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ゴシップ①~附属病院

最上階の特別個室で脚本家(父親)はイライラしていた。


「おいおい。一体どうしちまったんだ」


待てど暮らせど娘は来ない。


「女学院から附属病院までなんだぞ。そんなに時間が掛かるはずはない」


短期な脚本家はしびれを切らしてしまう。


タイミングとしても書きかけのドラマを一本完成し区切りのよいところ。


達成感で満喫感もあったのに。


「あの子は俺の娘だ。この特別病室がわからずに迷子になってしまったかもしれない」


血筋は争えないものだ


にっこり


リーンリーン


タイミングよく女子高生から掛かって来た。


「お父さん私です。ごめんなさい。治療しています」

階段で転んだことを告げる。


たまたま親切な医師と知り合い整形外科で治療を受けています


「整形外科?捻挫した?」

そりゃあ


お父さんは心配だぞ。


「診察室はどこだ」


指は突き指程度。膝元は大騒ぎをしたわりに軽症(かすり傷程度)。


小学生が運動場で過ってスッテン転ろり。大したことはまったくないのである。

「とにかく治療とは穏やかでないなあ」


そこで待ってろ


ガウンを羽織り階下の外来整形外科に出ていく。


ドアを開けようかとしたら

「おっと!顔を見られるとまずいな」


ガウンにサングラスを掛けてしまう。


病院には異様な雰囲気のオッサンである。


外来診察室はわかりやすい。エレベーターを降り無人の診察室廊下をいく。変装した姿は比較的他人の目に触れてはいない。


「先生どうもありがとうございます。お世話をおかけいたしました」


診療が終わったベッドの女子高生を脚本家はちらほらと見る。


「そちらの女子高生はですね。不肖私の娘でございます」


心配顔をした脚本家は父親の気持ちを理解する。


目の前の。エレベーターを降り無人の診察室廊下をいく。変装した姿は比較的他人の目に触れてはいない。


「先生どうもありがとうございます。お世話をおかけいたしました」


診療が終わったベッドの女子高生を脚本家はちらほらと見る。


「そちらの女子高生はですね。不肖私の娘でございます」


心配顔をした脚本家は父親の気持ちを理解する。


目の前のひとり娘を簡単に手放し離婚した過去は


知らぬ存ぜぬの風情。


「あっお父さんですか。これはこれは」


サングラス?


患者さんなのか


「申し訳ございません。僕の不注意で娘さんは転んでしまいました」


女学院が入院中のお見舞いに行こうとしたのは


この異様な父親だったのか。


「ご安心ください。怪我の程度は」


大したことはありませんでした。念のためレントゲンで骨折確認してある。


診察ベッドで女子高生は恥ずかしそうに座っていた。

「えへへっ。すっかりお世話になっちゃった。優しい先生でよかったなぁ」


ギャアギャア大騒ぎを巻き起こした女子高生。


なに食わぬ顔して


"ここはどこ?"


"私は誰?"


一連の騒ぎはどこ吹く風である。


「先生っありがとうございます。娘のことは日を改めましてお礼させていただきます」


詳しい事情は娘から直接に聞き出せばよいだろう。


「さあお父さんの病室においで。エクステンションのベッドもある。ゆっくりできるさ。傷みが消えるまでな」


私は最上階の病室です。袋小路の特別病室ですからひっそりしております。


「そうですか。静かな病室は療養に最適でよろしいですよ。診たところ軽症です。が予期せぬ再発があるかもしれません。しばらく休んでいただけたら」


大学院生の私も最上階の部屋でナース研修があります。


ご一緒に最上階へ行きましょう。


「先生も最上階へ来なさるのですか?」


袋小路の一風変わった造りの(かど)部屋である。


「あのぅ先生のおっしゃいます部屋は横の小ホールのことでしょうか」


こちらに降りてくる時にナースさんが出入りしていました。


「ざわざわしていましたから。ナースさんばかり集まっていましたね。一体なにが始まるのかと思っていましたけども」


頃合いを見計らって女子高生はよいしょっと起き上がる。


さも"病人でございます"と詐病的に重々しく。


時計を見たらナース研修開始まで数分ほどである。


「そうだ研修教育でした」

僕は時間がありません。


「参りましょうか」


三人は同じ階に目的地。エレベーターに向かい歩き出す。


背が高い医科大学院生はひときわ目立つていた。


外来診察室のフロア廊下を横切りエレベーターエントランスへ行く。


夕方には外来も終わって吹き抜けのロビーは人気(ひとけ)も疎らである。


ざわざわとしてもいないロビーに怪しげな男女が座っている。


怪しげ?


患者さんか


いやっ違う


夕方に外来診察は開いてはいない。


診察待ちの患者ではない


お見舞い客であろうか。


だが患者さんの病棟を探す素振りもない。


不審なふたり…


テレビ局の主宰した"シンデレラ姫"キャンペーンに敏感になっていた。


グランプリ優勝した女子高生が附属病院に頻繁に出入りしていると匿名性のあるタレコミがあった。


二人は週刊誌専属の記者とカメラマンの男女である。




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