表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/10

ゴシップ③~融通のない

芸能人のゴシップなどいかなライターでも僅かな想像力と執筆知能でスラスラ書けてしまうもの。


大学を出たばかりの若かりしライターに脚本の仕事など巡ってはこない。


不遇な時代のライター志望はゴシップライターやタレントのゴーストに手を染めて糊口を凌ぐ。


そんな暗い経験を重ねても今はテレビで成功している。


駆け出しの脚本作家(ライター)からスタートしたら名前が独り歩き。


いつしか有名なドラマ脚本家へのステップを挙がっていくのである。


「私は脚本家やライターさんに憧れています」


母校の学園祭には安いギャラで呼ばれ学祭実行委員数人の学生に歓待をされたことがある。


かわいい顔立ちな女子大生が紛れていた。


かわいい女の子


好き勝手に遊ぶ女優とは根本的に違うシロウトが魅力だった。


脚本家の女好きはまたぞろ血が騒いだ。


将来は物書き(ライター)になりたい。女子大生と語った夢は記憶にあった。


そうか


思い出した


「ははんっあの時の女の子だったのか。学祭実行委員さんだな」


ハアッハアッする横顔


かわいい顔を面影に自信がわく。


女遊びはダテではない。


"あれから2~3年だ。卒業して記者やライターになって不思議はない"


となると…


女の素性は朧げながら目星である。


女はライターだろう。


出版社に就職し記者かもしれない。

エレベーターは高層階の最上にあがるのは長いのである。


脚本家はプロとして鋭い観察力と洞察力を発揮していく。


次にじろじろ見たのは


「この医者だ」


改めて医科大学院生を見てみる。第一印象から思ってはいた。


「あの俳優にそっくりじゃあないか。顔の彫りの深さなんか本人だぜ」


女記者を気遣う優しい姿はトレンディドラマのワンシーンである。


カメラマンは顔が強張(こわば)ってしまう。お見舞いの品物があるわけでなし


手ぶら?


見舞い客なら


見舞いのような素振りをしてくれなくちゃ。


「うん!?」


洞察力と観察力の必要な物書きが稼業である。


理に(かな)わぬはとことん知りたい。


「ところでお嬢さん」


どちらのかた?


チラッ


お見掛けしましたね


うん?


「私を覚えていますか」


この一言でエレベーターに内輪(うちわ)的な雰囲気が漂い始める。


大学院生も


シンデレラ姫も


女記者を身内のひとりとして認識される。


驚いたのはカメラマンである。


「けっ!なんてこった」


コイツはこんなオッサンの知り合いか


ゴシップ記者がターゲットに親しくしてしまってどうなるんだ。


「はっ?」


声の方向。


ゴシップ・ターゲットはあくまでも女子高生だったはず。


その当人の前で


取材記者な身分を隠したいというのに


エレベーターで注目の的になってしまった。


「お父さん。こちらの方を知っているの?」


女子高生から


"お父さん"


今度は


カメラマンと女記者の目が点になってしまう。


「お父さん?」


はっきりと女子高生はお父さんと言った。


「ああっ記憶間違いでなければ」


大学の後輩さんだよ


えっ!


単に中年だけだと思った女は脚本家だとわかった。


「あっ…」


目の前にいる売れっ子のテレビドラマの題名はすらすら思い浮かぶ。


いずれも高い視聴率を記録をした名ドラマで感銘を受けている。


さらに


大学文学部の誇れる先輩ゆえ


常にその執筆活躍の健痰ぶりはチェックをしていた。

プライベートはよく覚えていない。


確か二回ほどの離婚歴があった気がする。


お父さん?


このシンデレラ姫は"娘さん"なのか


お父さんと言ったのは聞き違え?


親子間は知らなかった。


その場にいた大学院生


キョトン


医学部はドラマどころかテレビもあまり見ない。ニュースは新聞やインターネットでサアッ~と拾い読みをする程度。


テレビの必要性がなかった。


「へぇお嬢さんのお父さんは有名な方なんですね。これは失礼しました」


長い空間のエレベーターはようやく最上階に


ドアがゆっくり開く。


カメラマンは早足で真っ正面に降りていく。


懐から小型カメラを取り出す。


カシャカシャ


バックから出したカメラ


振り向きざまに作動する。

カシャカシャ


モータードライブ仕様。


一枚ぐらい見える写真があるであろう。


女記者も早めに消えたいのである。


エレベーターホールの右側が一般病棟である。


見舞い客はサインの通りに右に進まなければおかしいのである。


「ちょっと君っ。待ちたまえ」


真っ正面に歩き出し不審な女とわかる。


脚本家は"好奇心"から何者か


詳しく話が聞きたい。


エッ!


