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騒がしい入学式

あまりに短かったので、次の話とくっつけました。勝手な行為ではありますが、ご理解いただけると嬉しいです。なお話の内容に変化はございませんのでご安心ください。


梓「全くめんどくさいことすんなよな」


すいません⋯⋯。てか梓くん、何持ってるのそれ。


梓「”超絶こってり濃厚コーヒー牛乳 春キャベツフレーバー”。飲むか?」


いらねえよ。


追記:題名を修正しました

キャァァアーーー!!!!!




っ!!?

なんだ!!!??


いきなり廊下で女子たちの甲高い叫びが爆発し、タイミングよく鞄からペットボトルを取り出していた俺は手を滑らせそのまま床に落下させた。


おい女子、びっくりしただろうが! こぼしたらどうするんだよ。今日発売の数量限定ドリンク、”春からぐんぐん伸びる! 飲むタケノコ 桜風味”楽しみにしてたんだぞ!


幸いまだ未開封だったので、俺のタケノコジュースは無事だった。よかった。入学して早々教室にタケノコをぶちまいたりなんかしたら、一年間のあだ名が”タケ子”になってしまう。危ない危ない。


それにしてもすごい声量だったな。学校中に響いてそうだ。あの独特の黄色い悲鳴は、街中で芸能人と遭遇した時や体育大会の応援なんかによく似ている。誰か有名人が来てたりして。


⋯⋯気のせいだろうか、悲鳴の波が近づいているような気がする。嫌な予感がするんだが。


まあ、どうせ杞憂だろう。俺は特技その3”楽観視”を発動させ、ペットボトルのふたを開けて口に運び、



「梓、見つけた」




二重の意味で噴き出した。




れん⋯⋯、お前、なんでこんなところに⋯⋯」


口元を拭いながら教室のドアを睨みつける。


絶世の美少年・・・が扉にもたれかかりながら、きれいな顔に輝くような笑みを浮かべ、にこりと笑った。



「梓に会いたかったから」



八王子蓮はちおうじれん。俺の幼馴染で腐れ縁。性別は女。

ただし見た目は、モデル顔負けの爽やか系美少年。


ようするに、超絶イケメンフェイスを持った女子・・だ。




♦♦♦




蓮。


こいつとは小学校から中学校まですべて同じクラスになるという奇跡の縁があった。まさか高校まで一緒だったとは⋯⋯。何組なんだろう。この高校は1学年8クラスだから、いくらなんでも同じではないと思うが。


ここでふと、さっきの謎が解けた。

なるほどな。さっきの悲鳴の原因はお前か。


そう思うと簡単に納得できた。確かにこいつはイケメンだ。女子らしい細身な体格と身長を抜かせば、このクラスの誰よりもかっこいいと断言できる。現にブレザーとズボンという無難な制服をこうもスタイリッシュに着こなせる奴など⋯⋯



⋯⋯⋯⋯⋯ん?


ブレザーとズボン???




!!??




「蓮、お前っ! ちょっと来い!!」



大きな音を立てて椅子から立ち上がると、蓮の腕を掴んで強引に屋上へと引っ張っていく。女子の誰かが悲鳴を上げ、クラスメイトが騒ぎ出したが、構っている余裕は無かった。



屋上の昇降口のドアを乱暴に開け、蓮を外へ放り出した。少し強く握りすぎたかもしれない。蓮は離された手をさすりながら、戸惑った表情を浮かべた。


「梓? いきなりどうしたの?」

「どうしたの、じゃねえよ! なんでお前男の制服着てるんだよ!?」


蓮は一瞬ぽかんとしていたが、すぐに納得した顔になった。


「業者の人の手違いでね、制服が届かなかったの。だから兄さんのを借りてきたの」


そう言って、悪びれもせずにっこりと笑った。むしろ似合ってるでしょ?と言いたげな顔だ。


「でもお前、男物はやばいだろ⋯」

「そんなにひどい?」

「それはねえよ。むしろすっげえ似合って⋯⋯、ハッ!」


悲しそうな目をして俯うつむく蓮に思わず口を滑らせた。失言に気づいた俺が言い訳しようと焦っている間に、蓮が目の前まで近づいてにこりと笑った。



「なに?」



顔が近づく。視線がかち合う。

端正な顔がすぐそばにあって、急に体温が上昇した。


「な、なんでもねぇよ!!」

「梓、顔赤い」

「うるさい! こっち見んな!」


赤くなった顔を見られたくなくてそっぽを向いた。後ろで蓮が「そっけない」とかなんとか呟いてるのが聞こえたが、意図的に無視する。


屋上を強めの春風が吹きぬける。どこからか飛んできた桜の花びらが、蓮の髪に引っかかった。俺は彼女の顔をあまり見ないよう意識しながら、その花びらを取ってやる。


「ありがとう」


爽やかな笑顔で蓮が笑った。一つ結びにされた艶やかな黒髪が、風に吹かれてさらさらとなびく。凛々しい眉の下、アーモンド形の大きな瞳が俺を映してわずかに潤んだ。筋の通った鼻に形の良い薄い唇。春先の日光を集めて反射する、なめらかなミルク色の肌。

眩しくて、俺は少し目を細めた。


こんな美形が世の中にいるんだな⋯⋯。




「梓?」


俺としたことが、一瞬見とれていたらしい。首をかしげる蓮がおかしそうに笑った。


「梓の間抜け顔。レアだね」

「うるさい、しゃべんな」

「可愛い」

「だからしゃべんなって!」


思わず掴みかかった俺をするりと躱し、そのまま昇降口に向かって走り出す。クールな見た目と反して俺の幼馴染は意外と無邪気なのだ。どうせクラスは違うだろうし、たまにはこういうやり取りも悪くない。後ろからのんびりと追いかける俺を、蓮が振り返った。




「あ、そうそう。私も3組だから。よろしく」


「は?」



⋯⋯⋯は?


⋯⋯⋯⋯⋯今なんつった??




聞き返そうにも蓮はすでに階段を降りてしまって見えない。


えっ!!? ちょっとおい、まじかよ⋯⋯。




そこで俺は蓮を大勢の前から連れ去ったことを今さらながらに思い出し、死にたくなった。


八王子蓮はちおうじれん

ヒロイン。ただしイケメン。口数は少ないが、優しく頼りになる梓の幼馴染。

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