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今回も長いです。そして終始テンションが高いです。梓がfeverしている可能性がありますので消火器をご用意ください。

*プラン3

秘策(?)決行。


放課後の校舎の屋上。蓮は水島に連れてこられ、そのまま放置されていた。遮るものがない屋上には日光が容赦なく照り付けており、立っているだけでも目眩がしてくる。蓮は戸惑った顔で水島たちを見つめた。


「⋯⋯⋯⋯えっと、何?」

「⋯⋯怖くないのか?」

「え?」

「だから屋上、高くて怖いとかはないのか?」

「⋯⋯⋯⋯。うん。ないよ」


⋯⋯⋯⋯お前ら、もしかして秘策ってこれ? 蓮が高所恐怖症なわけないだろ。もしそうなら俺、入学早々大事な幼馴染を苦手な場所に連行した糞野郎になるだろうが。


「水島、もう諦めれば?」


きっともう無理だって。大体蓮の弱点がみんなに広まっても、お前らがいきなりモテだすことなんてありえないんだから。もっと現実を見ろ。鏡も見ろ。


「⋯⋯⋯ふふふ」

「?」

「甘いな、日女川」


何がだ。


「俺たちには最終兵器がある!! 行くぞみんな、プラン4”サンダー作戦”始動だぁ!!」



⋯⋯⋯⋯⋯は?

サンダー⋯⋯⋯⋯、雷??



*プラン4



「ということで日女川、今から雷雨になるよう”天の偉い人”に頼んでくれないか?」

「⋯⋯⋯⋯」

「どうした?」

「ふ、ふざけるなぁーー!!」


最終兵器って雷!? そんなもの都合よく起こるはずねえだろ! 常識的に考えろ常識的に!! お前らバカだと思ってたけど間違いだったわ、大バカ野郎だわ!!!


ハァハァ⋯⋯、疲れた。今日一日ツッコミ続けた気がする。もう体力の限界だ。早く俺を開放してくれ。


「でもさ、昔から美人の巫女さんが祈ったら雨降ったとかいう話あるじゃん? 日女川可愛いから大丈夫だって」


おい待て、それってつまり俺に巫女さんになれって言ってんの? 死にたいの?


「頼むよ日女川、もうこれしか方法がないんだ」

「無理だ。諦めろ」


無理なものは無理だ。俺は水島の懇願をばっさりと拒否した。後ろで水島が「でもこのままじゃ何の収穫もないまま話が終わってしまう。そうなったら”天の偉い人”の元には苦情やクレームのコメントが殺到し、精神的に病んで連載が終わってしまうかもしれない⋯⋯⋯⋯。」とかなんとか呟いている。知るかよ。


往生際が悪いぞ水島。冷静に外を見てみろ。雲一つない青空が広がってるだろ? こんないい天気で雷雨なんて⋯⋯⋯⋯



ポツポツ⋯⋯

ザーーーーーーーーーー



⋯⋯⋯⋯え??

降ってきよった!!?? どういうこと!?

さっきまで満点の青空だった天からは、今はバケツをひっくり返したような大雨が降り注いでいる。窓の外が白く閃き、刹那、雷鳴がとどろいた。


「キャアア!!」


甲高い悲鳴を上げてうずくまったのは、



「まぁた水島かいぃ!!!!!!」


ちょっといいかげんにしろよ水島! なんで男のお前がビビってんだよ、女子たち騒ぐに騒げなくて引いてるじゃねえか! 


「大丈夫だよ水島くん。校舎内にいれば安全だから」

「八王子⋯⋯⋯、うぅっ、ありがとう⋯⋯⋯⋯」


しかも、なんで蓮に慰められてるんだよ!! やる気あんのか!? 蓮も何冷静にさとしてるんだ、そいつお前をめようとしてたんだぞ? 


もういやだ、俺1人ではどうにもできない。斎藤助けてくれ。


「あー、悪ぃ。俺も無理」


この薄情者が。




てかお前らって一体何してたんだっけ?





ーーーーー




「八王子、完敗だ。我々は身を引く」

「え?」

「君は立派な人間だ。まさか敵に助けられるとは思わなかった。これからは双方協力し合い、1年3組の今後の発展のために力を合わせようではないか」

「え? う、うん」


蓮と水島が握手を交わす。いつも完璧な王子スマイルを浮かべている蓮の顔が、若干引きつっているような気がした。


えっとまあ、お疲れ様。バカなことには変わりないけど、あの蓮に真剣勝負を挑んだわけだから、お前ら大したものだよ。見直した。

水島たちが蓮に手を振りながら教室を出て行った。


「蓮、俺たちも帰ろう」

「うん。水島くんって、楽しい人だね」

「まあ、そうだな」


すっげえバカでめんどくさい奴だけどな。嫌いではなくなった。




教室を出て階段を降りていると、いきなり蓮が立ち止まった。


「ごめん、忘れ物した。先行ってて」


そう言うと、たった今降りてきた階段を戻って行った。俺は苦笑しながら、先に靴箱まで行ってそこで彼女を待つことにした。玄関で靴を履き替え、鞄の中の折り畳み傘を用意しながら蓮を待つ。雨は随分と小降りになり、校庭はすっかり薄暗くなっていた。



だが、いつまで経っても蓮が戻ってくる気配がない。


校舎内には完全下校の音楽が流れ始め、外はすでに真っ暗だ。



⋯⋯おかしい、いくら何でも遅すぎる。ただ忘れ物を取りに行くだけで、こんなに時間がかかるわけがない。どうしたんだ⋯⋯⋯⋯?



