幸運の白いカエル ~ 白いカエルを追いかけたら裏切り者が判明し、拗らせた初恋に掴まりました ~
読んでいただきありがとうございます。
先日庭で白いカエルを見つけまして、題材として書きたくなり書いてみました。
「マックス!もっと背筋を伸ばせ、剣を体の中心から外すな」
「はい。団長」
ガキーン。 キーン シャ。 「ハッ。 ハ」 ガキキーン。
剣が交わる音と、荒い呼吸が訓練場に響く。
お父様、今日もマックスに厳しいな~。
お父様に食らいつくマックスを見ながら幼い頃を思い出す……。
「今日も張り切ってるな!兄上は5歳のライリーにも容赦がなかったからな」
「叔父様。すみません副団長様!」
「今は誰もいないから叔父様でいいぞ。 ライリーの婿に貰うんだ、兄上も力が入るさ」
そう言ってニコニコ笑うサムエル叔父さんは、お父様の実の弟でアンダーソン侯爵家の婿に入ったが、第一騎士団の副団長を務めている。
「まあいい男に育つといいがな」
訓練場を眺める私の肩をポンポンと軽くたたいて叔父様は去って行った。
我がワイルダー伯爵家は剣術に秀でた家門で、代々第一騎士団長の任を務めている。
そんなワイルダー伯爵であるお父様は嫡男に恵まれず、子供は娘の私だけ。
私は小さな頃から跡取りとなるべくマナーや勉学はもちろん、剣術は特に厳しくたたきこまれた。
訓練場でお父様にしごかれているマックスは、ひとつ年上で若手の中では剣の腕は抜きん出ていて、その上優しい私の自慢の婚約者だ。
お父様が選んだ婚約者だけど、とても仲はいい。
「ライリー、来てたのか?」
「はい私の訓練も終わったよ~。今日は第二騎士団と合同訓練だったの」
近づいてきたマックスにタオルを渡す。
「ありがとう」
「お父様もどうぞ」
お父様にはお母様の刺繍入り専用タオル。
「マックス。剣の中心がブレなくなってきたぞ!いいかんじだ」
「ありがとうございます」
「ライリーはどうだ、ちゃんとサムエルについていける様になったか?」
「もちろんよ お父様。叔父様には合格点をもらっているわ」
入団して1年目の騎士たちは、副団長の下で騎士団本隊とは別に訓練と戦術などの勉強をする。
なかなか厳しいが、2年目以上の訓練はさらに厳しいらしい。
「サムエルはライリーに甘いからな、及第点と言ったところだろう」
「じゃあ。今度はお父様と手合わせしたいわ」
「俺と手合わせするのは、サムエルを倒してからだな。ははははは」
お父様は私の頭をバンバン叩くように撫でると、笑いながら去って行った。
「ライリー、明日の休みのことなんだけど、急に予定が入ってしまって来週にずらしてもらえないかな、埋め合わせはちゃんとするから」
「…………いいわよ、夕食には来れるでしょ?」
「いや夜までかかりそうなんだ……俺を待ってもらうのも悪いから抜きでやっておいて、来週二人だけでお祝いしよう」
明日は私の19歳の誕生日だ……急な用事かもしれないけどなんだか寂しい。
「わかった」
私はしょんぼりと頷いた。
✿ ✿ ✿
「ライリー無理やり誘って悪かったわね」
「いいのよ カミラ、私も予定がなくなっちゃったから」
カミラはサムエル叔父様の娘で私の従妹、今朝早くに突然伯爵家にやってきてどうしても買い物に付き合ってほしいと私を連れ出した。
きっとデートのキャンセルを聞いて、気を使ってくれたんだ。
「次の夜会の髪飾りがどうしても決められなの、だからライリーに一緒に選んで欲しいのよ。あと私からライリーにお揃いの髪飾りを誕生日プレゼントに送りたくて」
カミラはにっこり微笑んだ。
「それにしても、マックス様にはがっかりだわ、婚約者の誕生日をなんだと思っているのかしらね、我がアンダーソン侯爵家の力を使ってひねりつぶそうかしら」
「カミラありがとう、きっと大切な用事なのよ」
「大切なのはライリーでしょ。次に会った時にはヒールで思い切り踏んづけてて差し上げますわ」
