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第7話〜第16騎士隊創設~

誤字・脱字の他台詞を少し変えました。

描写を修正しました。


タイトルを変更しました。

 

大聖堂騎士団保安部side


エレノア・アリアドネside


ここは、大聖堂騎士団保安部のアリアドネ保安隊のオフィスや、事務署員は6人くらいで事務に明け暮れている、この前の獣人狩り事件から、六ヶ月が過ぎた、ボスのマカロフは、うちが締め上げたら、あっさりと白状した、捕まえていた半獣人の子供の違法な売買に、ラボとの取引の事とかも、ただ、ラボは、今回の件は一切無関係と正式に発表してるが、うちが思うに、ラボは黒やな? 何故なら、アジトに在ったパソコンのデータ調べたら改竄されてたからや、あんな連中に、戦闘能力の高いキメラなんて造る技術は、マカロフ一味には、あらへんしな?

また、ラボへの追求が出来るかと思ったら、マカロフ一味に、キメラとか提供していた、人物が原因不明・・・・・・・の事故死をしていたので、この事件は、その男の仕業にされて、うちらも、これ以上の追求が出来なくなった、ま、連中の十八番のトカゲの尻尾切やな? 連中もアジな真似しおるで。


「まあ、それはそうと、一応の事件は解決したし、残りの獣人狩り組織は根こそぎ潰した、これで一件落着やな?」


少し、後味の苦い事件やったが、良い事もあった、それは、ガレスの事なんやけれどやけど、うちらの司法取引を断って、今は刑務所に入って模範囚の生活をしているそうや、何でも《けじめ》付けたいんやて…… 律儀な奴やで、ガレスは、彼は誘拐に直接、加担しとらんけど、連中の傭兵とか色々していたんで、約15年の刑に架せられるはずや。

この前、彼の面会に行った事をうちは思い出してた、初めて、面会しにいった時は、正直、彼の容姿の変わりぷっりに驚いた、なんせ、以前、少しあった無精髭にオールバックの髪型は、すっかり、無くなっていた、髪形は、オールバックから邪魔にならない程度に前髪を揃えて、無精髭は丁寧にそっていたので、再会した時は、ほとんど別人かと思った、以前の彼はそれくらい、疲れていたということやろう、そして、今日が二回目の面会でも、あった。


『なぁ、うちらの所に来いへん? ガレス、アンタ、レスター局長のお誘い丁寧に断ったらしいね?』


『ああ、その事か、今は、此処(王立刑務所)で、色々考える時間を貰えたからな、その事は、きちんと刑期を終えたらな』


『そっかぁ、じゃあ待たせて貰うで、うちこう見えて、けっこう気が長いんよ?』


あま、ガレス、アンタが律儀に、お勤め果たしたいんなら別に止めへんよ、ただ出て来たらその分思いっ切り働いて貰うからな!

そう、考えていたら、自然と顔がにやけてきたしもたんで、ガレスが怪訝な表情で、こちらを見ていた。


『お前、何か企んでるのか? さっきから、顔がにやけているぞ?』


うわっ、技だけやのうて感も鋭い、とりあえず、この件は、一旦保留やね、レスター局長も、騎士団に来る気のない人間を勧誘しても

それは、ただの無駄な時間の浪費にしかならないって、いてたし。


『別に、今は、まだ、なにも企んでへんよ、それより、ガレス、アンタに聞きたい事が有るんやけど?』


『ふ、まあいい、エレノア、お前に悪意のある、企みは出来そうにないだろうしな、それより、何だ、聞きたい事て?』


うわぁ、ストレートに、うちが、ある種の悪巧みが苦手な事を平気な顔でいいおった、そして、面倒臭げに、本題に答えて来る。


『何で、あの時、覚えた事が、二つなん? うちはそれが、ちょこっと、気になっとったんよ、教えてくれへん?』


『ああ、あれか、そうだな、一つの武を極めても面白く無いから、いっそ、二つにしただけだ。 これなら、一つが、戦闘で駄目になっても、残りの片方で戦えるからな?』


『あははっ、せやな、やっぱり、アンタ、面白いな♪ それじゃ帰えるわな、うち』


そう、言って席を立ち踵を返して、刑務所を後にした、それから、しばらくして、イリアさん達が無事に騎士候補になったのを聞いて、うちは安心していた。

彼女達は強くなる、だから、正式に騎士になったら、こっちに来てもらってもいいしね?

ふと、ガレスとのやり取りを思い出していた、うちは、気付くと、アルトが書類を持って来た、何やえらい険しい顔して、一体何があったんや?


「連隊長」


「何や、えらい慌てて、どないしたん?」


「ハッ、実は、イリアさんの事で…… ちょっと……」


アルトは何時、暇な時はエレノアさんて、うちの事を読んでる、ただ連隊長の公称はとんでもなく大真面目の時だけや

でも、今日は、やけに歯切れが悪い、よほど言いにくい事なんやろか?


「アルッち、イリア騎士候補生が、どないしたん? まさか、イリア騎士候補生に、何かのトラブルでもあったんか?」


今、イリア・キサラギは、騎士候補生として、この六ヶ月訓練の真最中のはずや、この期間中に何かあったんか?

とにかく、情報があるなら、教えて欲しい、アルトは、やや、一呼吸置いてから、うちに彼が掴んだ情報を教えてくれた。


「いえ、彼女と…… 言うより、彼女のご両親ですね? さっき、10年前の空中貨客船【アトル・カルゼ】号墜落事件の犠牲者の中に彼女のご両親が居たのを確認しました。

ただ、どうも、かなりレベルの高いプロテクトが掛かっていて、僕のアクセス権限では、閲覧が不可能です」


アトル・カルゼ号? あの原因不明の爆発でフォルド樹海に沈んだ船か? そういえば、あの事件は公式にはエンジントラブルで墜落と表向きには公式発表されて

ただの事故扱いで終わっていたはずやったな?

