恋の敵①~あなたは誰?
一般病棟のエレベーターがぐんぐんと最上階まであがっていく。
お見舞い客と思われる制服姿の女子高生。
エレベーターで最上階に来ても不思議はない。
狭い空間の女子高生
あっ!
チラッチラッ
"背が高いなあ"
じろじろ
医科大学院生といった好青年が気になってしまう。
年頃の女の子には無理もないことである。
若い男性。
スリムで利発な顔だち。
なにせハンサムは誰かれなく気になる。
じろじろ
ドクターさんかな?
「あのぅ~お医者さんですか」
何気なく…
女子高生は
赤の他人に
見知らぬ男性に声を掛けてしまった。
しまった!
ポッと赤ら顔になる。
ハンサムは第一印象である
女として気になることは止められない。
女子高生の気軽さが出てしまう
いやっ
オーディション"シンデレラ姫"のグランプリ獲得という存在から気安く話をしてしまう。
"あっ!ヤダッ私っ"
なんら面識も
脈絡も
ないのに
附属病院の先生に話掛けて失礼かもしれない。
"携帯にしろっ私ってドジな女の子"
うん?
ナースらは揃って女子高生を見た。
かわいい制服がよく似合うお嬢さんであった。
「そうですわよっ。先生はドクターでいらっしゃいますわ」
ナースは遮るように答えた。
事務的な態度!
質問者が年寄りや男ならもっと丁寧に答えたたかもしれない。
もっとも警戒すべき若い女性が大切な男性にあれこれ手出しをされるのはよろしくはないのである。
ナースは事務的に返事をしたまでである。
エレベーター密室であるが女子高生にじろじろ"見せたく"ない女心であった。
「そうですよ。こう見えても…僕は」
大学院生であり国家試験をパスした立派な医者でもある。
「医者になったばかりですから。よく気がついてくれましたね」
ニッコリと女子高生に微笑んだ。
ハンサムな医師に!
女子高生は一瞬にして顔が赤らんでしまう。
「そういう君は…。女子高生なんだね」
その制服は(私立の)女子高だ
どこの女学院だろうか?
お嬢様学校だろう。
学園附属病院の女子高生ではないなあ。
"あらっ嫌だァ~"
先生が女子高生をじろじろ見てしまう
大好きな先生を女子高生に"盗られ"ちゃう
ナースは嫉妬心を感じて白衣の裾をピッピッと引いた。
"先生っもう嫌ですよ。女子高生に気をつけてあそばせ"
エレベーターは最上階に少しで到着する。
「はいっ女学院ですよ」
女子高生はハキハキと母校は山の手にあるお嬢様学校で有名ですっと質問に答えた。
ふたりは談笑した。
「女学院はお嬢様学校だからね。男の子の憧れだもの」
ここで女学院の君に出会えるなんて」
僕も幸せだ
にこやかな笑顔を見せる
"あっ先生ってば!いけないわ。そんな嘴の黄色い子羊に…"
私のダーリンを子羊に奪われてしまう!
"イヤ~ン"
年端はさほど変わらぬ女子高生。
18歳の社会人ナースはキイッと睨み付けた。
女子高生はナースの"睨み"に雰囲気を感じ一瞬身構えた。
"なっなにっこのイケスカン女!"
敵?
私に敵対心?
密室は一人の男を巡る二人の若い女の対立構図である。
しばし気まずい沈黙が流れ冷戦となってしまう。
"なんなのっ。この不埒な女!白衣着てるからナースはナースなんでしょ"
女が女に闘いを挑んでくる気配
視線が合えば"バチバチ黄色い火花"が飛び交う。
ジロッ
ジロリッ
女子高生はかわいらしい女の子として華よ蝶よっとちやほやされて育て上げられた自負がある。
(ナースなんか)負けないもん!
