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茜は病室で目を覚ました後、医者にあることを耳打ちされた。
茜は目を見開いたが、その後なす術もなく俯いた。
すると、フェニックスのメンバーがお見舞いに来てくれた。
「茜ちゃん大丈夫?」
「宮本さんがフェンスから落ちたって聞いたからさ・・・ビックリしたよ。
でも無事でよかった。」
茜は笑顔で答える。
「心配かけてすみません。ありがとうございます。
もう大丈夫ですよ。」
そこに郁海の姿はなかった。
するとおもむろに選手会長の村田が言った。
「郁海は後で来るって。」
今度は俯いたまま答えた。
「そうですか・・・」
そこにホエールズの選手たちもやってきた。
「お加減どうで・・・」
落下した女性がフェニックスのメンバーに囲まれているのに驚いたようだ。
一通り説明が終わった後、全員帰って行った。
ホエールズのメンバーの中に亮祐の姿もなかった。
茜は泣き出しそうになった。
それからしばらくして、郁海が亮祐とともにやって来た。
「茜、お前大丈夫か?」
凄く心配そうに郁海が尋ねてきた。
今まで見た事ない郁海の様子に、茜はつい吹き出してしまった。
「ごめ・・・だって可笑しいんだもの・・・
もう大丈夫よ。」
亮祐はほっとしたと同時に胸が痛んだ。
初めて会った時と同じだ。
2人が恋人に見える。
「じゃあ、退院できそうになったら言えよ?
俺が迎えに来るから。」
「ん、ありがと・・・」
郁海はさりげなく亮祐を睨みつけた。
それに気付いた亮祐は居心地が凄く悪く感じた。
「・・・茜が元気そうで良かったよ。
俺はもう帰るから。無理すんなよ。」
そう言って郁海が帰った。
別れて以来の二人っきりだった。
2人の間に沈黙が流れる。
しばらく経った後、最初に口を開けたのは茜だった。