まあ、うちも、あの一件は、なんか、上手くは言えんけれど、うっすらやとけれど、何か不気味なものが在ると子供ん時そう感じたわ。


「それで、何か解ったんか?」


アルトは横に首を振り、残念そうに。


「いいえ…… 特には、これ以上は、事故の詳細は解りませんでした」


と、だけ答えた、なんか、隠してるな? 上は、と、言っても、今のうちには、閲覧権限が無いので

これ以上に、この件に、深入りすんのは、危険やと結論つけるとこやけれど

此処は、昔取った狐塚を使わせてもらおか。


「ごくろうさん、まあ、向こうで、お茶でも飲んできて」


「分かりました、では、僕はこれで失礼いたします」


アルッちが、そい言って、自分のディスクに戻るのを見計らって、うちは、こっそり、パソコンのキーを叩き、事件の事を検索する

<アトル・カルゼ号墜落事件>と…… ヒットした、どれどれ…… そこには簡潔にこうあった。


<<以後の閲覧は最高機密の為パスワードを入力して下さい>>


うわ、なんよ、このパスワード? ただの墜落事件やのに、かなりのレベルの高いセキュリティプロテクトが掛けられていた。

これは、ただの墜落とか、そうゆう類のことや無い見たいやね……。

待てよ、イリアさんのお母さんは、確か軍の研究部やったな? 人物検索…… メアリー・ホートフェルトと入力する。


<<魔人兵士製造プロジェクト…… 以後国防軍司令部権限で閲覧を禁ず>>


国防軍? 何で? 民間船の事故に軍が絡んでんのや? それに魔人兵士製造プロジェクト? まさかな、あれは失敗やったはずや。

なんせ、かなり無理のある研究で、とてもヒトがコントロールできる代物や無い、あっれは、完全な失敗やったと聞いた事があった。

うちは、かって参謀部にいたかけど、当時の上司があんなモン何の役にも立たんとかぼやいていたな? 当時、参謀部でも、平のうちが考えても仕方が無いことでうわさ程度にしか

きてなかった、一件やった、とにかく、駄目元で、パスワードを参謀部時代の物を入力する。


「やっぱり無理やな、パスワード変更されてる、まあ、無理はないか? それにしても……」


しかも、ご丁寧にこの、パスワードは無効やて? 役に立たん端末や、モニターをグーで潰したろか? その時、そのモニターから呼び出し音が流れた

とりあえず、うちは回線を開いて、通信を受け取った、送り主は通信オペレーターのミナ・ディストだった。


《エレノア連隊長、局長が至急、連隊長に局長室まで出頭せよ、との通達です、隊長またぁ、なにか……》


ミナ・ディストが連絡して来るのは良いんやけど、また何かやらかししました? てっ、そんな眼でこっちを見るなーっ

いや、何時も、派手に、さらにド派手に、そして、たまに盛大にやらかす事は認めるけれど、最近はこれでも控えめにしているやん。


《あのーっ、また何かしでかしました? 連隊長、レスター局長に、ヴァイン副局長もお待ちしているようです》


「ありがとう、直ぐに行きますと伝えておいて」



《解りました》


まぁ、そう言う事にして置いた方がええな、うちは、そう思って、この娘も大分冗談が解って来やんか、さて局長がお呼びか、ややこしい事に成りそうやな?



***


大聖堂騎局長執務室side


レスター・エルストンside


俺の使っている、大聖堂騎局長執務室は、色々、話し合いが多いので、広い程度の部屋にしている、あと、込み入った内容の話し合いなどには割かし重宝している、今、俺は大聖堂騎士団の部隊編成や各部隊の編成状況の報告書を読んでいる。

とにかく、今回、予算が下りたので、新設と古参の組み合わせの部隊を新たに編成する事が出来た。

これで、ようやく、本来の活動…… つまり、化け物総統の他、上級種族至上主義を掲げる連中の取締りが、ようやく出来る、そして、各部隊は以下の通りだ。


特務機動騎士団

フェンリル・ナイト


実戦部隊


零式戦車大隊


各騎士団


第1騎士団:氷竜騎士団


第2騎士団:魔竜騎士団


第3騎士団:白狼騎士団


第4騎士団:炎竜騎士団


第5騎士団:雷竜騎士団


第6騎士団:光竜騎士団


第7騎士団:天狼騎士団


第8騎士団:地竜騎士団


第9騎士団:赤狼騎士団


第10騎士団:銀竜騎士団


第11騎士団:鉄竜騎士団


第12騎士団:白竜騎士団


第13騎士団:双竜騎士団


第14騎士団:飛竜騎士団


第15騎士団:黒竜騎士団


そして、各騎士団に編成予定の空中戦艦隊の配備だ、これらは、もう少し、時間がかかる。

原因は国防軍の石頭共だ、我々に、空中戦力つまり空中艦隊が配備されるのは好ましくないとの、くだらない理由だ。

ま、連中にしてみれば自慢の航空戦艦を我々に使われるのが嫌いらしので、独自に、ヴァルゼリア皇国の最大民間企業<ノアコンッエルン>に、航空戦艦の開発を委託しておいたので、しばらくは、まともな航空戦艦がこちらに配備されるまでは、しばらく時間が掛かる。

当面は戦力としては、陸戦がらメインだから今の所艦隊は、国防軍引き払いの演習艦のみだ、しかしそれらもようやく形に成ってきたので、第一線で頑張っている、みんなの行動範囲が広がりつつある。


さて、次に頭の痛い話の書類が目に入る、まだ、一候補生にこだわってるのか? コイツラは? ふう、困ったもんだ、大方、ラボの嫌がらせ半分だが、此処まで来ると流石に……な? 次は、やっぱりイリア騎士候補生への評価だな? まあ、教導官や各騎士達の評判は良い、しかし、一部の連中が、イリア騎士候補生を露骨に毛嫌いしているとの情報が、最近、多く報告されてきた、言っておくが此処は、王立のリトルスクールとは違う。れっきとした、軍隊の特殊部隊だぞ? この件で、俺は、イリア騎士候補生の扱いをどうするか?

本気で決めなくてはならない、今日はその為に、みんなを招集することになった。


(此処まで来ると…… ある種の嫌がらせだな? オイ、全く、俺は、女性一人に構ってる程、暇人じゃあ、無いぞ?)


たっく、彼女の今の実力はフェリオを抜きの場合でも、かなりマシな方だ、大体、彼女だって、こんな化け物屋敷に、来たくて来んじゃ無い。

現に、こちらも、ある程度、二人の事情は、俺も察しているし、できる限りの協力はするつもりだが、万が一、二人が何らかの理由で脅威になった時は出来るだけ、対処をしなければいけない。


「はあっ、全く…… 奴らの言い分はまるで子供だな?」


「まあ、この際、我が儘な子供の意見なんて、無視して、いいよ、この場合ね?」


そう、俺に、言ってくるのは、俺の弟のヴァインだ、俺と同じ赤毛で前髪を少し垂らしている、これは、本人曰く<特に、自分に合う髪型が思いつかなかったから、前髪を垂らしてみた>との事、いや、前髪が垂れているせいで、外見は無愛想な第一印象なので、そこは、兄としては、もう少しファッションに、拘って貰いたいのだが、まあ、今度、時間があれば、弟とゆっくり、話してみよう。

ちなみに、俺よりも、実力があるので、彼のエリート職の白だ、そして、親父に、俺の提案を、聞き入れてもらって、ゆくゆくは、この国の将来の王になる事が正式に決まった。

何故、俺が、王にならないのか? 不思議がっている連中が居るが、それは、俺が王族の地位とかには興味は無いのが理由だ、そんな窮屈な地位より、化け物を相手にしてる方が俺向きだ、だいたい、俺よりヴァインの方が国民に人気があるし、俺としても、さっさと、王位を返上したので、面倒な事は全てあいつに任せている。

お陰で、騎士団に入る前から、俺の事は<天職と引き換えに王座をすてた、愚かな男>という通り名が定着してしまっていた。


「しかし、連中の報告書を改めて見ると、これは、度し難く、くだらない言いがかりだよな?」


「ああ、まったく、こんな事に報告をする、時間があったんだったら、自分の仕事を仕上げてからに、して欲しいよね?」


確かに、くだらない事この上ないな? やれ、魔王等従える魔女等追放しろとか、やれ、魔獣王は早く封印しろとか、まるで、中世の魔女扱いだ、恐らく裏がある。


「多分…… ラボだな?」


「そうだね、でも、これが理由で、彼女達を、見捨てたりしないよね?」


俺は、ヴァインを真っ直ぐ見て、無言でうなずく、その時、丁度、ドアがノックされた、ようやく、今回の役者がそろってきたな?