街を歩いても男の子に声を掛けられるかどうかのたいして目立たない"女の子"がそのナースだわ。
シンデレラ姫としてオーディションを勝ち抜きグランプリ優勝の肩書きがある。
近い将来は女優タレントを約束される"普通じゃあない"女子高生なのよ。
"医者でもないナース風情に。カッカッと白眼を剥いて睨まれる筋合いはないわ"
スゥ~
エレベーターは最上階に止まる。
ナースにはこの空間のなんと長いことか。
密室ドアが開けば小賢しい女子高生は一般病棟へとっとと消えていなくなるのである。
"早く消えて"小賢しい子羊め!
人目がなければナースはアカンベーをしてやりたい。
尻の青い小娘に嫌みを言いたげであった。
「あっあのぅ~先生。私困っちゃう。携帯を使いたいです」
女優か女子高生か。
泣きそうな顔で困った困ったと体全身で表現をする。
「うん?お嬢さん。どうかされましたか」
最上階にある個室に行くにはあらかじめ連絡を入れてからと言われている。
携帯を使います
「最上階に?えっ病室があるんですか。そりゃあまた(変わった病室だ)」
そちらの方が驚きである。
「この最上階エレベーターから階段でいかれるのですか」
附属病院に勤めが新人ナースも袋小路の病室は知らなかった。
行き止まりの先にあるのは医療職員研修のための30人収容教育ホールである。
「そうなんです。個室の病室があるそうなんです。入院しているお父さんからメールがありましたもの」
そりゃあ珍しい。
「僕らも袋小路にある研修ホールに行くんですよ。ちょっと興味あるなあっ」
携帯は一般病棟から離れた部屋の前からでしたら構いません。
三人は階段をよいしょっとあがる。
三人仲良く
…とはいかない
"もう!この女子高生!邪魔なんだから。早く消えてください"
ナースは頭から湯気がもうもうと立ち上ってしまう。
さらに…
女子高生は運悪くカラフルなパンプス(厚底タイプ)を履いていた。
見るからに階段は登り難くいのである。
歩くのは難しい足取りを見せていた。
「お嬢さんっ大丈夫ですか。なんでしたら(僕の肩に)寄りかかってください」
よりによって
附属病院で足を滑らせてしまい骨折でもされたら一大事である。
「はいっすいません。厚い底の靴を履いてしまいました。私がいけないんです」
可愛いらしく反省していますっとおどけた笑顔をみせる。
「どうにも不安定なんです。階段は特に上がり難くなりまして。困りますの」
女子高生は現代っ子である。
医者であろうがなかろうが遠慮なしに支えを求めてしまう。
細い腕をスゥ~と伸ばしてみる。男の力強い腕に組み入れてしまう。
ギクッ
手を出された方もびっくり。
まさか可愛い女子高生が積極的に出るとは。
言い出したのは男である。よろよろ転倒はいけません。
「さあっ僕につかまってください」
グイッと女学院の制服を持上げ腰に手を回す。
キィ~
モッモウ~
ナースは見逃さないのである。
グゥ~
制服のスカート。男の力で腰回りに皺が寄っているではないか。
腕を回して
肩を組んだ。
ナースの頭の中
宇宙ロケットが発射の準備をする。
スリーツーワン~
ゼロ!
アガァ~
イヤ~ン
嫌がらせはイヤ~ン
仲良く
ふたり
肩を寄せ
並んで
恋人のような雰囲気
階段を背後から
ナースは嫉妬心だけ
顔面真っ赤。
手短に鈍器があれば
浮かれた女子高生を
イカれた頭を
コッツン!
後頭部のあたりを力強く
キィ~
この泥棒ネコ!
ヒィ~
女学院は短めなスカートでわざとらしくよろけてみせる。
後ろからは
ムカムカしながら赤ら顔が階段を見上げる
怒りの顔つき。
お尻をじろじろ見た
スカートの裾はひらひら
今にもめくれあがり見えそうである。
アンッ
「イヤ~ン」
故意か偶然か
階段が滑って足元がふらついた。
「おっと危ない」
よりいっそう腰を力強く持ち上げた。
チラッ~
ナースの目の前にこれ見よがしに露出されてしまった。
紫レースのランジェリーだった。