「痛そうね~」
「まあ。今日はライリーを私が独占するからいっぱい楽しみましょう」
「そうね」
私達はジュエリーショップで小さな花を寄せ合わせ象られた髪飾りを購入した。カミラはプラチナブロンドの髪に映えるピンクダイアモンドが散りばめられているかわいらしい髪飾り、私のは同じ形で赤い髪に合うとカミラおすすめのパープルサファイアが散りばめられた髪飾り。
「高価だったのにいいの?」
「いいのよ、お父様からも良いものを選ぶように言われているんだもの、やっぱり女の子同士の買い物が一番楽しいわね~」
「ありがと、叔父様にもお礼を言わないとね」
「のどが乾かない?ちょっとお茶にしましょうよ」
「いいわね。あのカフェなんてどう?」
道の少し先に広いテラス席があるかわいらしいカフェがある。
「あそこなら歩いて行けるわね、行きましょう」
カミラとカフェに向かうと、ぴょこんと白い小さなカエルが跳び出してきた。
カエルはぴょんぴょんと跳ねて馬車道に飛んでいく。
「あら、危ない。カミラ待ってて、カエルが踏んづけられない様に助けてくる」
「すごい、ライリー カエル触れるの!」
カミラに手を振り白いカエルを追う。
「待ってそっちは危ないわよ~」
白いカエルは器用に人や馬車を避けてぴょんぴょん進んで、カミラと入ろうと話していたカフェの裏側に出た所でようやく捕まえることができた。
手のひらに乗せてまじまじと見るときょろきょろした瞳でかわいい。
「それにしても真っ白ね」
「ケロ」
白いカエルが小さく鳴いた。
「良かったわね♪潰されないで、川辺に行きましょう」
カフェの裏手は少し進むと川につながる小道がある。
カエルを連れて行こうとすると、カフェの開いた窓から私の名前が聞こえてきた。
「なんだかライリー様に悪いですわ~ね」
「いいんだよ。俺はあんな男みたいな女よりセーラの様にふわふわでかわいい女性が好きだ。今日もライリーの誕生日を祝ってほしくないと嫉妬してくれたセーラが愛おしいよ」
マックスの声……。
私はそっとカフェの個室を覗く。
そこには寄り添い口づけをかわすマックスとブロンドふわふわ髪のかわいい令嬢の姿……。
「でもマックスはライリー様と結婚するのでしょう?」
「セーラ心配いらない、伯爵家に入るためだけだ、愛しているのはセーラだけだよ。少しの間辛抱してくれたら直ぐにセーラを迎えに行くから」
私は二人から眼をそらすことも動くことも出来ずにいた。
マックスの裏切りや、だまされていた馬鹿な自分や、いろんな感情がごちゃ混ぜになり、ボロボロと涙が溢れだす。
「ライリー捕まえた?」
路地の向こうでカミラが呼ぶ声に、私は弾かれたように走り出した。
どんどん進んで川岸にたどり着きしゃがみ込む。
「ケロ」
カエルの鳴き声に眼を向けると、白いカエルは私の全速力に振り落とされる事もなく、腕にぺたりと張り付いて私を見上げている。
「白いカエルさん。私……振られちゃったみたい……。」
情けない自分に涙が溢れだして私は膝を抱えた。
しばらくすると白いカエルはまた「ケロ」と鳴いて私の腕から飛んで川にぽちゃんと入って行った。
その後もしばらく膝を抱えていると、いきなり私のポニーテールがグイっと後ろに引っ張られた。
上を向いた私の視界には、青空と癖のある黒髪に至極色の瞳を持つ美丈夫。
「おい。この赤髪10cm俺にくれ」
「はい~?」
突然の要求に調子はずれな声が出た。
「しかし酷い顔だな、鼻水も出てるぞ」
そう言って、青年は私の顔をハンカチでごしごしと拭く。
「あわわわ。自分でやります」
慌ててハンカチを受け取り、涙を拭う。
「あの…………離していただけませんか?」
青年は私の髪を掴んだまま離さない。
「断る。髪をくれると言うまで離さない」
断りの返事に驚き青年をよく見ると、肩にはさっきの白いカエル……そして濃紺に白獅子の刺繍が入ったこのローブは!第二騎士団長様!