「失礼する、レスター局長、騎士団研究部所属カレン・ノア、只今、出頭しました」


「同じく、 騎士団第7保安部部隊長エレノア・アリアドネ出頭しました」


「二人とも、いいタイミングで、来てくれたよ…… まあ掛けてくれ、とりあえず、紅茶でいいか?」


「ありがとうございます、そうですね、レモンと砂糖を入れていただけるなら」


「私は、コーヒーで先ほどまで、残業状態だ、長くなる話し合いの前に、眠気を取っておきたい」


二人を局長室に招き、接客用のソファーで、くつろぐように促すと、もう一人、最後のメンバーがそろった。


「特務機動騎士団フェンリル・ナイト隊長、サラ・フェンリル、出頭しました、遅くなって申し訳ない」


特務機動騎士団フェンリル・ナイト、この部隊は少し特殊で、同盟国のドラグニア帝国の元軍人で編成された、特殊部隊で指揮官は、、サラ・フェンリル将軍が指揮を執っている、特務機動騎士団フェンリル・ナイトについては、いずれ、語るとして、今は目の前の状況の対処が先だ。

これで全員が揃ったな? さて、秘密会議を始めるか。

それぞれ、ソファーに座るのを待ってから、俺が用意した飲み物を全員に配る、飲み物を配り終えた時、俺は秘書には【今日は気分が悪いから、執務室で寝る】と、言って、緊急以外は誰も執務室(此処)に通すなと言っておいた、これで、心置きなく会議を始めることが出来る、そして会議を始める前に、集まって貰った理由を先に伝える。

皆、呼び出された、理由を知っていたので、それに関しては、無言でうなずいてくれた、最初に、この件で切り出したのは、エレノアだった。


「えーっと、で、ですね、今回の呼び出しは、イリア・キサラギ騎士候補生の事なんでしょ……っ、舌噛んでもた」


「ああ、何時もみたいに、敬語抜きで良いよ、エレノアさん、僕も敬語抜きの方が気が楽だしね?」


エレノアの畏まるのに不慣れな態度に、ヴァインがエレノアの様子を、見るに見兼ねて、助け舟を出す、それに釣られて周りも苦笑する、しかし、正直に言うと俺は少し気が重いのだが。


「コホン…… じゃあ、言うで、最近、色々イリアさん、絡みで局長が、苦労してる様やけれど、イリアさんの何処に、あいつら不満持ってんねん?」


「それについては、私も同感だ、確かにおかしな話だ、嫉妬で、こちらの仕事を潰さないで欲しいものだ、現に、フェリオの武装についても幾つか懸念を持たれていて、なかなかスケジュール通りに、彼の武器の作成がはかどっていない」


カレン・エレノアが口々に発言する、確かに、彼女達は一番、あの二人と親密というか、信頼を置いている、しかし、カレンは今回の一件が起きる前から、彼女達の評価をすることを拒んでいた、二人いわく、イリア・キサラギとフェリオ・キサラギの評価は親しい者は外すべきだと言って、評価担当から外れていた。

ちなみに、エレノアは中立に評価を進めていて、保安隊の一員に欲しいと評価をしていた。


「私はイリアとフェリオの二人は、正当に評価されるべきだと思っている、実際あの二人と模擬戦をしてみて感じたのだが、ここ最近、あの二人のコンビネーションは見事なものだった。

だが、もう少し鍛え上げてみたいが、二人が、そのうち私を打ち負かす日がそう、遠くないのかもかも知れんな?」


サラ将軍も俺と同意見だった、たしかに、まだまだ、二人は半人前だが、それも過去形に変わる日も遠くないのかもしれない

なら、かねてよりのプランを、そろそろ皆に教えておく必要が出てきた、それで、俺たちは定期的に集まり、あの二人の配属先を検討していた。


「問題は、誰の指揮下に、彼女を置くべきかですね? フェンリル・ナイツは旧ドラグニア帝国籍が無い人は入れませんし、他の指揮官では、あのお二人を持て余す事になりそうですね?」


「そうだな、では、これから、どうするかだが、これは、正式な部隊の創設にあたり、俺も、ほかの隊長とも意見を交えてみたのだが……」


「……」


「ふむ、それもありえるか?」


「まぁ、問題は在るが、やってみる価値は十分在るな?」


ヴァインが、もっともな意見を言った、各騎士隊の隊長の中には、あの二人が戦闘能力だけなら、自分達の能力を遥かに凌駕している事に、一種の不安を覚えている者や、二人に対して好意を持っている者の、二人を部下にして、どう扱えばいいのか、考えあぐねている者がいるのは確かで、好意的な隊長達の意見では【いっその事、イリア少尉を騎士隊長にしてはどうか】という意見が出ている、それなら、隊長達を全員集めて、会議を開きたいのだが、此処最近、我が騎士団内部に不穏な動きがあったり、怪物の被害の要請で各部隊の出動回数が増えていて、結局、特殊任務専門のフェンリル・ナイツの指揮官のサラ・フェンリルに、かってのエリートでいまは閑職のエレノア・アリアドネと兵器等の研究顧問のカレン・ノア女史が集まる事になった、俺としてもイリアに対する反対意見や好意的な意見を聞きたいのだが、こればかりはどうしようもなかった。

ま、市民の安全に比べれば、たかが、エリート集団になるか? それともただの愚連隊になるのか? 未知数な部隊の一件で忙しい連中を呼び出すのも気が引ける。


「ありがとう、この場にいる、皆の意見は解った、しかし俺は、あえて彼女を部隊長にしようと思う、なぜなら、好意意的にないしろ、あらかさまに反抗的な態度を示している

彼等の意見も考慮に入れた結果なんだ、しかし、暫定的なもので、小規模な部隊に、なるだろうから、彼女達の負担も軽減されるだろう」


「ぶ、部隊長!? 幾ら何でも、早すぎやで、後最低でも4・5年は掛かる…… うちは反対や、局長、アンタ…… イリアさん殺したいんか? うちは、実力があってもそれを生かしきれんまま、死んでいった連中を沢山見てきたで……」


