういうこと?」

「分かったなら訂正しろ」

「了解りょーかい。王子、悪いけど俺と組んでくれない? 日女川が暮野と組みたいってさ」

「⋯⋯⋯は、はぁ!?」


なんで、そうなんだよ!!??


「おいコラ斎藤、ふざけたこと言ってんじゃねえよ!」

「梓、そうだったんだ。気づかなくてごめん⋯⋯」

「ち、ちょっと待て蓮、なんか壮大な誤解をしてるだろ」

「悪い日女川。俺ソッチの趣味は無い」

「暮野もちょっと黙れぇぇ!!!」


本当何なんだお前ら! みんなで結託して俺を疲労死でもさせる気か!? 死因“文化祭のストレス”とか哀れすぎて誰も泣けねえよ! すっげえ微妙な空気で葬式する羽目になんぞ、いいのか!?


「じゃあ誰とならいいんだよ」


斎藤が見るからにめんどくさそうな顔をして腕組した。泣く子も黙る悪人面と、頭にはめられたうさ耳がアンマッチすぎて殺意が湧く。金髪ヤンキーがそんなフェミニンな物つけるな。鏡見てこい。そして戻ってくるな。


「普通に俺と蓮、斎藤と暮野でいいだろ」

「いやだ!!」


斎藤が即答で拒否した。


「⋯⋯なんでだ」

「だーかーら! 日女川は分かってないなぁ⋯⋯」


大袈裟に肩をすくめ、やれやれと言わんばかりに頭を振った。「これだからアマチュアは困るんだよ⋯⋯」みたいな顔しているが、お前だってこういうの初心者だろ。同じ彼女いない歴15年の同士じゃねえか。何“恋愛上級者です”みたいな雰囲気出してるんだ。


「お化け屋敷ってもんはさ、“美少女とキャー”が醍醐味であって、男と入っても楽しくないんだよ」

「知るかそんな目的。てかお前今、俺のこと美少女でカウントしたってことだよな? 殺すぞ」

「やだ、日女川くん激しい! そういうプレイは人前でやらないって約束したじゃない!」

「やめろぉぉぉお!!!!」


気、持、ち、悪い!! ”肩を縮ませ上目遣いでうるうる”は美少女にしか許されないんだよ。警察呼ぶぞ。


「てかなんでそんなに王子とがいいわけ?」


ノリに飽きたのか通常モードに戻った斎藤が立ち方を正して、訝しげな目線を送ってきた。同時に蓮と暮野の視線も集まったのを感じる。


「そ、それは⋯⋯」



⋯⋯あれ? なんでだっけ??


急に体温が上昇して喉まで出かかっていた言葉が昇華した。焦って頭をフル回転させるが、考えれば考えるほどパニックに陥る。居心地の悪い沈黙が辺りを取り巻き、突き刺さるような視線が痛い。⋯⋯特に蓮の真っ直ぐな目が。


何か言わなければ⋯⋯


そう思って無理に絞り出された言葉にろくなものは無いことは、分かっていたはずなのに⋯⋯。




「蓮は暗いのが嫌いでそれで夜中トイレに行けなくてお漏らししたり1人で寝れなくなって俺の部屋に侵入してきたり肝試しの最中でパニックになって茂みに突っ込んだり危なっかしいから、俺が付いていないと⋯⋯ダメな⋯⋯⋯⋯わけで⋯⋯⋯⋯」





⋯⋯⋯⋯。


しまった。やらかした。




恐る恐る蓮の方を見ると、予想通り、彼女は無表情だった。


いつもは豊かな感情で彩られるその顔からは一切の色彩が抜け落ちていて、怖いのを通り越して戦慄する。


やばいぞ、かなりやばい⋯⋯⋯⋯。



「蓮⋯⋯「行こう、暮野」


咄嗟に手を伸ばした俺を完全無視し背中を向けてしまった。そのまま暮野の腕を掴むとぐいぐい引っ張ってお化け屋敷の中に入ってしまう。


「ま、まあ、今のはお前が悪い」


呆然と立ち尽くす俺の肩を、斎藤が全霊の憐れみを込めて叩いた。



バニラアイスに醤油の組み合わせはいける人とダメな人がいます。ちなみに私はダメな人でした。


梓「お前味覚狂ってんじゃねえの?」


君にだけは言われたくないです。

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