「ああの……ランドルフ第二騎士団長様でいらっしゃいますか?」
「いかにも、私は第二副団長、バンクス侯爵家のランドルフだ」
私はあわてて礼を取る。
「お初にお眼にかかります、私はワイルダー伯爵が娘 ライリーと申します。お恥ずかしいところをお見せしてしまい申し訳ありません。ハンカチは新しいものを送らせていただきますので、こちらのハンカチはいただいてもいいでしょうか?」
「修正と確認がある」
「はい?」
「俺たちは以前に会ったことがある!会うのは初めてではない。そしてそのハンカチを受け取るということは、プロポーズを受け入れたと解釈していいか?」
「はい~?」
また素っ頓狂な声が出た。
第二騎士団長様は魔法の研究で魔塔にひきこもっていることが多く、お会いしたことがないはず……。
私が握るランドルフ団長のハンカチを見ると……紺色!
この国では求婚する際、男性が誠実に愛することを誓い紺色のハンカチを女性に送る。
求婚をお受けする女性は、自分の瞳と同じ色のハンカチを男性に送り返すのだが……。
ん~。いろんなことが起こりすぎて頭も気持ちも付いていかない……。
考え込む私にランドルフ団長は言葉を重ねる。
「お前の婚約者が屑だったことは先ほどコアから聞いた、もう障害は無いはずだ!
だいたい俺が先にライリーに求婚したのだぞ、7歳でワイルダー伯爵に魔導士の家門にライリーはやれないと会わせても貰えなくなったんだ!
ライリーだってお兄ちゃまのお嫁さんになると言っていただろ。なのに勝手にあんな奴と婚約して」
未だに私の髪を握りしめ、真横に立つランドルフ団長を見上げる。
少しだけ頬を染め、拗ねたように話す顔がなんだかかわいらしい。
「ふふ。ランドルフ団長様はおいくつになられるのですか?」
「なんで笑う。今年23歳になる」
と言う事は……私は3歳くらい……。
「あ~!ラルお兄ちゃま」
「漸く思い出したかこの」
ランドルフ団長は私の右頬をぶにーっと引き延ばす。
「痛いでしゅ。ランドリュフ団長しゃま~」
「ラルでいい」
「ランドリュフしゃま」
「ラル」
「ラルしゃま」
やっと頬を引っ張る手を放してくれた。
「あのラル様との記憶は、幼すぎておぼろげでしかないのです」
「思い出してくれたのだな。引っ張って悪かった」
ラル様が私の頬にそっと触れる。
手の暖かさに手をつなぎお散歩したりおままごとしたりいつもニコニコ小さな女の子の遊びに付き合ってくれたラル様のことを思い出された。
「今……少しだけ思い出しました、一緒に遊んだこと……会いに来てくれなくなって寂しかったこと……ラルお兄ちゃま」
「ライリー」
私はすっぽりラル様に抱きしめられて紺色のローブに包まれた。
ずっと私を好きでいてくれたんだ……。
私もそっとローブの下でラル様の背中に手を回すとラル様の腕に力が入る。