「まあ、待て、レスター局長の意見も聞こう、それからでも、こちらの文句は遅くない」


俺の案を聞いて、怒り出したエレノアをカレン女史がなだめる、まあ、確かに、一見、無謀な提案だが、俺も本当なら、もう少し待つつもりだったのだが……。

これには、エレノアの理解が必要になる、それで、思い切って、此処にいるメンバーに、イリア少尉の事を説明する事にした。


「その理由だが、研究部が彼女の魔王の力の状態を、詳しく、検査した、そして、カレン博士の報告では、フェリオが安定を保ってるのが、ギリギリらしい、そうだな、カレン博士?」


「ああ、その通りだ、今は安定しているが、実際、何時、覚醒しても、おかしくないな? ただ、覚醒の時期などは、私にも解らない、それで、隊長という権限と一体どう言う関係がある?」


「! まさか、それだけの理由で、イリアさん等を指揮官にするつもなんか?」


「……」


エレノアは、俺を睨み付けた後、沈痛な顔をする、それもそうだろう、大体、他の指揮官たちが彼女を持て余しそうなら、いっそ、一部隊を任せてしまおうと言う結論になった、そして、その事は、その時の会議にいた、サラ将軍は静かに目を閉じたままだった、そして、エレノアを呼んだのが、一時、軍の参謀部にいた彼女を副官にしておけば、周りも納得すると踏んだからだ、しかし、この様子では、エレノアには当分嫌われそうな気がする。

重重しい空間がこの場を支配して、ばらくして全員の沈黙する中、ヴァインが口を開く、普段のヴァインの空気は今回は無く、俺より真剣な面持ちで、エレノアに、イリア少尉の現状を説明していく、俺は黙って、二人のやり取りを見ておく事にした。


「エレノアさん、考えても見てください、今のイリア少尉の現状では、誰も彼女を部下に欲しがらないでしょう? 彼女の能力に好意的な指揮官でもです、なおさら敵意を持っている方々でも、彼女を持て余し気味になって、やがて、イリア少尉は孤立していく、そうなったら、我々にとっても、好ましくない状況なって行きます、そうなってしまっては、国防軍のタカ派の台頭を招く事になりかねません」


「せやけれど、彼女は、元はオペレーターや、情報分析とかは、ともかくいきなり隊長になるって、きいたら…… それやったら、隊長候補のローザリア・ユーロ・クラウスはどや? あの三人やったら、イリアさんと同格やし、新部隊の指揮官も務まる、勤まる人間が居るのに、指揮能力が未知数の人間に部隊を任せるよりは確実やと、うちは思う」


エレノアの気持ちも、分解らんでも無い、彼女は元国防軍参謀部の上級士官だった、無能な上官のせいで、当時参加していた怪物討伐で、かなりの犠牲を出した責任を押し付けられて、ほぼクビ同然で、此処に来た……と言うより、俺が引っこ抜いて、治安部隊に転属させたのだが。


「確かに、あの三人だけなら、あの二人となら大丈夫だろう? しかし、それじゃあ、駄目なんだよ……」


「だったら、何故、こんな強引な配置を、する必要が一体どこにあるんやっ、二人に慣れん指揮をさせて、誰が喜ぶんやっ! いってみっ」


「エレノア、いい加減にしろ、確かに、あの三人は彼女達と戦えるだろうが、一番の問題は、彼等の部下が納得しないんだ!

それに、最近では、あの三人の部下からも、手柄を、もって行かれそうだと、ぼやく連中も出て来る始末だ、この件については、彼等も既に納得済みだ」


サラ将軍が強い口調で、言い放つ、あまりの怒鳴り声に、エレノアがびくり身をすくめる、まあ、彼女の気持ちも解らなくもないが、こればかりはどうしようもない

それに、此処ままでは、連中に、どんな手を打たれるかわからない、実際、あちらのシンパもチョロチョロしているようなので、できるだけ早く部隊の編成を急ぐ必要があった。

俺の考えが、みんなに伝わったのか、この場の空気がさらに重くなる、しかし、此処で、この空気に沈んでいる時間さえ今の俺には惜しかった、そんな中、ヴァインが一人口を開いた。


「僕も、レスター局長の判断に同意見です、イリアさん達の現在の状況では、新創立される部隊の指揮官の立場のほうが、僕達も安全だと考えます

つまり、一隊員だったら、軍の要請があれば、最悪あちらに【異動】要請が来た場合、あちらに引き渡さなくてはいけませんし、仮に今の彼女の階級では、到底こちらも、軍組織に属していますので、彼等の敵対関係は更なる内部衝突を引き起こす可能性が起こってしまいますが、彼女を小規模な新部隊の指揮官にして、それなりの任務に付かしていれば連中も、こちらに対して、下手な手出しはしないでしょう、しかし、問題は、彼女の階級の低さが最大のネックになります」


「そうだな…… たしかに彼女の階級では、な? そこでだ、一つ俺から、みんなに提案がある、もちろん、イリア少尉の階級だが、もちろん正規の手続きでの昇進となる、そうだな、彼女の階級を、一階級上げて、中尉とする、理由は先月の訓練で使用した遺跡の中で遭遇した、魔神を撃退したものによる、正規の昇進だ、あと、部隊も各部署から、それなりに使えそうな人員を引き抜くつもりだ、それで、先ずは副隊長の事だが……」


ここで、俺はエレノアを意味深に見つめて、彼女の様子を伺う事にした、もちろん彼女の前歴は知っているが、ここは少々強引に事を運ぶ事にした、彼女エレノアならイリア少尉にうってつけの副官になるはずだ、エレノア少尉はついに、両手を降参のポーズで挙げて、やや諦めたように


「ふぅ、解ったわ、ただし、幾つかうちからも、質問させてくれへん? それじゃあ、一つ目の質問や、うちらの部下の人選は?」


「そうだな、まずは、エレノア保安部隊隊長、本日をもって保安部の連隊長を解任する、理由は、この前の民間人を事件に巻き込んだ事だ、ただし、これは表向きの話だ、君には、新しく創設される騎士隊の隊長参謀に、就いてもらう、つまり、イリア隊長が指揮官の第16騎士隊が貴官の新しい職場になる、そして、そのほかの人選は、君が選んでも良いし、俺が決めてもいいが?」


表向きは、はみ出し者の集団として、その裏は、通常の部隊では、こなせない任務を担当する事になるが、各隊員もそれなりの実力者でないと、あの二人に付いて行く事が出来ない。

それで、今回の人選で、なるべく、彼女達の異質さをどうでもいいかつ、その状況を当たり前のように考える事のできる人材がいいだろう、白状すれば、出世より、常に何でも屋な事をこなせるのがいい。


