番外編〜フィーナの里帰り〜
描写を一部修正しました。
皇国中央鉄道王都フェアーリス鉄道ホームSide
フィーナ・ローズウッドSide
紋章皇国は遂に、ティルム新皇王陛下と多くの人々の手により、独裁者:ロイル・ウィル・ザークより解放された、ロイル元皇王の処遇については極刑を望む【声】が大多数を占めたが、ティルム皇王の判断は【処刑では到底許される物では有りません、彼の処遇は国内での幽閉が一番良い方法でしょう。】と言い放ち、ロイル元皇王は現在彼の持っている別荘で幽閉されているそうだ、また、護衛の兵士達は厳選に選ばれた人物で厳重に警備しているそうだが、ロイル元皇は猜疑心が更に酷くなり最近では、よく、誰かに殺されるだの復讐に燃える人々が殺しに来るだのと、喚き散らしているそうだ。
そして、彼は後に疑心暗鬼から来る被害妄想に取り付かれて発狂死し、しばらく彼の別荘には【ロイルの亡霊】が出ると噂になるが、それは、また別の話だ。
私達解放軍は次の進撃に備え、紋章皇国で戦力を整え始めた、そして次の作戦までに全遠征艦隊に休暇が与えられ、私も故郷に一時的に帰郷する事にした、私の故郷で眠っているアルバート様に会うために私は休暇をもらい帰郷する事にした。
まず、服装は色々考えたが思い付かなくて、エレノアさんが【ああ、それやったら、おめかしさんとね? うちにまかせときっ♪】と言って【白い帽子と白いワンピース】を何処からか用意してくれた、後、衣装選びにはミカ艦長や綾人さんも選んでくれて、ありがとうとお礼を言った、実はロイル元皇王を捕縛したあと事情聴取やら報告書の山と格闘していて服を買う余裕すら無かった、ミカ艦長が私のスリーサイズを聞いて来たので、何だろう? まあ、悪意がある雰囲気では無いから教えてもいいかな? とメモを渡しておいた。
「久しぶりに女の子ぽい服を着るから、少し違和感が在るわね? でも、かえって目立たないから良かったかもね?」
そう、言いながら列車を待っていたら、横に見慣れた少年が私が座っているベンチの隣に座っていた。
「フィーナさん、里帰りですか?」
「はい、お久しぶりです【黒い賢者】様、あの、賢者様もご旅行ですか?」
すると穏やかにうなずき私の顔をじっと見てから、一言だけ。
「はい、僕の中で眠っている【彼】の娘さんに逢って来ようかと? 此処から、すぐの所に有るんです」
そう、少し寂しげに呟く、伝説では竜帝は実の娘の手に掛かり死んだと、されているが事実は少し違うみたいで、彼は少しだけ教えてくれた。
「伝説はともかく、事実は竜帝と人間の女性の間に生まれ落ちた【女の子】を上級種族の頂点に立つ【竜族】が彼の最愛の女性と娘さんを手に掛けて、その事を知った竜帝が竜族の長老達を全員葬り去り、全世界を統合しようとしましたが、実は生きていた娘さんが彼を必死で止めようと彼の前に現れて、説得をしようとしたんです」
確か、その時は既に世界の半分を焼き払ってしまっていて、人間族が彼の娘を【英雄】に下手上げたと私達【エルフ族】の言い伝えではそう聴いている、そして本当の結末も。
「ええ、エルフ族の伝承通りで、彼はわざと悪役を演じて、自ら娘さんが持っていた【剣】で命を絶ちました…… その後娘さんも自ら時空の狭間に入り二度とこの世界に現れる事は有りませんでした、しかし、ようやく居場所が解りました」
「彼女の【光りの翼の聖女】の行方が? じゃあ、貴方は彼女に逢うために?」
もし、彼女に逢えたとしても恐らく協力は得られないだろう、彼女はもう十分な程戦ったのだから、そして、今更、彼女に助力を頼むのは、お門違いな話だ。
「はい、できれば竜帝の魂だけでも、彼女に逢わせてあげたいと思っています、まあ、その時僕は一瞬で塵に還りますね? なにしろ、かなりのお爺さんですから」
そう、この少年は七千年戦争の終わりの時代から約千年以上生きてきているのだから、終わる時は塵に還るのだ、でも、彼の表情からは悲愴な感じは微塵も感じられない、むしろ何処か吹っ切れた感じがした。