まだ掴まれていた髪が後ろに引かれて私の目線が上がった。
「きゃああ~。ラル様すぐ後ろに人が居ます!」
そこにはサラサラの白髪にグレーの瞳、白い騎士服を着た長身の男性がニッコリほほ笑んでいる。
私はラル様からじたばたして抜け出そうとするが細身なのに力が強くて全く抜け出せない。
「心配するな、コアだ」
ん?コア? さっきも聞いたような……。
「この方がコア様ですか?」
「主、そろそろ離してあげたら」
ラル様の腕の力が緩む。
「こんなところで話してるのもなんだから一度バンクス侯爵家に戻ろうよ、あっちはカミラ嬢がコテンパンにやっつけたよ」
「そうするか、ライリーのドレスも泥だらけだからな」
「それと!いい加減ライリー嬢の髪から手を離しなよ」
「断る。まだ髪を貰う約束をしてない」
コア様が大きなため息をついて私を覗き込む。
「ライリー嬢……主は、一度言い出すと聞かなくてね、魔法の研究のために赤い髪の毛というか、ライリー嬢の髪の毛が必要なんだ、1本でいいからくれない?」
「どんな魔法の研究ですか?」
「それはね~」
「コア!俺から話すからお前は元の姿に戻れ」
「はいはい」
返事をするとコア様はポンと白い煙に包まれて白いカエルの姿になった。
「コ コア様は……白いカエル!」
私が驚いて目をパチパチさせるとラル様が笑う。
「はは。コアは私に憑いている精霊だ。どうしてか俺を気に入って10歳の時から一緒に居る、姿はいろいろ変えられるが白いカエルの姿が一番多いな」
「精霊に初めて会いました」
ラル様の肩に這い上がる白いカエルをじっと見つめる。
「ケロ」
「本当に真っ白ですね、白いカエルを見ると良いことがあるんですって、ラル様はきっと毎日良いことがありますね」
「そうばかりでもない」
ぷいっとすねたように横を向くラル様に私は髪を一本抜いて差し出す。
「どうぞ、でも何に使うかちゃんと教えて下さい」
ラル様は髪の毛を受け取りぼそぼそとつぶやく。
「ライリーとの絆を強くしたかったんだ……。」
「ん?ちょっと聞き取りにくくて……。」
「ライリーとの絆を強くしたかったんだ!古代魔術でおまじないのレベルだが、俺はそれにもすがりたい状態だった!」
顔を赤らめ叫ぶラル様は、年上とは思えない愛らしさ。私は思わずラル様を抱きしめた。
「もうおまじないはしなくても大丈夫かもしれません。さっき振られたばかりなのに、ラル様と話していたらそんなことすっかり忘れちゃいましたから」
ラル様を見上げてほほ笑むと、あっという間にお姫様抱っこされて気がつけば広くて綺麗な応接室。
「ラル様は瞬間移動ができるんですか!」
今更遅いがラル様にしがみ付く。
「コアの力だ」
「あら~。遅いわよ~ライリー!それに泥だらけじゃない」
応接室のソファーには優雅にお茶を飲むカミラとサムエル叔父様……とバンクス侯爵夫人!