「なるほどな、局長の言いたい事は判った、要は実力の有る者を、ただし、各部隊で、厄介者つまり……?」


「分かりやすく言えば、他の連中にとって、扱いづらい連中やな?」


大聖堂騎士団は、半官半民の武装機関でも有る為、騎士隊には、軍から出向いてる連中が頭を占めて居る、また、たまに俺が使える連中を、こっちに引っこ抜いて彼女に当てる、後は、彼女達次第という事になる。


「しぶしぶ、了解や、それは、判ったけれど、うちが参謀として、誰が副隊長なん? 中途半端な奴なら、絶対もめるで?」


「その事でしたら、僕の方で、うってつけの方を就けますよ、もちろん僕の知り合いですけれど、その方が着任されるまでは、エレノアさんに副隊長を兼任してもらいます」


そう、特に第16騎士団は、人不足になるので、最近、紋章皇国から亡命してきた、いや、救出した、とある人物を当てよう思う、とりあえず、反対派を黙らせる為に、必要な手は打てるだけ打っておく、そうしないと、レナード(嫌な奴)の思う壺だ、もし、イリア・キサラギをアイツが本気でどうこうしたいなら、彼女を既に、自分の手元に置いて置くだろうし、騎士団(こちら)に押し付けて、此方を何時でも潰す口実にするだろうし、そのあたりの対策もしておきたい。


「なお、新騎士隊は、魔狼騎士団フェンリル・ナイトと同じ特務機動部隊とする、これは、ラボとか反対派の圧力に対して、イリア隊長の部隊が任務を阻害されない為の処置でもある」


俺とヴァイン以外の全員が怪訝な顔をする、まあ、それが普通の反応だな? これから、俺がそれを踏まえて説明する、さて、これで、みんなが納得してくれないと、俺もお手上げなのだが、此処で、誰かに、あの、二人の件を丸投げも癪に障る。


「俺としては、他の騎士隊と同列に扱うのは危険だと思ったからだ、フェリオの核が一部とはいえ、魔王の因子を、ただの普通の女の子に、いわば移植されているのがな? とりあえず、いまの所、低い低い確立で覚醒の可能性が有り、その上、自分達よりも潜在能力が上だったら、誰もが、彼女を敵視するそう? そうなったら、彼女自身を含む全員が孤立する、彼女と関わりが有ろうが無かろうが、要は、彼女に、フェリオの力を使わせないようにしながら、こちらの手元で二人の力の変化を監視しながら、既にイリア少尉に埋め込まれた、いや、同化かした核を安定させる事のできる、対策は立ててはいるものの、もう少しだけ、これには時間が掛かる。

それで、今回の小規模部隊編成というわけだ、小規模なら、厄介な化け物の討伐には向かわなくても、俺の知っている、魔神の核の制御をおこなう事を優先させる任務向きだ、国防軍は、こちらの精鋭部隊は要求していても、大隊クラスの規模は、過小評価する傾向が多いので、今回は、そこに漬け込ませてもらった、これで、しばらくは部隊の訓練とイリア少尉の魔神の核の安定を優先する時間が出来るわけだ、これが、俺の本心でもある」


次に、俺は、通常状態のイリア・キサラギの戦闘能力の事を、カレン女史から報告を受けていたので、その事をこの場に居る全員に伝える、これも、少し頭の痛い話になる。

今頃、レナード辺りが、この件で、俺の悩みの種を押し付けて来たことを笑っているかも知れんが、一々、そんな事気にしてはいられない。


「次に、これは、カレン女史に、イリア少尉の今の状態を調べてもらったのだが彼女の能力だが…… まず、格闘技能はフェリオのサポートを含めば、Aランク、次に射撃はAランク、そして、これは、俺の予想通り、彼女の魔力はD?Sランクと出た、つまり、イリア少尉の魔力は、フェリオの魔神の核の力を引き出さなければ、本来の力を十分に発揮できない事が判明した」


そう、この件も頭の痛い事に、彼女に、魔術を教える以前に、魔術の基礎から、覚えてもらう必要があった、もちろん、彼女に、魔術を教える相手は限られている、つまり、基礎は教えられても、それ以上となると、既に、フェリオが、魔術の基礎をすっ飛ばして、彼女に教えていたのだが……

問題は、その教え方に有った、雑な知識で基礎を通り越してのイメージで彼女の頭に叩き込んだのだから、ほとんど、彼女の魔術は攻撃専門のレベルで補助とか、回復とかは、まるでちんぷんかんぷんだった、その件も、こちらに協力してくれる人物の到着待ちになるが、とりあえずは、カミラさんに基礎を二人に叩き込んでもらうことになった。

それを聞いた、エレノアが一言だけ述べる。


「何や、その魔力の不安定差は? ……魔術師としては、イリアさんは完全に落ちこぼれやん?」


「そうだな、しかし、この魔力の件は、さほど問題に成らないだろう? 彼女は国防軍士官の時から魔力テストは最低ランクだ、魔術は駄目だが、サラ将軍の剣術至難で格闘技術を上げれば、問題は無いだろう?」


エレノアとカレンのやり取りを、俺は黙って聞いていた、しかし、イリア少尉つまり、彼女には悪いが不運属性でも有るのだろうか? だとしたら、こればかりは、彼女自身に乗り越えてもらうしかない、俺は、ヴァインを横目で見ると彼に次の案件を、みんなに伝えるように視線で合図を送り、彼もそれに頷き、次の案件を切り出した。


「では、この件は、これで終了とします、次の案件方が、かなり不味いですね?」


「ああ、レスターの言うとおり、次の件は、彼女の件とはシャレにならい、なお、この件は、他言無用、口外しないで貰いたい、もし、この一件が外部に漏れたら、こちらの立場がかなり危うくなる事を、皆、理解して欲しい……」


「「………」」


俺は全員の沈黙を待ってから、今回一番厄介な件を告げる、内心、この件は、ただの噂レベルで済んで欲しいと言う、俺の甘い願望も有った、しかし、信頼出来る情報筋の情報なので、軽視は出来ない、それで、このメンバーを含めて、徹底的に調査をして【一番信頼】が出来る人間を慎重に選んで、ここに呼び寄せた、と、言っても、この件もいずれは相手側に伝わるだろうが、今回は、電撃的な急編成を行うので、連中の手出しは気にしなくてもいい。


「実は、兼ねてからの調査により、我が大聖堂騎士団内に、どうやら、スパイが紛れ込んでる……らしい」


この報告を、ヴァインから、直接、聞いて、ある者は、ため息を漏らし、また、ある者は更に表情を曇らせていく、そして、この報告を聞いた、エレノアが俺に、アイコンタクトで【間違いない情報? それ?】と、聞いてきた、俺は彼女の無言の問に。


