第31話~ヤワト王朝の滅亡~
話数と描写の編集をおこないました。
ヴァインSide
無事に島での残務処理を終えかけた時に、島の周囲を警戒していた偵察機より〈敵艦隊発見〉の報が入った、此方は既に出せる艦総てに出撃の命を出したが、先の海戦で損傷の酷い艦が多く私の指揮する遠征艦隊総旗艦【ヘイルダム】まで防衛に当たっている、対するヤワト王朝の艦隊は約300隻余りだが……。
「なあ、ヴァイン、敵は、ありったけの艦隊戦力を動員してし来ている…… しかも一部は演習艦を含んでいるそうだ……」
何時になく複雑な表情で、言葉を濁すレスター司令、うん、解ってる、彼等は決して降伏はしないだろ…… 恐らく、此れがヤワト王朝との総力戦になる。
「だけど、僕達も退くわけには行かない、ヤワト王朝を抜ければ【ヴァルゼラート】はすぐそこなんだ、だから僕達も退くわけには行かないんだよ、それが例え後世から未来永劫この【ヴァルゼリア皇国皇王】が非難され続けようともね?」
そう、彼等はヤワト王朝国王の命には逆らえない、逆らえば家族がどうなるか解らない、多分家族を人質にされている将兵は全体の半数で残りは国王に忠誠を誓っている精鋭部隊の筈……。
そう言って僕は戦況図に眼を向ける、作戦通りにが【アマテラス】のサクヤ王女は敵艦隊を説得するために正面に移動し始めているサクヤ王女には戦後、ヤワト王朝の再建を任せなければならない、そして手短にサクヤ王女には後方待機をお願いしたが、彼女は此を拒否して今は前線にいる。
「よし、此れより作戦を開始する、イリア・キサラギ司令の艦隊はアマテラスを全力で防衛しつつ、戦闘を開始、全艦は全力でアマテラスの防衛に当たれ!」
「はっ」
さあ、此処からが、サクヤ王女の正念場ですね…… 僕はそう思いながら全艦隊に進軍の命令を出した。
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ミューラジュ・ウルフ分艦隊旗艦【ホーリーグレイル】Side
イリア・キサラギSide
私達はアマテラスを中央に配置し、前衛にはエレノア戦隊司令が臨時で指揮する艦【ゲンブ】と私の指揮する【ホーリーグレイル】とフィーナ戦隊司令の【シルフィード】と数隻の空中巡洋艦が前衛をガードする、そして、ミカ戦隊司令の臨時で指揮する【セイリュウ】を右翼部隊に配置し左翼部隊には神薙アルテミス戦隊司令の臨時で指揮する【スザク】を配置して、前進をしている。
私の指揮する艦隊の護衛はフェンリル・ナイトが引き受けてくれている、流石にサラさんは凄い…… まるで【鬼神】か【戦神】の様な戦いをしている、此方の動きと連携しながら敵を攻め立てて敵陣に風穴を開けて行く、既に彼女の艦隊と交戦した、ヤワト王朝防衛艦隊の六個分艦隊が戦闘不能に追い込まれている、また、猛撃を加え様としていた分艦隊もアマテラスのあの攻撃(?)の影響で次々と無傷のまま戦闘不能になっている。
《全艦隊、此れより、ヤワト王朝艦隊に向けて、紋章兵器【女神の鎮魂歌】を放ちます、ヤワト王朝艦隊の戦闘不能艦は、そのまま放置して下さい》
「了解です、サクヤ王女殿下、皆、聞いての通りよ、敵艦の戦闘能力を奪いつつ、敵の抵抗を削いで行きます」
サクヤ王女の座乗艦アマテラスの通信に私は強く頷き、それぞれの戦隊に指示を伝えると。
《了解やで、此れよりゲンブは超広域シールドを多重展開、アマテラスの紋章兵器のエネルギーチャージが完了するまで敵の攻撃を全て防ぐで》
《およ? エレノア戦隊司令はヤル気満々だね~ よーし、我等ミカ戦隊はゲンブのシールドを最大限活用しつつ、敵艦の無効化をするよ~》
《さあ、派手にいくぞ、ロバート戦隊はミカ司令の戦隊と連携してサクヤ王女フォローに回るぞ》
エレノア戦隊がシールドを展開して、敵艦隊の攻撃を全て防いでいく、そして、敵の攻撃がある程度収まったら、今度はミカ司令と神薙司令の二個戦隊がカウンター攻撃をして更に敵艦隊の戦力を削いで行く。
「それにしても、ミカ司令とロバート司令の戦法は的確ね?」