「所で、イリア司令の事を貴女は、どう思います?」
彼は落ち着いた様子で、イリア司令の事についてお尋ねてきた、勿論私の想いは決まっている、私は彼を見つめて真剣な面持ちで返答した。
「司令は、たまに危なっかしい所が有りますが、面倒見の良い上官です。」
「解りました、フィーナさん、これからも彼女の事をお願いいたします、では、僕はこれで失礼いたします。」
そう言って彼は駅舎から姿を消した、そして、私は到着した列車に乗り込み故郷へと向かう。
「故郷に帰ったら、まずは色々忙しく為りそうね?」
思わず本年を独り言で呟く、そしたら私の正面側の席に座って居る女性が声をかけて来た。
「それやったら、うちらも手伝うで? フィーナ副隊長?」
「それじゃあ、お願いします…… って、えええーーっ!」
私が驚きの余りに大声を上げる、なぜならアルテミスさん達やミカさん達とエレノア参謀が列車に乗り込んでいたから、だって皆さん休暇は紋章皇国の小旅行をするって言っていたし、私の行く所とは全く違う所に行くって…… まさか。
「何故!? 此処に居るんですか? 皆さん」
「まあまあ、フィーナ副隊長、落ち着いて、だって、エレノア参謀の【提案】でフィーナ副隊長の故郷に行くことにしたんだよ? 勿論全員参加のくじ引きでね?」
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エレノア・アリアドネSide
まあ、ミカ艦長の話の通りくじ引きで決まってしまったんや、フィーナ副隊長を驚かせる意味合いもあったけど、本来の目的はフィーナ副隊長の護衛が主任務やから、だって、まだロイル一派の残党があちこちで粘ってるから万が一に備えての事や、なお参加メンバーは以下の通りや。
ミカ艦長、ちなみに誰よりも早く当たりを引いた。
ルイセ、二番目、ドキドキしながら二番目に当たりを引いた。
ツバサ、三番に、当たりを引いた、内心舌打ちしていた、恐らくトップを狙っていた模様。
フィルミンア・ラウス・フローリン、四番目に当たりを引いてかなり喜んでいた。
アレクトル・デュール・フローリン、五番目に当たりを引いた、まずまずと言った雰囲気やった。
アルテミス・ガーネット、まさかの六番目、そしてモフモフ要素のツバサやルイセといっしょやさかい、かなりハイテンションやったから、この中では要危険人物No.1や、まあ、サクヤ姫の前回没収した萌え萌えブロマイドを一部返却して、代わりに自制をしろと言ったら赤涙を流しながら、うちの条件を呑んだ。 まあ、いつかアルテミスと燃えと萌えの違いについて語り合いたいが、まぁ、彼女は【かっこよくてモフモフ】が好きなんで、こっちに引きずり込むのも難しくない。
「で、エレノア、何故、ここで私を睨む?」
「ごほっ、ごほっ、いや、な、何でもあらへんよ? それより、そろそろ終点やな?」
綾人がうちを【じーっと】と見つめているので、うちはオレンジジュースを飲みながら、目線を泳がせるという失態を演じてしもた、そして列車が停まって人々が降りはじめると、土産物屋さんが目に入る駅の中はドーム型の駅舎で中央鉄道駅と同じ造りや、そして、みんな旅行者の格好に変装しているから余りめだてへんやろ。
「あの、エレノア参謀、アタシ達はこれから何処へ?」
フィルミンア准尉が尋ねてきた、アレクトル准尉とは兄妹で二人とも少しばかり遅れたけど、今回の遠征作戦で昇進していた。
「おおっ! かわいい女の子発見! 早速……」
アレクトル准尉が恒例のナンパを始めようとした時、ツバサ副長がガッチリとアレクトルの肩を掴んで、目茶苦茶怖い笑顔で、一言。
「ねぇ? 二人とも、お仕事忘れたら、怒っちゃうよ?」
「「はい、了解しました、副長ッ」」
さて、ミカ艦長とルイセ少尉は……? 二人揃ってお土産に夢中やっ
「おょ? この置物面白いね〜♪」
「艦長、こっちのお菓子フェリオ君に郵送して良いですか?」
「みんな、仕事忘れてたら……」
