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とばっちり②~俺様は知らないぜ

蜂の巣を突っついた


大騒ぎ!


テレビ局はドラマ収録スタジオにとんだ旋風がわき上がる。


いつものスタジオはアシスタントディレクターが収録前の下準備を整えていた。

全出演者の俳優や女優の楽屋裏を忙しなく走り回って収録に支障なきよう備えている光景のみであった。


困ります!


「なんど同じこと言わせるんですか。スタジオには関係者以外立ち入り禁止ですよ」


温厚なAD(30歳)が楽屋裏で声を荒げた。


野次馬のような人だかりがそこにはあった。


「いいじゃあないか。ほんの数分だけさぁ~」


雑誌掲載が本当かどうか確かめたいだけさ


楽屋裏はどんどん取材記者が増えてしまう。


テレビ局のスタジオはさしあたり事故か事件現場である。


当局のカメラマンは背後からキャスティング決め騒ぎを撮っていた。


おいADのアンチャンよっ

融通をきかせろ。


「オマエこの世界に長くいたいんだろう」


少しホンネと建前を使い分けるんだ。


「ったくどこの大学出てんだ。出世したくないのか」

黒だかりの記者たちは楽屋裏に休むトレンディ俳優に真相を聞くだけさ。


「その他大勢の野次馬記者は話を聞けばおとなしく引き上げるからさ」


俳優に合わせててくれよ


「そっそんなあっ~規則は規則ですよ。スタジオ収録時間は間近に迫ります。役者さんの身にもなってください。迷惑ですよ」


早く楽屋裏から出てください。


ズンドコと押し問答


通路を役者さんのために空けてください。


ズンドコ


押してしまえば


気の短い記者たち


ADの分際で通せんぼするとは!


押しと防波堤が繰り返されてしまう。


ワイワイ


ガヤガヤ


狭い楽屋裏である。


収録をスタンバイする役者さんに騒ぎはわかってしまう。


「なんの騒ぎだ。朝からギャアギャアとやかましい」

セリフが覚え切れない。


「まったくいい迷惑だぜ」

主役クラスの俳優がひょいっと扉を開けた。


騒ぎの理由を知りたい


廊下を顔を出して眺めたのである。


ヌゥ~ボォ~


あっ!


いっいたぁ~


お目当てが!


トレンディ俳優が現れた。

いたって呑気な無防備な顔を出してくれた。


「お話を聞かせください」

突進あるのみ!


記者らは束になってトレンディ俳優に駆けていく。


「話?ああっいいよ。話ぐらいなら」


お安い御用だ。


「でっ君らはなんの騒ぎだ?宝くじ当たったのか」


騒いだ記者たちはポカンとしてしまう。


慌てず


騒がず


冷静沈着な眼差し。


さすがは役者である。


週刊誌スキャンダルなど知らぬ存ぜぬで済ませる腹なのか。


「お話を聞きたいのはこれですよ」


ゴシップ雑誌を見せた。


あっ~ん?


どんな雑誌かは一目瞭然


よく知っていた。


なにが書いてあるのだろうか。


最近のトレンディドラマの酷評があるのか。


首を傾げながらたいした疑問も持たないままパラパラめくる。


巻頭グラビアにヌード写真があった。お気に入りなモデルさんで一度ドラマで共演した記憶が甦る。


「なんだぁ!このお姉ちゃんかい?なにかしたの」


すっとぼけた話を記者に振る。


記者たちは目をギラギラさせてしまう。


"コイツは大した役者だぜっ"


雑誌パラッパラッ…


『トレンディ俳優の恋のお相手!シンデレラ姫は女学院』


なっ!


なんだぁ~


雑誌を掲げ後ろにのけ反りイナバウワーをしそうになった。


へぇ~


ホォ~


フムフム


写真は附属病院の病棟。背の高いトレンディ俳優(医師)がかわいい制服姿の女学院と撮られていた。


カラー写真であるが解像度がやや不安。隠し撮りの宿命でトレンディ俳優の本人かどうか焦点が甘かった。

なっなんだぁ~これ?