「はい、僚艦に牽制と陽動を任せて、スザクとセイリュウの二艦の火力と速力に任せて確実に敵艦隊を翻弄しています、まず、通常艦船の戦法には無い戦い方ですね?」
それだけではないと私は思う、二人はスザクとセイリュウを敵艦隊の死角に回り込ませてから、ありったけの火力を叩き付けている、やはり、ヤワト王朝の技術力は侮れないわね? 元々アマテラスの直衛艦として、ゲンブ・スザク・セイリュウ・ビャッコは建造されていたらしい…… 因みに重戦艦【ビャッコ】は現在カレンさんが調査の為今回は戦闘に参加していない、今戦闘に参加しているのは、機動高速艦【セイリュウ】・機動強襲艦【スザク】・防衛艦【ゲンブ】の三艦がアマテラスの護衛をしている、そして、これ等の艦を試験的に私達の戦隊に配備されたのは、ただ単に【得体の知れない艦等、ミュラージュ・ウルフにでも押し付けてやれ】と一部の司令官達が此方に厄介払いで押し付けて来たのだった。
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機動強襲艦【スザク】Side
アルテミスSide
それにしても、また、とんでもない艦をヤワトの連中は考えたわね? まず、私の指揮するスザクだけれど殆ど戦闘機の機動性並の速度に空中戦艦クラスの火砲の組み合わせが殆ど反則レベルね? ミカ司令のセイリュウは姉妹艦になるらしいが、彼方は高速艦に重戦艦クラス火力を叩き付けている、エレノアの艦は火力は控えめだが【防御力は絶大】らしい。
「今頃はカレンは狂喜乱舞しているかも?」
うん、間違いない、絶対あの人は今頃は重戦艦【ビャッコ】の魔改造プランを練っている筈だ、大体あれだけの物を目の前に出されてじっとしてられないだろう? そう、例えば、自分で組み上げたバイクを更にチューンアップして、よりピーキーなし上がりにしたいとか? そんな感じね。
「よし、僚艦に伝達、全艦は敵の注意を引き付けろ、敵陣の穴はスザクとセイリュウが開ける、後、被弾が激しい艦は無理をせずに後方に退避、交互に支援も忘れないで、いい?」
《《了解、戦果を期待します》》
僚艦に指示を伝えると彼等は素早く行動に移る、まず、自分達に敵の注意を向けるために副砲や主砲でわざとらしく威嚇射撃をして敵艦隊を挑発する、そしてある程度の数が此方に向かって来たら。
《よーし、アルテミス司令、ミカ司令、纏めて敵艦をフルボッコにするよ♪》
「了解、まかせせて、全武装一斉に砲撃、目標は敵艦の武装と機関部に集中して当てていきなさい!」
「了解」
スザクに搭載されているニードルビーム砲が一斉に火を吹くそして、次々と敵艦の武装や機関部にダメージを与え此方の攻撃を受けた敵艦は水上に着水する、此方の火力を何とか控えめに設定しているので、敵艦は【修理すれば使える】と言う程度のダメージしか追っていないが、アマテラスの紋章兵器が次々と敵艦の機能を潰していくので、直ぐには直せないダメージになっている。
(粗方の敵艦は潰したな? 残るはヤワト王朝艦隊の本隊だけだが、此ばかりは無傷ではいかないな?)
そう、いよいよヤワト王朝正規艦隊の王都第一防衛艦隊が遂に動き出した。
「問題は彼等は誰に従っているかだよな? まあ、サクヤ姫ではないのは確かだしな?」
そう、彼等はサクヤ姫の実の父のヤワト王朝国王に忠誠を誓っている、一番厄介な相手だ、サクヤ姫が停戦を申し出ても拒否をするかも知れないな。
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ヤワト王朝第一王都防衛艦隊旗艦【アカツキ】Side
艦隊司令官赤山竜蔵Side
ふむ、アマテラスを半ば強引に前線に出し、此方の艦船をほぼ無傷で制圧する戦法か…… 敵ながら大胆な戦法に打って出ましたな? サクヤ姫、本来、アマテラスの運用目的は敵の戦闘機能を奪い四隻の護衛艦が止めを刺す戦いをするのが本当の戦法…… それをさかにしての戦い形、やはり姫様はお優しい……しかし、優しいだけでは【王】たる器では在りませんぞ?