「ああ、エージェントからの情報だ間違いない、この件も出切れば、ただのガセだったら、物凄くうれしかったのだけれどな?」


そう、最近身内(軍)または、何処かの外部外部の勢力が最近になって、再び動き出した、おそらく【世界再建議会】だろうな、これは内外問わずに警戒を強めるか、【世界再建議会】とは、あの、<7千年戦争>終結後に結成された、云わば、上級種族主義の連中が勝手に世界の再統治を目的に組織した武力集団で、これは、どの国家勢力も彼等の存在を否定しているため、正確には、ただの私設軍隊に近い組織で、独立国家としては認められない連中で、しかも、上級種族が再び世界の支配者に返り咲きだけの妄執に取り付かれているのが、大半の老人の集まりだったのだが、最近になって、彼等の結束力も高まりつつある、つまり、向こうにもかなり厄介な相手が居ると思われる。


「ふぅ、うちらは、軍の連中と敵のスパイまで相手せんとあかんのか? ま、難儀な仕事は今に始まった事やないしね?」


「そうだな? アリアドネ隊長、スパイの方は俺の方で何とかしよう、とりあえず、こちらの方は君たちが動くと厄介な事になりそうだから、本件は無視していい」


取り合えずは、内部の連中…… つまりラボ繋がりだな? あいつ等も最近、妙な事に首を突っ込んでいるそうだ、しかし、まだ、証拠が無い分、こちらから、仕掛ける喧嘩は無謀すぎるか? 今は、親父が、この国の王だが、最近は親父も年を取っているためか、政治は宰相に任せがちになってきている。

それに、ラボは元々、変異化した人達の治療目的の機関として、創設されたので、表向きは医療行為も大々的に行っていて、そう簡単に、取り潰しを行えない、ま、奴等がボロを出すのをじっくり待つとしよう。

そう考えていた時、サラ将軍が俺に有る提案をしてきた、それは、俺にとっても心強い提案だった。


「済まない局長、今度の空中艦隊の演習に私の艦隊も参加させてもらえないだろうか?」


「サラ将軍どうかしたのか?」


「今度の空中艦隊の演習延期には出来ないだろか?」


「難しいな、もうスケジュールは組まれて…… まさか!?」


流石は魔狼…… 俺もその可能性を見落としてた、確かに連中ならこの機械を狙ってくるかもしれないな?


「つまり、将軍は、騎士団の内部の連中とラボそして国防軍の三つがつながってると?」


「ああ、あくまでも、それは可能性の一つだ、そして、あちらの一部の連中が独断もしくは何かしらの行動を起こしてくるかもしれない」


確かに、末端は、過剰な上級種族主義者とその取り巻きが大勢居る、それは、我がヴァルゼリア公国も同じだ、もしかしたら、演習のドサクサに何かをしでかすかもしれない。

それも、用意周到で、尚且つ証拠を残さないようにした手口で、彼女の提案に、ヴァインは落ち着いた物腰で、その提案を受け入れた。


「解りました、艦隊演習に参加を要請しますサラ将軍、ただし、あくまでも、【演習での一件】ですので、あちらも【事故】を起こすでしょうから、今回は、此方も、そのつもりで事を済ませます、この次期はお互い無益な内輪もめは起こさないでしょうし」


「解りました、ヴァイン副局長、演習中、我が魔狼艦隊は常に魔狼の眼を光らせましょう」


そうだな、サラ将軍の艦隊がキサラギ少尉の分艦隊の近くに居れば、他の連中も下手な行動は控えるだろう、何しろ、名目上は騎士団預かりだが、彼女は、大陸最大の軍事力を誇るドラグニアの帝国軍人で、今は我が騎士団の独立機動部隊の中核を担っている。

ま、彼女に何か起これば、現ドラグニア帝国皇帝陛下やランスロット・フォン・ドラシェル提督も黙ってはいないだろう。

俺は、今日の会議は、これくらいで切り上げようと皆に解散の合図と今後の方針を伝える事にした。


「では、この会議は、これで終了とする、また、本件は一切他言無用をお願いする、万が一外に漏れたら、それこそ連中の思う壺だからな?」


俺の言葉に無言で全員が頷き局長室を出ようとする、そして、エレノア連隊長を呼びとめ、彼女の未だ内心穏やかな心境ではない状態なので、もう少し話をしておく事にした。


「エレノア連隊長、少し良いか? 貴官に大切な用件があるのを忘れていた」


「奇遇やな、今うちも、そう思っとったんよ、これは、うちとイリアさんにも関って来る問題やしな?」


彼女も、どうやら、考えていた事は同じ事らしい、これは腹を割って話すもの同士、好都合だ。


「さて、本音で話し合いしよか?」


「そうだな、ま、楽にしてくれ、後で、誰かに何か軽く食べれる物を持って来させよう」


俺と彼女は向かい合って、ソファーに座ったまま、キサラギ少尉の件を話合う、さて、エレノア連隊長は少々むすっとした顔で、こちらを見ていたので

どう、本題を切り出したものかと、考えていたら、彼女から本題を切り出してきた。


「それで、イリアさんを、局長はどうしたいん? まさか、この後は、全部放置状態って、ふざけたオチやったら、うちらは呆れるで?」


「そうだな? せっかく魔王の力を……手に入れたんだ、それを使ってみたくなったとか?」


俺が、そう言うと、彼女は更に怖い笑みを浮かべて、さらりと、この場に俺と二人での状態を良いことに目だけ笑っていない顔で切り替えしてきた。


「はは、局長、笑顔の本気で殴って良い♪ 一片、本気で……?」


「当然、嘘だよ、安心しろ、エレノア連隊長」


ニコニコ笑顔だが、エレノアの背後に恐ろしいオーラを感じる、冗談半分で、フルボッコにされそうだ、今度からは、彼女をからかう時には、注意しながら、からかおう……。


「本音は彼女と君達の為だよ、実際、彼女は自分で何でもしょい込もうとする、そこが彼女の良いとこでも在り悪いところでもあるんだよ」


「せやね、彼女は自分で何でもしょい込もうとする、そういえば、六ヶ月前に、うちらと合同での遺跡調査で、一人で強敵と対峙していたフェリオを助けに行こうとしたで?」


そう、彼女は自分の力を過信しているとかではなくて、とにかく常に自分を危険な状況に追い込んでいた

ま、これには、エレノア・サラ・ヴァインに、そして、俺も厳重に注意と営倉に送り込んだので

最近は、あまり無茶はしても無理はしない方向に成って来ている、彼女が無理をするのは、フェリオがらみの時が多い。


「つまり、他の騎士団員と同列だと……分かるな?

