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序章
「……さん?幸路さん?」
目を開ける。私を見下ろす瞳に、白衣を身につけ荒い髪の決して綺麗とは言えない私が写っていた。
「東風夜か……」
そう言うと彼女はにこりと微笑み、私の額についた生ぬるいタオルを手に取った。
「幸路さん、急に倒れちゃって。心配したんですよ?」
「すまないねえ」
額に冷えたタオルが載せられる。
「それにしても、どうされたのですか?」
「………」
東風夜の単刀直入な質問に、しばらく黙り込んだ。
と一つ、呟いてみる。
「ねえ東風夜?」
「はい?」
「どうして、人々の間で争いが起こるのだろうね」
「…争い、ですか」
東風夜は困惑の表情を浮かべる。
「それは解決ならない疑問だよね」
「………」
私は窓へ視線を向け、外の木漏れ日を見つめる。
「ねえ東風夜」
木漏れ日は___
「はい?」
光を木で隠す。
当然___
「人を差別したら、この世はどうなるのかな……」
私は、照らされない。