俺の幼馴染みは嫌われる変人だが俺は嫌いじゃない
嫌われる変人って以外と身近にいる。
俺の場合、幼馴染みがそれに当てはまる。
言動、素行、その他諸々で『頭がおかしい人』とみんな思っており、理解どころか近づこうともしない。
でも、俺は知っている。
知っていればみんな彼女に同情の眼差しを向けることを知っている。
全部全部、理不尽な現実を受け入れた結果こうなってしまったことを知っている。
「おい、どうした」
「どうしたも何もないよー?私と喋ってると同類だと思われるよー」
今更だ。
クラスのみんな、俺をお前の子守役だと思ってる。
「いつもよりヘラヘラしてるぞ」
「えー?そお?」
「親に何か言われたんだな」
「うん!そお!」
……また親か。と、いうか家族がらみか。
相変わらず修羅場な家族だ。
「弟も受験するんだけど、私も受験でしょ?塾に行ってるのに成績上がらないから弟に行かせた方が有意義なんだってー」
あははー、じゃねぇよ……。
確かにお前の弟はお母さん大好きで小6なのにちゅーをしてるって聞くけどな、中学は義務教育だから落ちてもあとがあるだろう!
「でもねー、私のせいで弟が脚に怪我したらしいから中学で虐められるかもーってママがいうねよねー」
「あれは弟が親父さんに怒られて自分から飛び降りたんだろ」
「妹は私が家にいるから恥ずかしくて友達呼べないんだってー」
妹も弟もわたしより出来がいいのよねー。…………お前な。
「金食い虫で生きてて楽しいことなんかないのにお前ってなんで生きてるのってママに言われたからそろそろ死ぬ時期かなって思うの」
笑顔で言うな、そんなこと。
「お前が死んだら、俺、泣くぞ」
「えー?なんでなんで?」
「そりゃ、こうやって話聞いてんのに俺じゃあお前の生きる理由になれなかったのか、って……」
「え?なにそれかっこいいね!キミが私の生きる理由?」
……何言ってんだろ、俺。
結構恥ずかしいこと言ったよな。
「あのね、私にとってキミは私が友達だと思い込んでいたい人なの」
「はあ?友達じゃないのか」
「確かに君は幼馴染みだけどね。私に好意を持たれて嬉しい人なんていないでしょう?まして、いくら恋人ができないと嘆いている人が私に恋されてもご遠慮しますって思うと思うの!」
「………は、はぁ?」
「だからね、私の思いはどんな人に対しても一方通行なの!キミも幼馴染みだから私のお守りを押し付けられてるんでしょう?」
…………いや、えっと……確かに押し付けられてはいるが……。
「だからね、私はあなたの幼馴染みで荷物だけど友達ではないんだよー」
……頼むから急に支離滅裂な哲学を言い出すのはやめてくれ。
俺の脳は運動に傾いているんだから。