うちが呆れ顔で止めに入ろうとしたら、フィーナ副隊長が、笑顔で、うちに話し掛けてくる。
「エレノアさん、大丈夫です、此処は以前、アルバート様の生まれ育った街で反ロイル派の最重要拠点の一つだった所で付近のロイル一派の残党は既に此処には近づけません」
そう言って、あちこちを案内してくれた、町並みは昔の古風な外観で戦火とは無縁とは、いかなかったが、徐々に復興し始めている、そして、丘の上の焼け落ちた古城に、たどり着くと、フィーナ副隊長は街で買ってきた華を門の前に供える。
「此処は以前、私が亡くなった両親から受け継いだ城です、あの日、遠縁の御祖父様が、私を庇って、此処からドラグニア帝国方面に逃がしてくれました…… そして、私は無我夢中であの丘から、この城が焼け落ちるのを目にしました」
そう言うと、彼女は姿勢を正して、敬礼をする、うちらもその場で黙祷を捧げる、ざわざわと森の木が静かに揺れていた。
そして、彼女はこちらを振り向き、静かに口を開いた。
「皆さん、ありがとうございます、私達の国はようやく、以前の紋章皇国に戻りつつ有ります、そして、私はこれからも皆さんと共に戦います、最後に、私の最愛の方に【お別れ】をしてきます、少し一人で行かせて下さい」
「解ったわ、フィーナ副隊長、私達は此処で待ってるわ」
イリア司令を始め全員が静かに頷く、そして、彼女は森の奥へと入って行った。
※※※
フィーナ・ローズウッドSide
森の奥を抜けると大きな湖が広がった丘が見える、そして、そこにはひっそりと小さなお墓があった、そう、アルバート様のお墓だ、王族専用の霊廟ではなく、ティルム皇王が【兄が安らぎを得られる場所は此処しかない、しかし公式では霊廟に埋葬された事にする。】と口の堅い側近に命じて、此処に埋葬された。
「ああっ…… うっ、ううっ…… あ、アルバート様、アルバートさまーーっ! うぁぁぁん!」
私はアルバート様の墓標を抱きしめながら泣きじゃくった、そして、ひとしきり泣きつづけた、アルバート様の墓碑銘には【我が最愛の兄アルバート安らかに眠られん事を】と刻まれていた。
「アルバート様、取り乱して申し訳ありません、そして、今日はアルバート様にお預けしたい物が有ります、それを今日はお持ちしました」
古来より我が紋章皇国には、告白をするべき最愛の人に【自分が一番大切にしている物】を送る風習がある、それは、かって戦地に赴く騎士が最愛の人に大切な物を贈って無事に還って来たら、婚約の証に、また、自分が死んだ時は、それが形見になるようにとの想いで出来た風習で今では、両想いの相手に贈るのが風習となっている。
「これは、昔アルバート様から、戴いた大切な【リボン】です、アルバート様にお預かりして欲しくて持参しました、必ず受け取りに来ます、だから私とそして、アルバート様のライバルだった【ヴァイン様】をお守り下さい」
そう、ヴァルゼリアの若き王ヴァイン・ヴァル・ヴァルゼラートとアルバート様は子供の頃からのライバルで私と三人でよく遊んだりもした、そして何時だったか、二人が私の事で【喧嘩】をしたその時アルバート様が【ヴァイン僕が死んだら君がフィーナを幸せにしろ、そして君が死んだら僕が彼女を幸せにする】と約束したと聞いて、私は二人に頭に来て【冷水】を掛けたのは有名な逸話だった。
私は、ゆっくりと立ち上がり、静かに敬礼をしてから、アルバート様に伝えるべき言葉を紡いだ。
「では、アルバート様、フィーナ・ローズウッド元紋章皇国親衛隊上級騎士、これよりヴァルゼリア皇国、大聖堂騎士団に合流し微弱では有りますが彼等の力になって参ります、では、行って来ます」
彼女の泣きシーンが大分前から構想していました。
一見死亡フラグな感じですが、紋章皇国の風習は養護学校時代に書いていた落書きのストーリーに出てきましたので、黒い賢者のストーリーも纏めて今回出してしまいたかったので、だしました。
死亡フラグではない泣きシーンを何時か作ってみたいです。
次回不定期更新ですがこれからも完結目指して頑張って行きます。