表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/40

敵は取ってやるよ

ピーッ!


3年の放ったシュートがまた決まる。

48対55。点差はすぐに埋められ、逆に突き放される一方だった。


「日女川!」

「斎藤か⋯⋯」

「王子、あんなに動いて大丈夫なのかよ」

「いや、ヤバいだろうな⋯⋯」


コートには息を切らした蓮が必死の表情で走り回っている。ガーゼはすでに真っ赤に染まり、吸収しきれなかった赤い飛沫が上半身に次々散る。


どうやら本格的にピンチのようだ。主戦力だった蓮の動きが鈍くなり、戦力がガタ落ちしている。何より彼女の負傷によってチーム全体の士気が下がってしまっていた。それに比べ橋本先輩たちは勢いを増している。


「っ!!」


ピーーーッ


さらに金髪男たちが立て続けに蓮を攻撃する。押しのけられ、ふらついた蓮はそのまま地面に膝をついた。


「おい!! またかよ!?」

「⋯⋯確実に蓮を潰す気だ⋯⋯」



くそっ⋯⋯⋯⋯⋯⋯



心のどこかで迷っていた部分が消え去った。俺は目の前で苦し気に喘ぐ蓮に近づき、


「梓⋯⋯?」


見上げてくる蓮の瞳を見つめ、




そして鳩尾みぞおちに全力で拳を叩き込んだ。



「⋯⋯⋯っ、かはっっ!」




「⋯⋯⋯⋯!!!???」



細い身体が崩れ落ちる。


「おいっ、日女川!何やってんだよ!!」


矢野が叫び、会場が騒然とした。


「⋯⋯⋯あ、梓⋯⋯⋯」

「こうでもしねえとお前、出続けるだろうが」


現に立ってるだけでもふらふらなくせに。


「斎藤、悪いけど蓮を保健室に連れて行ってくれ」

「お、おう。分かった」

「審判、蓮を退場させます。いいですね?」

「あ、ああ」

「あと穂波ほなみ、だっけ? お前腕痛めてるだろ。かばってるのバレバレ。暮野と変われ。暮野、出番だ」

「分かった」


突っ立ったままの1年3組メンバーに次々と声を掛ける。連中は戸惑いながらも指示に従い動き出した。後ろを振り返ると斎藤に肩を貸してもらった蓮が顔を歪めながら首をふるふると振った。



そんな顔すんな。大丈夫だ。



「でも王子の代役は誰が⋯⋯」

「俺がやる」


会場がさらにざわめく。一瞬呆気に取られていた矢野だが、すぐに頷いた。待機のメンバーからゼッケンを借り、それを手渡してくる。


「梓⋯⋯⋯」


消え入りそうな声が後ろから掛けられた。俺は蓮に近づき優しく髪を撫でる。




「大丈夫。かたきは取ってやるよ」




後悔するくらいにな。



ーーーーー


「とりあえず全員ディフェンスにつく奴を決めろ。絶対に離れるな。暮野は背が高いからリングの近くに立ってできるだけ速くボールを奪え。橋本先輩には俺がつく。矢野は行けると思ったらガンガン攻めろ。あと、金パとゲジ眉の先輩には気をつけろ。ファウルしてくる」

「なあ、日女川。本当に俺たちだけで勝てるのか?王子もいないし、残り3分半ぐらいで⋯⋯」


手短な説明を終えると、バスケ部の1人が不安そうな顔で手を挙げた。


「ああ、勝てる」

「でも⋯⋯」

「情けねえな。蓮がいないと何もできないのか?」



その言葉でみんなの目に闘志が戻った。



再開の笛が鳴った。俺のフリースローから試合が再開する。異様な静寂の中、バクバクする心臓の音を聞きながら、ボールを放つ。ボールは吸い込まれるようにリングを通過した。大歓声が沸き上がる。矢野たちがすぐに動き出し、ディフェンスに回った。ボールを受け取った橋本先輩がドリブルで突っ込んでくる。さすがは全国経験者。動きが速い。


でもな、まだまだ蓮の方が速い。



ぴったりとくっついてドリブルの邪魔をする。パスを出そうとするが身体全体を使ってガードする。無理やり投げられたボールは狙ったところへ行かずに、それをバスケ部の1人が奪う。


「山田、行けえ!!」


矢野が叫ぶ。へえ、あいつ山田って言うのか。速いじゃねえかドリブル。すばやく攻めに移行した山田がコートを疾走し、三年が追い付いてくる前にランニングシュートを決めた。


会場が沸く。


まずは2点。


エンドラインから出されたパスを受けた3年が負けじと攻めてくる。ディフェンスを抜かれシュートされそうになるが、矢野が妨害する。一旦下がろうと出されたパスを暮野がはじく。外に出かけたボールを矢野が飛び込んで中に戻した。それを真鍋まなべとか言う奴が拾い俺にパスしてきた。受け取ると同時にシュートする。


2点追加。残り時間は2分。


相手チームは焦ってきたのか動きに冷静さが無くなってきた。無謀なパスが出され、それを真鍋や暮野がカットし矢野や山田がドリブル、俺がシュートする。


また2点。点が並んだ。



「くそおっ!!」


橋本先輩が叫びながら突っ込んでくる。巧みなフェイントで引き離され、矢野が抜かれ、真鍋が抜かれ、暮野が避けられシュートが入る。


点差がまた開く。残り35秒。


「山田!!」


エンドラインから矢野がパスを出し山田がドリブルで走る。だが例の金髪が突進してきて、避けようとした山田は足を引っかけられ転倒した。地面に落ちたボールを橋本先輩が拾いまたドリブルで疾走、シュートした。


が、直前に矢野が妨害、すんでのところでリングを外れたボールを暮野が空中でキャッチした。そして着地と同時に超ロングパスをした。


俺に向かって。



あのなぁ暮野。バスケは野球と違うんだよ。そんなでっかいパス、誰が捕れるんだよ。



ま、捕るけど。




全力で走って空中でボールを掴む。


すばやく構え、スリーポイントシュートを放つのと同時に試合終了の笛が鳴り響いた。



ボールはきれいな弧を描き、まるでスローモーションのようにリングへ吸い込まれ、ネットを通過した。




1年3組 58点

3年6組 57点



会場に割れるような歓声が巻き起こり、ゲームが終了した。


*人物紹介 ~バスケ部~*

※別に覚えなくていいです(笑)


矢野昴やのすばる

一年。茶髪で甘いマスクを持つなかなかのイケメン。仲間思いの良い奴。


山田賢人やまだたかと

一年。バスケ部で1位、2位を争う俊足。性格はまじめ。


真鍋譲まなべゆずる

一年。山田の親友。女好きでチャラく山田とは正反対の性格のため、この二人が仲が良いのはバスケ部7不思議のうちの一つである。


穂波純ほなみじゅん

中学でバスケ部に所属していた。今は男子バレー部に入っている。名前しか出てきてない空気な男。こいつはあまり設定考えてないです。ごめんね。


橋本尚希はしもとなおき

三年。完全なかませ犬。技術はあるがすぐに頭に血が上って冷静な判断ができなくなる。顔は中の上ぐらい。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