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PLATONIC LOVE  作者: たまご
3/17

-3-

郁海(いくみ)の行きつけのお店とは、茜の実家であった。

料亭を営んでいるらしい。



「あら、武田さん、いらっしゃい。

…まあ、あの木村選手まで!

さあさあどうぞ!

狭い料亭ですがくつろいでください。」




亮佑(りょうすけ)と郁海は球界きっての人気者である。


店じまいの時間ではなかったら、きっと店はパニック状態だっただろう。






温かい料理を食べながら三人は会話をする。


「さっき亮佑がスタンドに落ちたときはマジでびっくりしたよ。

しかも落ちたのが茜の所なんてな。」


「取材ではじめてあの席に行ったの。

体感してみよう!っていう企画だったんだけど…ホントにびっくりしちゃった。

もう一回取材しなきゃいけないみたい。」



亮佑は恥ずかしくなった。


「す…すみません…」


すると郁海が鋭い質問をして来た。


「そういえば、何でショートのお前がボール追ったんだ?

普通あれはサードかレフトに任せるだろ?」


言葉が詰まった。

宮本さんの姿を近くで見たかった、なんて口が裂けても言えない。



「ここのファンにも、木村さんがこんなに活躍してるんだぞ、って見せたかったんですよね。」



茜がフォローしてくれた。


優しい人だ。



亮佑はますます茜に惹かれていった。


一目惚れ、初めてだ。







楽しい時間はあっという間に過ぎていくもので、もうお開きになってしまった。


「俺もう帰らないと、先輩にシバかれるかも。」


郁海が笑いながら言った。

郁海はまだ寮生活をしているらしい。


「気をつけてね。」



そう言って茜は郁海を見送った。


その姿を見て亮佑は胸が痛んだ。



「木村さんは、お時間大丈夫なんですか?」


亮佑ははっとした。

ホテルに戻らないといけない時間だ。


「あ!やっべ!

じ、じゃあ自分はこれで失礼します!」



亮佑は慌てて支度をした。

気付けば茜の姿がない。


ちょっと寂しかった。



すると茜が小走りでやって来た。

何かを抱えている。



「はい、これ。

さっき両親が料理を作ってる間に作ってみたんです。

明日の朝ごはんになればって…お口に合うかわかりませんが…。」


小さな包み。

開けてみようとしたが、茜に止められた。


「恥ずかしいので…明日の朝、開けてください。」



非常に嬉しかった。

飛び上がるほど嬉しかった。


「あ、あの!

良かったらアドレス教えてください!

感想送るんで…。」


茜は笑顔で携帯を差し出した。

真っ白な携帯は茜の清楚さを表しているようだった。



「感想なんて恥ずかしいですが…美味しくなかったら遠慮なく言ってくださいね。

遠慮なんていりませんから…。」


「…ありがとうございます。

食べ終わり次第すぐに送ります!」



そう言って携帯を返した。

茜は笑っていた。


「お気を付けて。」


「はい。

今日はありがとうございました。」






そう言って亮佑は料亭を後にした。


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