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凶星のハイカラ乙女 ~明治ハレー彗星奇譚~  作者: 立花鏡河
五章 従順な執事

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第二十三話 予知夢

「これはこれは、ハイカラな娘さんたちが三人も……」


 まるで酔っ払いのように近づいていく能登のあとに、幻十郎も続く。


「――っ!」


 眉をひそめている赤いリボンの娘を間近で見て、幻十郎は息を呑んだ。

 なるほど、一目で恋い慕うようになるのも納得の美貌である。しかし、幻十郎が動きを止めたのは、脳裏をよぎるものがあったからだ。


 旧都に着いてすぐ、うたた寝したときに見た、美しい悪夢――。


 悲しそうな顔で「わたしを連れ出してくださいますか?」と願ってきた少女とそっくりではないか。そのあと大蛇に巻きつかれ、不吉な箒星とともに消え去った、あの可憐な女学生が、いま確かに幻十郎の眼前にいる。


(あれは予知夢だったというのか……?)


 そんな能力は持ち合わせていないはずなのだが……。幻十郎は動揺を抑えるのに必死だった。

 女好きの本領を発揮し、ここぞとばかりに偉ぶる能登に苛立ちを感じつつ、女学生三人との会話から情報を掴んでいく。

 赤いリボンの娘は、たしかに涼風家の令嬢で、琴音という名前だとわかった。


(この琴音という娘は侮れん)


 幻十郎の白いカッターシャツが、冷たい汗で湿っていく。

 元より気が強そうな娘ではあるが、そういったものとは別種の強さを備えている。


 琴音の透き通った瞳に見つめられるたびに、己のすべてを見透かされるような心地になるのだった。

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