「どこに行くんだね」


お見舞いならば


「君は右側に行くんだけどね」


疑いは深まり怪しき存在は否定ができなくなる。


君は…


「雑誌記者だろう。さっきの男がさしずめはカメラマンか。あの腕に抱えたバックが器材か」


女記者は立ち止まりシュンとしてしまう。


「学園祭の実行委員会は大変だったなあ。君はしっかり役目をこなしていたじゃあないか」


素性はバレた!


「はいっすいません。実行委員会は私でございます」

シンデレラ姫はポカンっと口を開いた


何がなんだとわけわからない。


「しゅ…取材をしてこいと言われてやって来ました」

そんなことだろうと思ったよ。


「雑誌名は?出版社は?」

名刺があるのか


「なんだゴシップ専門のあれじゃあないか」


編集室も偶然に知っている。専属のライターも2~3人知っており直接取材方法などを指導したこともある。

「編集長は今は誰」


えっ?残念ながら


「ソイツは知らなかった」

記者はいとも簡単にシンデレラ姫のゴシップ狙いを(ゲロ)してしまう。


「シンデレラ姫?」


おいおいっ


待ってくれ。


「冗談も休み休み言ったら賢いぜ」


この娘は


女子高生は


「シロウトさんだよ。いくらテレビのオーディションに優勝をしているからっと言っても」


芸人さんではない。


「ゴシップを流す対象が間違っていないか。編集長は若いんだろ。売れる雑誌を考えてくれなくちゃあな」

アンダーグラウンドにどうせやるなら


清純派のアイドルだ。


「こちらに分け前(報酬)をくれるなら"スキャンダル"のひとつやふたつ教えてあげる」


芸能界には顔が広いからなっ


「君は間違っている。顔を洗って出直したまえ」


優しい顔つきだが言葉にはキツいものがあった。


"シンデレラ姫は不正で選ばれた"


テレビ局に影響力のある脚本家が裏で工作をしていた。


コネのある女子高生をあえて優秀グランプリ獲得を指図した。


「不正でグランプリ獲得した女子高生。そんなゴシップがお望みだろうか」


女記者を問い詰めデスク編集長を聞く。


「君のことは伏せておこう。局長の番号を教えたまえ」


悪いようにはしない


しぶしぶ…


「だいたいだなっ」


こんな高学歴女にゴシップ記事をやらせる神経が気に食わない。


電話を掛ける。


「編集長に直談判してやろう」


リーンリーン


出版社の受付嬢が出る。


「なっなんだ!おいっ編集長デスク《直通》じゃあないのか」


零細出版社のくせに


生意気だぜ


「はいっその出版社でございます」


デスク局長でございますか。


「あいにく席を外してございます。どのような御用件でございますか」


苦情(クレーム)は日常茶飯事である。


ゴシップ専門のアンダーグラウンド。


その辺りは充分に予防をしておかなくてはならない。

おいそれと責任者たる編集長に怒りの電話を繋げない。


零細企業の出版社。狭いフロアにいる編集長は電話ありがわかっている。


「あの電話の応対だと」


ゴシップ取材失敗かっ


ロクな電話ではないと職業柄感じる。


業を煮やした脚本家は短気である。


名前を告げてデスク編集長を出せ!


「はっハイ!」


怒鳴ったら編集長は席に戻ったようである。


売れっ子の有名人は邪険に扱えはしないのである。


敵であるなら味方につけてしまいたい。


「お待たせしました。お電話ありがとうございます」


編集長(怒!)


「シンデレラ姫っのゴシップはオマエさんの指示か!」


はっ?(弱ったなあ)


「オマエさんだな。シロウトからゴシップを取ってこいっと命令だな」


下らないゴシップだぜ


いくら記事にしても


インパクトがないから


金にならない。


読者の関心の少ない雑誌なんか売れない。


「はてはて。なんの話しでしょう。私は編集長でございます」


怒りの電話は知らぬ存ぜぬを決め込む


「シンデレラ姫っ?知りません」


なんのことか


知らないだと!


「はいっ知りません」


いくらご高名な先生さまでも


「わからないことは答えようがございません。悪しからずでございます」


編集長は役者である


修羅場をくぐり抜け


のらりくらり


知らぬ存ぜぬ


あくまでも


善意の第三者を貫き通す。

「はっはぁ~ん知らないんだな」


コノヤロー



直に編集長に苦情をした脚本家


出版する雑誌にシロウトのシンデレラ姫をゴシップの対象にするな!


怒りの苦情をしたというのに編集長は"無視"を決め込む。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