ただでさえ、フェリオの能力の一部とサラ将軍の剣術の指南に、デタラメな魔王の能力が備わって

そこに普段の手柄とかに、興味のない彼女の温和な性格だ

これで、他の連中でなくても、手柄を欲しがっている連中からすれば、あまり気持ちの良い状況にはならんだろ?」


「そう……やね、あの人は、何でも背負い込んで自分のせいにしてまう、損な娘やで、ま、そこがキサラギ少尉の良い面の一つでもあって、弱点でもあるんやけれど?」


全く…… 少しは、仲間を頼れよな、それが彼女の欠点でも有り彼女の魅力の一つでもあるが、いや、頼ってみたいが……

既に、彼女が化け物過ぎて、普段から力をセーブしているしかないのも仕方のないことなのだが、それらを考慮して人事を決めないと決めないといけないのが俺の悩みでもある。


「それで、人事の件やけど…… うちがこれやと思った人材でかまへん?」


俺が落ち込みそうな雰囲気を打ち払いながら、人事の事を、エレノアが聞いてくる、確かに、俺が決めるより、彼女が決めた人事でかまわないだろう、後で、他の連中にとやかく言われるより、破天荒なエレノアの人事で決まった人事なら誰も文句が出てこないな?


「そうだな、それぐらいは連中も文句は言わんだろう? ま、エレノア連隊長の差配で誰を引っこ抜いても文句は、とりあえず、君等が扱いやすい奴等を選んでくれればいい。

それと、表向きは【局長のお使い専門部隊】として、上手い事こき使ってやるさ」


俺は腕組みをして、そう答える、この部隊は特に、軍の連中もマークしてくる筈だから、出来る限りハードな任務をこなしてもらわないと

直ぐに、何かにつけて連中の上げ足を取られる事にならない様にしておかないと、後が面倒でもあるが、ただでさえ鬼指揮官と言われているエレノアが副体長になるのだから、内外には【特務】の件が多い部隊として扱わないと、遅かれ早かれ、何かしらの圧力が掛かった時、俺の権限ではどうにもならなくなる……

と言う事態は避けておきたい。


「じゃあ、もう行くわ、ついでに、一つ言っとくで、これは、うちがナイショで調べていた事なんやけれど……」


執務室を去り際に、エレノアが俺に、一言だけ、彼女にしてはひどく珍しく歯切れの悪い質問をして来た。


「なぁ、魔人兵計画に付いて、局長は関与してへん? この件はうちが秘密に調べている件やから、もしかしたら、局長か前の局長かも知れへんけれど

何かしらの関与とかしてへん?」


あれか? 魔人を改造して兵士として使う研究か、俺も黒い部分が有る男だが、アレはどちらかと言うと。


「そうだな、大聖堂騎士団の前任の局長は、この件については事件が終わった後、俺がその件を武器に局長職を蹴落としてて、俺が新しくこの位置を手に入れたが…… 俺は、その件は関与はしていないな、どちらかと言うと、計画の中止は進言したが?」


「そっかぁ、局長は計画は知っとったんか? でも、彼女を隊長にしたら薄々気付き初めるで?

そしたら、うちから、この件を教えてもかまわへん?」


エレノアの性格は知っているので、俺は強い口調で釘を刺すと言うより、命令口調で、きつく釘を刺しておいた。


「この件は、彼女が気付くまで絶対に言うな! でないと、取り返しがつかなくなるぞっ」


「うん、それは、うちも心得とるけれど、でも彼女を騙すんは、気が乗らへんな」


確かに、エレノアは隠し事もそれなりに出来るが、それは相手が油断できないレベルなら、でも、イリア・キサラギに関しては、エレノアと仲が良い関係なので

この手の件には、まして、彼女の両親の死亡事故も関って来ると、流石に何時までも誤魔化通す事が出来ないだろう?

そこで、ある程度、エレノアに負担が掛からないようにしておく事にした。


「それなら、キサラギ少尉が自身の手で、この件の根深い所にたどり着いたら、そして君が少尉のこの件での真相を知った時、彼女に話しても良い」


全く、俺も君もまだ子供だな、出切れば、キサラギ少尉をある程度鍛え上げて、そうだな、騎士団の幹部になっていたら、俺たちの味方にスカウトしてみたいが

おそらく、彼女は俺の誘いでも丁重に断る気がする、そう云う雰囲気を彼女から、俺は感じ取っていた。


「そん時は、全部話すで、うちが知ってる事……全部や、でも、あくまでも噂レベルやけど」


「そうだな、その時は俺も協力する、多分、俺も、その時は軍や騎士団内の派閥争いの渦中にいて、信頼出来る味方を探していると思うしな?」


やっぱり、俺は女の子に弱いらしい、ま、それは今に始まった事ではないし、何を今更な感じだな、エレノアが静かに席を立って、退出をしようとする。


「それじゃ、うち、そろそろ行くわ…… さて、これから、忙しくなるわ、なぁ、いっその事、うちが新部隊の隊長になろうか?」


「そうだな、それも魅力的な提案なんだけれど、君の階級を一階級降格する、そしたら、お互い釣り合うだろう?」


そう、最高指揮官が同階級の部隊も異例だが、特殊な任務を任せていけば、いずれは、階級がキサラギ少尉のほうが上になっていく

そういう俺の思惑で動かしておけばいい、四の五の言われるのは、俺の方だから、罵詈雑言の弾除けにはなって行かないとな?


「でも二人中尉がおるで?」


「それに、階級なんて、意味が無いぞ、彼女の指揮する部隊は、連中の扱いにくい民間出身者で固めれば良いさ

そうすれば、連中も厄介払いしたかった奴等が纏めて、実績の浅い部署に異動になって、せいせいしたと喜ぶだろうさ?」


俺の皮肉に、彼女は薄っすらと嫌味な笑みで、一言呟く。


「やっぱり、女の子に局長は甘いで、まぁ、それで、今だカノジョが居らんのも不思議やな? 騎士団の七不思議になるん?」


そう言って、エレノアが部屋を出た、ま、これから山ほど扱き使うのだから、それくらいの嫌味もかわいいもんだ。



****


新騎士団執務室兼詰め所Side


エレノア・アリアドネSide


局長との秘密の会議が終わって数日が過ぎ、うちはこの部隊の副隊長を正式に拝命した、けれど、まだ、イリアさんが着任していないので

必要な事は全部しておいた、執務室を見回す、流石に新しい執務室だけ有って綺麗なオフィスやな?

今新しいメンバーと設備の設置や何やらで忙しかった、今は一息付いていてる。

あの会議から一週間後、そろそろ新任の隊長と成った彼女が来る頃やな、ま、人事については例のごとく、【エレノアが勝手に集めていった】と云われているが

正式な手順で決めての事なので、ま、文句は殆どでなかったが、やはり噂のせいで中々人数が集まらなかったので、結局の所、古巣の保安部にいた面々を連れ出して

何とか、少数引っ張ってきて、うちらの部隊が面白そうだと判断した人間を集めてみた、それで、うちが保安部から、引っ張って来たメンバーは以下の通りや。


アルト・ファルゼス小尉<保安部から転属>


リフィア・ウォード小尉<保安部から転属>


楓(半獣人)曹長<補給課から転属>


アリシア・コードウェル:小尉<医療班から転属>


レイラ・フォーエル:小尉<保安部から転属>


スコット・ベール:準尉<保安部から転属>


シルビア・フオート:曹長<戦車隊から転属>


レイス・マカリスター:軍曹<辺境警備部隊から転属>


ジャック・フォルト:伍長<他の騎士隊から自ら志願>


マリアベル・アミュレット:小尉<技術部から転属>


ロバート・ミュラー:曹長<国防軍から転属>


スミス・ジェス:伍長<国防軍から転属>


フィーナ・ローズウッド:中尉<レスター局長の指名で配属予定>


エレノア・アリアドネ:中尉<保安隊から転属>


フェリオ・キサラギ伍長<本日付で配属>


イリア・キサラギ:中尉・隊長<本日付で配属>


が……以上のメンバーや、意外と女子の比率が多い? 仕方が無いわな、男子片っ端から声かけたけど…… 

中々、うちのヘッドハンティングに掛からんかったんよ、まあ、今のリストのメンバーには役職を与えて後は、歩兵隊やね?

