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SIDE; B

ロザヴィー姫が、白の王子ヴァイスを選んだ後から結婚式までの、どこかのお話。


BはヴァイスのB(いや本当はWだけれども)。

 「なんて美しい髪でしょう」

 ヴァイスは、ロザヴィーの金の巻き毛を一筋掬い、自身の指に巻きつけた。

 「なんてつぶらな瞳でしょう」

 ヴァイスの唇が迫り、ロザヴィーは慌てて瞼をつむった。押し当てられる温度は、彼女の鼓動を一際早くする。

 「なんて柔らかな頬でしょう」

 滑らかに頬擦りされる。ヴァイスの張りのある皮膚には、剛毛の一本もない。産毛の柔らかな感触。それなのに、女性であるロザヴィーとはやはり異なる性なのだと、思い知らされる。

 「なんて可愛らしい唇でしょう」

 ヴァイスの舌が、ロザヴィーの上唇、下唇と、順番になぞる。その形を覚え込もうというように。

 「ああ、食べてしまいたい……」

 甘い吐息と共に零れ落ちる言葉。



 「む、む、無理です!ヴァイス様!!」

 半泣きでロザヴィーは両手でバツ印を作った。

 「やっぱり無理!もう出来ません~」


 クスクスと笑いながら、ヴァイスはロザヴィーに半ば覆いかぶさっていた半身を起こした。癖のない白金の髪が、動きにつれてさらりと靡く。

 愛しい姫は、耳まで真っ赤にして、ぐったりと消耗しているようだった。


 「困りましたね。こんなに早くを上げてしまうとは」

 「だ、だ、だって…」

 潤んだ碧眼も可愛い。自覚しているのだろうか。泣き顔が逆にヴァイスの嗜虐心を誘っているのだという事を。


 「ヴァイス様が、『赤い頭巾の女の子』ごっこをすればお願いを聞いて下さるっていうから!」

 「そうですよ。まだ、全然序盤じゃありませんか。これではお願いを聞くわけにはいきませんね」

 「だって、お、おかしいです!私が知ってるお話には、あんな色っぽいシーンは出てきませんから!!大体なんでヴァイス様が赤い頭巾の女の子役で、私が狼役なんですか!?」

 「その方が面白そうだったからですけど?」

 悪びれもせず、しれっと応えるヴァイスに、ロザヴィーは反論する気概を失ったようだった。


 「……もう、いいです……」

 うなだれて去って行こうとするロザヴィーの腕を、ヴァイスはがっちり捕まえた。


 「どちらに行かれるのです?ごっこを最後まで出来なかったのですから、お仕置きですよ?」

 当然でしょう、と天使の笑顔で微笑むヴァイス。

 反転させられたロザヴィーは、ヴァイスの腕の中に抱き込まれた。お仕置きという言葉とは裏腹に、優しい抱擁。思わずのように、ロザヴィーも抱きつき返してくる。

 しばし、恋人たちの甘いひと時。


 「ところで、姫のお願いとは、何だったのですか?」

 「………その………」

 言いよどむロザヴィー。一度は引いた顔の熱が、またぶり返してきているようだ。

 「ヴァイス様が最近お忙しくて、淋しかったものですから……か、構ってください、という、お願いでした……」


 「―――やはり、姫には敵いませんね……」


 嘆息して、ヴァイスはロザヴィーの瞳を覗きこむ。駆け引きなど何もない、純粋な瞳。

 すっかり毒気が抜かれてしまった。

 

 まあ当分これはこれでいいか、と思ってしまうヴァイスなのだった。  

読んで下さり、有難う御座いました。


良かったら、本編の方もご覧下さいませ。

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