「ようやく拗れた初恋を連れて来たわね~。ランドルフ!早くライリー嬢を下ろしなさい、お母様がきれいに磨いてあげるから」
バンクス侯爵夫人の合図で大勢の侍女さん達が現れ、ラル様から私を引き剥がす。
担いで連れてこられた先は広いお風呂で、たっぷりのお湯に私は浸けられた。
侍女さん達のマッサージテクニックで目の張れはみるみる良くなり、綺麗に化粧をしてもらい、私はダークパープルのドレスを着せられる。
すっきりしたマーメードドレスの腰の部分には黒いバラの飾りがついている。
「ライリー様、この髪飾りをつけますね」
侍女さんが見せてくれた髪飾りは、カミラと選んだもの。
髪を整えてもらい、眼を開けるとすぐ後ろにバンクス侯爵夫人のパミラ様。
パミラ様は、カミラのお母様の妹君で、結婚する前は第一騎士団で抜群の強さを誇る女性騎士だった、私のあこがれの人。
「パミラ様」
私は慌てて立ちあがり、カーテシーをする。
「お久しぶりでございます」
「大きくなったわねライリー、15年ぶりかしら」
「あの、小さな頃のことはしっかり覚えていなくて、ランドルフ様の事も先ほど思い出したばかりなんです……。でも、パミラ様のことは父や叔父からよく聞いていて、私の憧れです」
「まあ。かわいいことを言うわね、かわいいライリーに免じて、大事な子供達を傷つけたワイルダー伯爵は私の鉄扇一発で許してあげることにするわ」
「ありがとうございます」
「さあ行きましょう。ドアの外でイライラ、ソワソワして待つ息子と、応接で勇談を話したくてうずうずしてるカミラが首の長くなってしまうは」
ドアを開けると本当にうろうろしながら待っているラル様。
私と対の正装に身を包み、胸元には赤いバラ。
「リー。とても綺麗だ」
ラル様が私に差し伸べた手をパミラ様が扇で弾く。
「いつ愛称で呼んでいいと言われたの?」
「母上……。」
膨れたラル様はパミラ様の反対に回り私の腕を取る。
「まあ」
パミラ様にも腕を組まれて……。
「私なんだか掴まった人みたいじゃないですか?」
「ほほほほ、そうね、かわいいわよ」
「そうだな」
話しながら二人がぎゅっと腕を引く。わいわいとにぎやかに応接室に向かい、お茶を飲みながらカミラの勇談を聞いた。
カミラは私が走り去るのを見て直ぐに二人に気づき、カフェの店長さんにお願いし、個室に二人を閉じ込めて、お父様と叔父様を呼んだ。
私の一大事だと知らされたお父様と叔父様は、各家の護衛騎士達を連れて集まり、セーラといるマックスを見つけて、主にお父様が指導を入れた。
「私ももちろん参戦したわよ~。二人の足をヒールで踏んづけてあげたの♪
今日は細くて固いヒールの靴にしておいてよかったわ」
「カミラ、セーラ様の足も踏んだの?」
「もちろんよ、男性はセーラを殴るわけにいかないでしょ!でも人の婚約者に手を出した上に、誕生日のお祝いまで邪魔しようなんてたちが悪いわ!私に踏まれて当然ね」
2人の足に穴が開いていませんように……。
「ワイルダー伯爵家とアンダーソン侯爵家の弁護士が、カミラに踏んづけられた二人の家に手続きに行ってそろそろワイルダー伯爵家に集まる頃だ、ライリーの誕生日パーティーも兄上が義姉さんに怒られながら、準備しているだろうからそろそろ手伝いに行こうか」
「そうね、お腹が空いたし行きましょう」
カミラが元気よく立ち上がる。
我が家には三台の馬車で別れて向かう……私はラル様と二人きり。
というか、ラル様はパミラ様が支度に立ち上がり退室するとすかさず私と馬車に瞬間移動して出発した。
そして私はベンチシートの端に追い詰められている。
「あのラル様、近いですね」
「そうだね、15年間離れていた分を取り戻さないと」
ラル様は私の腰に手を回し、反対の手でひとすくいだけカールして下した私の髪を握っている。
「あのラル様、さっき髪の毛は上げましたし、髪から手を離していただいてもいいですか?」
「うーん、断る。こうしていると安心する」
「あのあのでは!手をつなぎませんか?」
提案すると直ぐにラル様は手を繋いだ。
ここ……これは恋人つなぎでは!マックスとだってしたこと無いのに!