ま、数は有るんやけど…… その…… 150人しか認められへんかったんよ。

とりあえず局長に恫喝…… コホン、もとい……要請しといたから、後なんとか50人は追加されそうやから小規模の任務なら、何とか為りそうやな。

そう考えを纏めていたら不意にドアをノックする音がした、どうやら、待ち人来る……やな。


「エレノア参謀、キサラギ中尉がお見えになりました」


スコット君が来客をうちに告げる、彼は事務関係が得意な反面、荒事は苦手な面があるさかい、書類整理とか事務業務が専門分野やから

此処では、ディスクワークが主な仕事になる、さて、いよいよ、イリアさんの着任か…… 正直、こんな前例がない人事やから、階級無視でいきなり隊長か、気絶さんといてな、イリアさん。

そして、イリアさんとフェリオが執務室に到着し、副隊長席でくつろいでいた、うちの席の前で敬礼をして、やや緊張気味に挨拶をする。


「この度、人事部から、こちらに配属との通達が有り出頭した、イリア・キサラギ中尉です!」


「は、はじめまして、同じくこちらに配属されました、フェリオ・キサラギですっ」


緊張しながらも、やはり、軍人のイリアさんは兎も角、初日から、カチコチやないか、フェリオは取り敢えず、改まって畏まれても、うちが困るから、この場を和まそうと、明るく、そして、何時ものうちらしく砕けた返礼をして、二人を歓迎した。


「ようこそ、第16特務騎士隊へキサラギ中尉、と、言っても、久しぶりやったね~ まぁ、熱いお茶入れるさかい、チョイ、そこの席に座ってて

今、お茶にするから」


「ハッ、よ、よろしくお、お願いします…… アリアドネ中尉、では、失礼します」


「はい、よろしくお願いします、エレノアさん、はい、お茶にしましょう♪」


フェリオがうちに、さん付けで答えたので、イリアさんが、ちょっと、フェリオ君をにらみつけた、それを、うちが「まぁ、落ち着いて」といってなだめる

そして、二人に階級抜きで話そうか? と伝えて、すこし感想を聞いてみる事にした、緑茶とドラ焼きがあったので、それを二人に出してもてなす

フェリオは緑茶が苦かったのか、なんとも言えん渋い顔をしている、あ、今度は紅茶にでもしておくとしよう。


「びっくりした? イリアさん、いきなり、中尉に出世して、新しく編成された此処に配属された感想は?」


「は、はい、いきなり…… 人事部から、こちらに行くようにと言われて、ところで……」


やっぱり、戸惑っているんやな、うーん、流石に、この人事は無理があったのかもしれへんなあ? とは言え、本音を言えば、誰も、イリアさんクラスの規格外の

人材(化け物)を欲しがっていないのが騎士団内の現実や、でも、うちはこの部隊が面白みが有りそうな感じがしたから、参謀職を任されても、別に構わなかったのだけれど、なんか、うちらの壮行会の時の上司がニコニコ顔で、送り出したのを思い出す、あれは、厄介払いと、うちの始末書の開放されての高揚感なんやろね?

きっと、さて、そんな細かい事より、着任された隊長を和まさんとね。


「せやね、イリアさん、リラックスして良いよ♪ 此処は半分軍隊やけれど、半分は民官組織やし、と言うのも、此処だけの話、民官やと言うと

所謂、軍が表立って動けんときの何でも屋な面もあるから、大抵は化けモンの討伐とか色々面倒な任務がメインやな?

でも、最近は、上級種族思想組織の取締りとかがメインになってきて、本来の化け物討伐が遅れがちになってきてるから、うち等がその任務を請け負う事になる

当然これには、一部民間の支援も要請がこちらから、または民間からの以来も舞い込んで来るんで、そんな時、いちいち、お堅い軍機とかがあったら少々面倒な事になるんで、軍規律とかは、あんまし意識せんといて、でも、必要最低限の規律は徹底しているんで、そこら辺はヨロシクやで」


「わ、解りました、エレノア中尉……じゃなかった、エレノアさん」


「はい、わかりました、エレノアさん」


うちは、二人に我が隊の状況を伝える、と、言っても流石に、今は足りない付くしなので、暫くは訓練が中心になるはずやな、そのあたりも二人に説明をしていく。

もっとも(あの会議の件は今は内緒やけれど)


「だいたいの事情は解りました、それで、肝心の隊長はどちらに?」


「何いってんねん、この部隊の隊長はイリアさんで決まりやで、そう、そう、始めは……」


とりあえず、イリアさんには悪いけれど、まあ、ある程度はこの部隊について説明を聞かされているはずやから、ある程、度冗談を交えて教えて行こうとしたら

彼女は、口を金魚みたいにパクパクさせて固まってしまっていた。


「わ、私が…… 隊長……? まさか、冗談ですよね?」


自分の顔に指を指してうちに聞く…… まさか…… あの、局長(やろう)…… 何も教えずに、此処に放り込んだんだか?


「もしかして? イリアさん、局長か人事部から何も聞かされてへん?」


うちの、コクコクと頷く、彼女の、この後の展開見えたで…… 局長? フェリオもお茶菓子を食べ終えて、イリアさんの様子を見ているが、少々不安気な表情になって

きた。


「冗談抜きで、イリア・キサラギ中尉、アンタやで……」


(まるで、死刑宣告やな……)


「う~ん」


「うぁぁぁぁっ! イリアさん、しっかりしなあ、だ、誰か水や、水持ってこんかーーーいっ」


バッタリとその場で気絶する、うちは騎士隊のみんなを集めてイリアさんを介抱した、さて、今頃、悪そうな笑みを浮かべている局長と少し話してこよ。

(まあ、いきなり隊長て言われたら普通はそう成るわな? 局長…… 覚悟しいや!)


無論…… 局長をシバきに行こうとしたらみんなに止められた、まあ、そんな事はいつでもできるしな、しかし、これくらいが丁度ええな、のっけからやる気満々な感じより、ある程度、これくらいの反応があったほうがかわいいしな。

一部描写を変更しました。

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