「全艦、攻撃用意、目標…… ヤワト王朝王族座乗艦…… アマテラス、各砲頭、目標をとらえ次第一斉に照準合わせ、アマテラスを撃沈する、なお、アマテラス撃沈の責任は私が取る」
ざわざわと艦橋の要員がざわめく、無理もない…… 王族専用艦に砲火を向けるのは反逆するのと同義語、それを私は今、まさに部下にそれをせよと命じなくてはならぬ。
実際、かくいう私も苦々しい想いでアマテラスをメインモニター越しに見つめていた、彼等が我等を容赦無く艦砲で吹き飛ばすなら、容赦無くアマテラスを沈める事が出来ようが、アマテラスは此方の艦船を航行不能に追いやっているだけで、積極的に攻撃はして来ない。
「潮時だな…… この戦いも……」
「そうですな、現に演習艦隊や警備艦隊の投降が起きていて、前衛は事態の収拾がつかんそうです、また、独自に戦線を離脱する艦も出始めておりますな?」
そう、相づちを打って来たのは、参謀の霧島准将だ、本来なら私と同じ予備役将官だったが、祖国の存亡と言う事態の為現役復帰を願い出た老将の一人だ、まあ、遅かれ早かれ【壮絶な討ち死に】か【断頭の露と消える】事を望んだ者達の集まりだしな? この艦隊は。
「所でそろそろ、降伏を申し出ても良い頃合いだろな? 参謀?」
「はっ、そろそろですな、小官は軍法会議を望みますが、閣下はどうなさいます?」
ふっ…… そんな事等の昔に決めておるわ。
「若者に敗戦の責を負わせたと在っては、祖父に合わせる顔は無い、私は最後まで責任をとって逝こうぞ」
そうして、私は敵艦隊の総旗艦【ヘイルダム】に投降を宣言した。
此処に我がヤワト王朝の滅亡は結した。
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ヤワト王朝王族専用艦アマテラスSide
サクヤSide
わたくしはあの戦いの後、紋章兵器の長期間の使用の影響で体調を崩して暫くアマテラスの自室で休んでいました、意識はきちんと有りましたが、さゆりとけいに海原艦長に三人に、きつくお叱りを受けてしまいました、そして一番取り乱しかけたのは、やはりエレノア様でした。
「サクヤ姫、どこか御体の具合の……」
「え、エレノア様、わたしはもう、大丈夫です、もう、起きていても平気ですから……」
しかし、エレノア様はやはり、わたくしが幼い時からの良く知っている彼女で、寝込んでしまったわたくしよりも一番狼狽えていました。
「サクヤ姫、余り無茶をしないでくださいね? エレノアさんだけではなく、私達もご心配をしましたので」
イリア司令官も少し怒っているようです、ひとしきり二人が色々と戦いの事後の事を教えて下さいました。まず、幾つかの艦が何処かに逃亡中とのことで、それらはドラグニア帝国艦隊が捜索中だそうで、各地の治安は旧ヤワト王朝軍と合同で治安維持をしているとの事、また、降伏を申し出てきた将兵の身の上の処遇はわたくしの意識の回復を待って執り行う事で、旧ヤワト王朝代表の夢月様が取り決めたそうです。
「所で、父はどうなりましたか?」
そう、父は戦闘の真っ「それが、今各部隊が手分けして探していますが、発見には至っておりません、姫様誠に申し訳ございません……」
後でさゆりにきいたのですが、この戦いの最中に部下を数名つれて、行方をくらませて現在捜索中との事だが、夢月様が【あんな小心の小者今は捨て置け】と一蹴さたそうです。
「分かりました、それでは、今から着替えますので、着替えが終わり次第に投降をした将兵の処遇を決めようと思います」
わたくしはその場で凛とした声で皆さんにわたくしの決意を示す強い意思をもって、そう宣言した、この時、既に彼等の処遇をわたくしは心に深く決めていた。
例え其が後世にどの様に言われようとも……。
次回、不定期ですが更新を頑張ります。