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バスケは初心者なので、いくらかは大目に見てあげてください(__)

本当は第四ピリオドまであるそうですが、計算してみたところで莫大な時間がかかりそうだったので、第二ピリオドまでにしました。

放課後、体育館にボールの跳ねる音が反響する。


蓮が上級生の男子相手に啖呵を切ってから約2週間、ついに明日本番を迎えることになった。クラスの話題は明日のことで持ちきりで、応援の練習や打ち上げの話まで飛び出している。


南カップのクラス出場者は10人。現役バスケ部3人にバスケ経験者2人、サッカー部から2人、テニス部から1人。あと野球部の暮野に蓮だ。


予選は前半5分、後半5分に分けられていて、その間選手交代ができる。トーナメントの組み合わせはクジで決め、その中で委員長は最高の場所を引き当ててきた。他のクラスよりも少ない試合数で決勝まで行けるのである。(通常のクラスは3つの予選を勝ち抜いて、準決勝、決勝へと続くのだが、我らが1年3組は3回の予選を勝てば決勝に出られるのだ。)



まあ要するに、頑張れば優勝も夢ではないってこと。


蓮が喧嘩した相手のクラスも分かった。3年6組だ。自信満々に言ってた通り、バスケ部のレギュラーがガッツリ集まっているようだ。始まる前から優勝は3年6組で決定だという雰囲気に包まれている。


でもそんなのやってみないと分からないだろ。

うちのクラスだってバスケ経験者が結構いるし、暮野もさすがはスポーツ推薦入学者。すぐにコツを掴んでいた。


それに蓮がいる。


中学3年の時に都内のバスケの名門高から、山ほど推薦状が届いていた天才だ。女子たちは蓮の活躍姿がよっぽど楽しみなのか、前日なのにキャーキャー騒ぎまくっている。


「日女川ー」


斎藤が手を振りながら俺に向かって歩いてきた。手には紙袋を持っている。


「どうした斎藤」

「なんかさ、風の噂で聞いたんだけど、王子が3年6組に宣戦布告したってまじ?」

「ああ。まじだよ」

「は!? 嘘だろ!!??」

「本当」

「⋯⋯⋯じゃあ賭けの話は⋯⋯」

「それも本当」

「⋯⋯⋯。ヤバいぞこりゃ。梓、今日のうちに王子を連れて地球の裏側まで逃げろ」


無茶言うなよ。ちなみに日本の裏側は海だからな。ブラジルじゃないぞ。


「いや冗談じゃないって。本気でヤバいぞ? 3年6組つったら橋本先輩のクラスだ」

「誰それ」

「⋯⋯お前、ちょっとは他人に興味持てよな⋯⋯」

「いいから教えろ」


斎藤の説明によると、その橋本先輩って言うのはバスケ部のキャプテンで、かつ中学の時に全国大会に出場した経験があるらしい。



「ガチじゃねえか⋯」


ここで俺は初めて、本気で危機感を持ち始めた。

なんだかんだ言って超人的な蓮がいる限り、負けることは無いだろうとたかを括っていた。

蓮は天才と言っても女子だ。いくらなんでも現役男子バスケ部のエースとやりあうのはきついだろう。


「なあ、その約束ってなんとかチャラにできないわけ?」

「無理に決まってんだろ。蓮だぞ?」

「だよな⋯⋯」


あいつなら負けた場合潔く相手の要求を飲むに違いない。あいつら、勝ったらなんて言ってたっけ⋯⋯。確か蓮の裸の写真がどうたらこうたら⋯⋯⋯⋯⋯。


「うん。殺そう」

「は?」


いいやごめん斎藤、こっちの話だ。何があろうと蓮の裸を連中の目に晒すわけにはいかない。今日のうちに奴らの元に奇襲をかけて、明日の試合に出れなくしてやろう。上手くいけば俺の退学ぐらいで話が済⋯⋯。


「梓、暴力はダメ」


完全にる気モードだった俺の思考を誰かが遮った。振り返ると未満そうな顔をした蓮がバスケットボールを手に立っていた。


「やあ蓮。えっと、暴力って何の話?」


とりあえずとぼけてみる。


「梓の考えてることは分かる」


⋯⋯すいませんでした蓮さま。そんな怖い顔をしないでください、美形が怒ると迫力が違うんです。


「明日は正々堂々と勝つ。それで梓に対して謝ってもらう」

「でもさ蓮、相手はバスケの全国出場者だぜ?」

「それが何。全国なら私も出た」


蓮が首をかしげる。あのさ、全国大会をあたかも”町内にこにこ体育大会”みたいな軽いノリで言わないで欲しいんだけど。何なのこいつ、もうやだ。


「それに、相手が強いほど燃えるから⋯⋯」

「え⋯⋯?」


そう言って、ボールをポイッと投げてよこす。俺は反射的にキャッチし、そのまま蓮に投げ返した。「うん、良い反応」とかなんとか呟いてるのが聞こえる。少し、いやかなりビビったが、その反面意外と勘が鈍ってないことに驚いた。


「じゃあね、また明日」


暮野の呼ぶ声に手を振って、蓮は練習へ戻って行った。


「大丈夫かよ、王子」

「平気だ。あいつは勝つ」

「日女川⋯⋯?」

「ったく、何を心配してたんだっけな」


隣で訝しむ斎藤に笑って答える。


「あいつの本気は、最強だろ?」


蓮に勝てない奴なんていない。そんなこと俺が一番よく知ってるじゃねえか。

それに、あんなに楽しそうな顔をしてる蓮、久しぶりに見たような気がする。



ーーーーー


その日の夜、俺の携帯に1通のメールが届いた。


『梓、明日の応援は任せます。 蓮』


はっ、何当たり前のこと言ってんだよ。


俺は携帯を閉じ、勝ったらなんて言って労ってやろうかなどと考えながら、布団を深くかぶった。


梓 「そういや斎藤、お前その紙袋なんだ」

斎藤「これはな、クラスの男子のやる気を急上昇させるための必殺チートアイテムだ」

梓 「なんだよそれ、見せろよ」

斎藤「まだ無理。明日嫌でも見せてやるから」

梓 「(また何か変なものか⋯⋯?)」

斎藤「ふっふっふ⋯⋯」

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