表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PLATONIC LOVE  作者: たまご
11/17

-11-

「あのね・・・」


茜はためらいがちに言ったが、決心したのだろうか、亮祐(りょうすけ)を見つめて話し始めた。




「私、子供がいるの」



「・・・え?」


亮祐は絶句した。



茜は実はバツイチ子持ちなのか。

いやいや、シングルマザーか。

どっちにしたって嫌な話だ。



「・・・バツイチとか失礼な事考えてるんじゃないの?」



図星だ。変な汗をかいてきた。




茜は悲しそうに笑って言った。


「正確に言えば、子供がいた、かな。

私ね、妊娠してたの。

きっと・・・ううん、間違いなく、あなたの子供。」


亮祐は言葉を失った。


「・・・!もしかして、子供がいたって事は・・・!」



茜はまだ悲しそうに微笑んでいる。


「そうよ。流産しちゃったの。

さっきお医者さんに言われたわ。

『あなたは無事でしたが、お腹のお子さんは残念ながらダメでした』って。」




茜の目には涙が溜まっていた。


「どうして私じゃなかったのかな。

この子には何の罪もなかったのに・・・。


人の気持ちなんか考えないで、信用もしないで、勝手に人を試したりする私が・・・どうして・・・!

どうして私じゃなくてこの子が・・・!」


茜は涙をこぼしながら言った。


「あの時、何が起こってるのかわからなかった。

でも、どうしてこうなったのかはわかったの。

あそこから落ちる前にね、めまいがしたのよ。

・・・多分、貧血によるものだと思う・・・。

気付いたらこうなってた。」



亮祐はかける言葉もなく、ただ茜を抱きしめた。

ただただ、茜を強く抱きしめた。



「私なんか・・・生きてたって・・・」


止め処なく流れてくる茜の涙を亮祐は拭い、そして口をふさいだ。




いつ以来だろうか。

こうやって茜とキスをしたのは。



ただ前と違うのは、長く、悲しいキスだった事だ。







2人が離れた後、亮祐は再び茜を強く抱きしめた。


「自分ばっかり責めるな・・・。

俺にも責任がある。

だから、自分ばっかり責めないでくれ・・・。

俺たちの子供が幸せになれなかった分、俺がお前を幸せにするから。

だからもう、悲しまないでくれ・・・。」



茜は亮祐にしがみついて泣いた。




きっとこれからの人生で、一生忘れる事のできない日になっただろう。





人の生とは、弱く、儚い物だ。

だからそこ、幸せにならなくてはいけない。

自分の大切な人を、幸せにしなくてはいけないのだ。







亮祐は誓った。


二度と茜を悲しませる事はしない。

自分の子供にも、自分より先に死なせたりなんかしない。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