「おーいそこの1年、早く帰れよ、鍵閉めるぞ?」



⋯⋯⋯⋯⋯鍵?


ま、さ、か⋯⋯⋯⋯



っ!!!!




「おい待て!! どこ行く!?」



先生が後ろで怒鳴っていたが無視した。焦る気持ちを抑えながら階段を猛ダッシュで駆け上がっていく。途中で邪魔になった鞄を放り出し、教室まで走った。



容姿端麗、成績優秀。文武両道で知勇兼備、明朗闊達。人を褒めたたえる四字述語が山ほど思い浮かび、一見苦手が無いように思われがちな蓮だが、もちろん弱点ぐらいある。


「くそっ、やっぱり閉まってやがる!」


教室は当然の如く鍵がかかり、中は真っ暗だ。


だけどもしこの中に蓮がいて、気づかずに施錠され中に取り残されているのだとすれば?


「早く開けねえと⋯⋯」


だって蓮は⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯




「っらぁ!!」

ドカッ




開く気配のないドアを、軽く助走をつけ全力で蹴り飛ばす。派手な音と共に戸が溝から外れ、床に倒れた。暗闇に廊下の明かりが一筋射し込み、


中に蓮がいた。




「あ、ずさ⋯⋯⋯⋯」



蓮は教室の端で膝を抱えて小さくなっていた。顔は真っ青で、焦点の定まらない目には恐怖の色がはっきりと映り、身体は小刻みに震えていた。わなないた唇から絞り出された声が彼女の内情を物語っている。


「蓮、だいじょうぶか」


すぐに駆け寄り、彼女の細い身体を抱きしめた。


蓮は俺が来たことで安心したのか、細い息を吐き出しながら糸が切れたように倒れ込んできた。俺はその華奢な背中に腕を回し、髪に触れた。そのままゆっくりと梳いていく。



そう、蓮は、


暗いところが苦手なのだ。



他に誰かいるなら大丈夫なのだが、1人になると途端にダメになる。小さい頃の記憶が蘇るらしい。何があったのか知りたい気持ちもあるが、傷口を抉ってしまいそうで聞けずにいる。


何度も何度も梳いていると、乱れていた呼吸がだんだんと正常に戻るのを感じた。緊張がほぐれ肩の力が抜けていく。蓮は軽く深呼吸すると、俺にもたれかかっていた身体を起こした。


「ごめん。ありがとう、梓」


そう言って笑った顔には疲労の色が濃く残っている。


全く、こんな時まで無理して笑おうとするなよ。


「用務員さん、気づかなかったのかよ」

「そうみたい。いきなりドアが閉められたと思ったら鍵がかかっちゃって、出ようとしたんだけど足がすくんじゃって⋯⋯」


そう言って蓮は俯いた。その姿は、普段の彼女からは微塵も想像できないほどか弱く頼りなさげに見える。



「全く⋯⋯。次からは気をつけろよ」


いつでも助けに来てやれるわけじゃないからな。



俺の言葉に蓮は一瞬きまり悪そうな表情を浮かべたが、すぐに目元を緩めると、唇に笑みを滲ませた。




「でも、梓は来てくれた」




柔らかそうな唇がなめらかに言葉を紡ぎ、蓮が花のように笑った。その頬が赤く染まって見えたのは、廊下からの光の加減だろうか。



階段から足音がする。ここで俺は教室のドアを破壊したことを思い出した。


⋯⋯やばい、絶対怒られる! 冷や汗が背中を伝い、思わず身震いした。


「大丈夫。私が説明する」


蓮が耳元でささやいて軽くウインクした。そのいたずらっぽい表情に一瞬ドキッとする。さっきまで怯えていた彼女はどこにいったのか、いつもの蓮に戻っていた。



その後蓮の弁解により、俺への処罰は曖昧のまま話はうやむやにされた。




ーーーーー




次の日、蓮の周りには相変わらず女子たちが大量に群がっていた。その中の1人の話声が偶然耳に届く。


「えー? じゃあ王子は料理できるの?」

「どうかな。クッキーぐらいなら作れると思うけど」

「わぁ、いいなあ。食べてみたい!!」

「じゃあ明日持ってくる」



な、んだと⋯⋯⋯⋯!!!???



女子たちの黄色い歓声とは反対に、俺の心臓は氷水にでも浸かったように縮みあがった。



ま、待て待て待て! 蓮の弱点はもう1つあるんだった。あいつ、実は、


天性の料理下手なんだ!!!!


その実力はもはや神といえる。なぜあんな殺人兵器りょうりができあがるのかは、まさに人類の神秘、一口食べれば3日は再起不能に陥る。


やばい、このままでは学校で集団殺人事件が起きてしまう。何とかしないと⋯⋯。

何とかしないと!!



その日ダッシュで家に帰った俺はクッキーを作り、次の日蓮の鞄の中の物と入れ替えておいた。代わりに押収した蓮のクッキーはなぜか真っ青をしており、毒々しい蒸気を放っている。後で知り合いの警察官にでも頼んで回収してもらうことにした。


蓮は料理だけでなく家事全般が苦手です。裁縫やらせると布が赤く染色されます。


逆に梓は料理、洗濯、裁縫、なんでもできます。まさに”よ⋯⋯⋯⋯ゴッ。


梓「おいコラ誰が”嫁系男子”だ」


⋯⋯⋯⋯梓くん、私”よ”しか言ってません



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