神様は時にとんでもない間違いを犯すようだ
初投稿です。勝手が分からず色々戸惑っておりますが、よろしくお願いいたします。
――――入学式
私立南高校、1年3組教室
「今年の新入生レベル高いよな?」
「分かるわ」
「おい見ろよ、あの子。すっげえ可愛い」
「どこどこ!?」
「うわ⋯⋯、まじかよ」
「でもあれ、男だよな?」
⋯⋯周囲の視線が集まっているのを感じる。不躾な視線に苛立ちを募らせながら窓の外に目をやった。春先の柔らかい日差しが、まだ冷たい教室の空気をじんわりと暖めていく。
俺は日女川梓。
男なのか女なのかよく分からない名前をしているが、れっきとした男だ。身長170センチ。趣味は読書、得意科目は数学。小学生の頃から空手を習っている。
最近の悩み⋯⋯というか、小さい頃からの悩みだが、俺はよく、女に間違えられる。
俺は生まれつき女顔だ。これは自分でも十分理解している。少しくせのある茶髪に細い眉、桃色の唇。日に当たるとすぐに赤くなる白い肌。ぱっちりとした二重の瞳と長いまつ毛。体つきも男にしてはかなり華奢で、食べても鍛えても全く太くならない。
は? うらやましい?
冗談じゃない!! 俺は本気で困ってるんだ!
この容姿のおかげで俺がどれだけ苦労してきたことか⋯⋯。
まず、15年間で一度も彼女ができたことがない。告白してくるのは野郎だけ。外を歩けば男からナンパされ、暗がりに連れ込まれたことも多数。性別を言っても大体の奴が「それでもいいよ!!」とか叫びながら襲いかかってくる。(幸い俺は空手をやっていたので大事には至らなかったが) 服を買いに行けばレディースブランドのモデルに勧誘され、写真を撮られた経験もある。極めつけは男子トイレに入るたびに悲鳴を上げられることだ。
年をとるにつれて分かった。神様は、時にとんでもない間違いを犯すのだと。
「なあ、あいつ今年の新入生の中で一番可愛くない?」
「俺告っちゃおうかな」
「え? 男なのに?」
もはや呪いである。
小さい頃ならまだ許せた。しかし大きくなると屈辱に他ならない。この状態を打破するため数々の方策を打ち立ててきたが、全然効果は出なかった。
ならせめて高校からは!と気合を入れてきたが、どんどん増える廊下の人だかり(大半男)といい、聞こえてくる会話(俺のメールアドレスがどうとか)といい、あまり期待はできなさそうだ。
入学早々だが、家に帰りたい。
日女川梓
本作の主人公です。口が悪く、人付き合いが苦手なコミュ障(ただし本人は否定)男子高校生。
友達少ないので仲良くしてやってください。