「俺は知らないぜ。この写真はデマっだぜ。背景は病院だろっ。なんで俺がいなくちゃならないんだ」


医者の役はおろか病院関係のドラマや映画は一切出演していない。


俳優デビューして以来の記憶を辿ってみる。これだけドラマの役を演じているのだ。


医者でなくとも白衣を着る役を思い出せ。


若い大学講師役をしたことを思い出した。


今の時代は合成アイコラ写真など簡単にできてしまうのである。


「この白衣の医者。俺なんか。たぶん俺だろうなぁ」

首を傾げてしまう。どこの写真を引っ張り無断掲載をしたのか。


「シンデレラ姫グランプリは女子高生ですよね」


ことと次第によってこの俳優は未成年との交遊問題に発展しかねない。


ゴシップが欲しい記者や芸能リポーター。それを聞き出そうと躍起になる。


当代人気の若手俳優。これから女優タレントにならんとする女子高生に手を出した。


「あっ!ああっテレビ局主催のやつはわかるよ。"シンデレラ姫を探せ!"オーディションは局の社運を賭けてってやつ」


知っていたよ。


「この写真の女子高生がグランプリだったのかい」


女子高生の顔を知らなかった。


ゴシップを突きつけられてもまったく記憶にないのである。


「知らなかったのですか?」


こんなにも可愛く純情そうな女学院の彼女を知らなかったというわけですか。


シンデレラ姫ですよ。


今やアイドル予備軍を抜け出していますよ。


グランプリ獲得以来知名度をグングン高めていこうかとする矢先ですよ


女子中高生を対象にしたアイドル雑誌に大々的にページを割かれている。


女学院の制服のままグラビアで掲載されていた。


知らなかったと告白する俳優は天下の嘘つきであるとレッテルを貼られてしまう。


「じゃあお聞きしますがね。この雑誌の男性は誰なんですか。トレンディ俳優のあなたにしか見えないけどなあ」


やいのやいの。


女子高生との恋仲を認めてくれないかっ


ガヤガヤ


俳優さんよ。正直になってくれないか。


アンタは売れっ子タレント。


トレンディドラマのはまり役で有名なんだろ。


若い女の子にキャアキャア言われて初めて給料がもらえる。


もてもてな証拠スキャンダルは初めてではないだろ。

ヤレヤレ


芸能リポーターらは週刊誌デスクとタイアップ。過去の女性関係を洗いだしてみる。


今日付けのワイドショーで垂れ流すハラである。


俳優として成功している今は探られたくはない過去の女性問題。


「そんなにガチャガチャ言い寄られても。知らないものは知らないよ」


このゴシップ雑誌はヤラセやガセネタを平気に垂れ流す。売らんがための悪徳さはつとに有名だ。


「俺のそっくりさんはいくらでもいるぜ」


そっくりさん登場は俳優の人気のバロメーターである。


演じたドラマの主役のそっくりさんが登場してお笑い芸人として活躍していた。

「女学院のそれらしき女の子も同じだ。タレント養成所から適当に探してパチリっとやったんじゃあないか」


知らないものは知らない。

ガンっとして


証拠写真など認めない。


「この写真の病院って実在かっ」


なんかなあっ。


「夜の繁華街のネオンでちょくちょくあるそんな世界じゃあないのかい」


スタジオの大道具かもしれない。


「ゴシップは勝手につくり出されたんだ」


こんな吹けば飛ぶような三流ゴシップ雑誌。


あることないこと。


"絵空事"を書き並べたに過ぎない。


「ゴシップなんざ虚偽の話だ」


名前を勝手に使われたんだ。


「言わば俺は被害者だ」


マネージャーを呼んでくれ。


所属のプロダクションを通しゴシップ雑誌に聞いてくれ。


「最悪は顧問弁護士を使い然るべき法的措置を取りたい」


ゴシップ記事はまったく身に覚えがないトレンディ俳優はだんだん怒りが込み上げてしまう。


しかし


「今日のスタジオ収録。運よく怒鳴り散らすシーンがあったな」


公私混同で怒鳴りまくってやれ 

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