憶測
少し短いけど堪忍してや〜。
・1967/8/7(月)
・ベトナム民主共和国連邦ジャングル奥地
・am 10:00
・岩倉 智久 少佐
戦場で戦う兵士には、三つのタイプがおる。一つは優等生タイプ、基礎がしっかりしていてとっさのことにも対応できるが堅物で応用のきかない『信念を持った目』をしているやつら。二つ目は弱腰タイプ、弱者だからこその危機察知や、警戒能力に優れているがとっさの判断で動けなくなる『弱者の目』をしているやつら。そして最後が戦士タイプ、幾度もの戦場と絶望をくぐり抜けて今を生きている『狩人の目』をしているやつら・・・。
「って、聞いてるん?」
あいつらと別れ自分の席に戻ったわいは、前の席で
一人黙々と飯を食べ続けているやつに声をかける。
「ええ、聞いていますよ。あなたがこの話を私にするのは今回で4回目ですが毎回しっかり聞いております。」
タバコに火をつけるために下を向いていたわいやがそれを諦め,ネチネチ嫌味を言ってくる目の前の少女に向かって批難の目を向けてみる。体系は細身で背も高くしかし、出るところは出ている理想体型、髪は黒で顔も整っていて場所が場所ならアイドルにもなれたんやないか?と思えるほどパーフェクトな体をしちょる。ま、とある理由でこの子に話しかける野郎は皆無やがな。
「何ですかその目は、私に何か落ち度でも?」
「いや、なんでもあらへんよ」
「それより例の新人たちはどうだったんですか?見てきたんですよね?」
「なんや、やっぱ狙撃女王でも気になるんかいな?」
「まあ、一様は・・・あとその名前で呼ばないでください。」
そう言って彼女は机の上に置いてあったトカレフの銃口をこちらに向けてくる。
「なんや、ちょっとしたお遊びやんけ、堪忍してや。」
「・・・今回だけは見逃してあげます。」
そうゆうて彼女は銃口を下ろし食事を続ける。ちなみにここではこんな感じで上官の銃を向けるのは日常茶飯事や。部下に殺されるような無能な指揮官は不要ってのがここのセオリーらしいのお。まっ、敵さんの方はもっと酷いらしいしの 。寝てる最中に部下から手榴弾投げ込まれるなんてどんなギャグやねん。
「で、結局どうなんですか新人ってのは?」
「ん?ああ、二人ともなかなか顔は整ってたで?」
「いやそういうことではなく、使えるか使えないかの話です。」
「なんやそっちかいな。ほんま男に興味ないやっちゃな。」
「いいから早くしてください。」
「あいよ、まあ一人目の金髪の子は根っからの優等生タイプやったな。」
「優等生タイプ・・・あなたがよく言う目の話ですか。」
「そっ、真面目で周りに会わせつつも自分の意思を持っている、しかし、上官の命令には絶対に従う訓練学校で学んだ新兵の代表例みたいなもんやな。」
これが、わいがあの子に感じた第一印象や。基礎が固められており意志も強い、なおかつ命令には絶対厳守、ここに配属されなかったらお上の方々にとってはさぞかし良い駒になったやろうな。
「毎回思うのですが、なぜあなたは目を見ただけなのにそんなにも革新をもってその人の事を言い切れるのですか?」
「なんや、信じてないんか?」
「そういう訳ではありません。あなたのその目に関しては少しばかり信用はしています。」
「そうかい、そりゃうれしいの~。」
「・・・はぁ、まあ言う気はないって事だけはわかりました。もう一人の方はどうなんですか?」
「もう一人・・まあ銀髪の野郎のことなんやが、あいつはヤバイで。」
「やばい・・・ですか?」
「ああ、あいつは完全に戦士タイプや。それもいくつもの修羅場をくぐってきた歴戦のな。」
「ですが上からは新兵と聞かされていますが?」
「いやいやそれは絶対ない、あれは何人も殺しとる狩る側の人間の目やった。」
あんな目をした新兵だらけやったらこの戦争はとっくに終わっとるちゅうに。
「しかし、何故そんなのが新兵としてここに?」
彼女の疑問はもっともや、あんなバケモンみたいな奴上が手放すはずがない。普通ならそれなりの階級が与えられてるはずや。
「さあわからん、ここには彼奴と同じ目をした奴がぎょうさんおるがいかせん年が若すぎる。元少年兵か元特殊部隊かもしれんし、もしかすると・・・。」
わいはここであえて答えを言わんかった。それに気づいたのか彼女は少し考えこみ、ある程度答えが導けたのかまさかという感じでその答えを口にする。
「・・・CIA?」
「さあの、これは憶測にすぎんからなんとも言えへんけど、もしもの時は後ろから撃つ可能性だけは頭に入れとき」
そう、これは憶測の話や、もしかしたらわいの読み間違えかもしれん。しかし、もしこれが本当だった場合わいはあいつを殺さなけりゃならん。それにもしかすると・・・・いやそれはあらへんな。こりゃ少し調べてみる必要があるわい。