「リー。顔が真っ赤だよ。かわいいね」
ラル様は繋いだ手を持ち上げてキスをした。
うー。胸が焼けそうに熱いです~。ラル様~上目使いが殺人的です。
ドキドキで瀕死の私を乗せた馬車はワイルダー伯爵家に到着した。
なんだが門の周りが騒がしい。
馬車の窓から覗くと、マックスが伯爵家の騎士達と揉めている。
「ライリー。出てきてくれ誤解なんだ、ライリー」
いろいろあってマックスのことはもう悲しくなくなっていたけど……。
「誤解ですって!」
馬鹿にするにも程があるわ!私の気持ちは一気に冷え込んだ。
「ラル様、私、グリーン伯爵令息に会ってけじめを付けてきます」
「俺も一緒に行くよ」
ラル様にエスコートされて馬車を下りる。
マックスは私を見つけるとさらに大きな声で騒ぎ出す。
「ライリー。誤解なんだ、俺は騙されただけなんだ、セーラの体調が悪いと呼び出されたんだ」
マックスの顔は左目の回りが紫色になって腫れている。
「プㇵ。」
私は思わず笑ってしまった。こんな人に涙を流すなんてもったいない。
「グリーン伯爵令息様、嘘なんてつかなくてもいいのですよ」
「ライリー誤解だ。俺の話を聞いてくれ」
「ええ聞きましたよ、カフェの個室で話していたのを、私のような男みたいな女は好きではないのですよね、ふわふわでかわいいダール子爵令嬢が好きなのでしょ」
私の言葉を聞いて、マックスは青ざめ静かになった。
どうせカフェでの行いを知られていないと思っていたのでしょ。
「いや、セーラのご機嫌を取るためにしかたなくだ、ライリー信じてくれ」
「そのあと口づけもしていましたわね。婚約者の誕生日を急な予定だとキャンセルしどうして子爵令嬢のご機嫌取りをする必要があるのです!今のあなたは私にもダール子爵令嬢にも失礼です。
グリーン伯爵令息の行いは、騎士以前に人として最低!この屑のポンコツの人でなし!」
後ろで見守っていたラル様のあたたかな手が私の背中に触れる。
「私はもう関わりたくありませんので、どうぞダール子爵令嬢とお幸せに。これから私の誕生日パーティーですので、招待していない方にはお帰りいただいて」
私は追い払うように手を振り、ラル様にエスコートされて屋敷に向かう。
マックスは騎士たちに門の外に押し出されながらもまだ叫んでいる。
「ライリー、ライリーもう一度俺の話を聞いてくれ、ライリー」
「リーあいつ!燃やしてもいいか?」
「ダメです、ラル様が手をかける価値もありません」
「主、あいつは俺が送り届けておくよ、いつまでも門前にいられたら目障りだからな。ライリー嬢もかっこよかったぜ、最後の騎士以前に!あたりまでは」
ラル様の肩でカエルの姿のコアがくるんと一回転すると後ろで騒いでいたマックスの声が止んだ。
「あらコア様、カエルの姿でも話せるのですね、屑をどこに飛ばしたんです」
「うーん多分あいつの家……の近所の川」
「じゃあ今頃ずぶぬれね」
「自業自得だ」
ラル様と二人で声を上げてが笑う。
「ライリー置いてくなんてひどいじゃない」
カミラたちも到着してにぎやかな私の誕生日パーティーが始まった。
✿ ✿ ✿
そしてそして。
婚約は無事にマックスの有責で破棄され、マックスはグリーン伯爵家から除籍され、騎士伯として北部の辺境へ移動となった、もちろん愛するジール子爵令嬢も子爵家から縁を切られて一緒に向かう。
心を入れ替え、どうか二人で末永くお幸せに。
お父様は今回の事をお母様、アンダーソン侯爵夫人とパミラ様にしこたま怒られてすっかり意気消沈。第一騎士団の団長も辞してサミエル叔父様に託し、母と一緒に領地に行くための準備をしている。
団長となった叔父様は、剣術と魔術の連携を深めるため各々の力を生かすため、第一騎士団と第二騎士団を統合し、世襲が続き古い体制のままだった騎士団にメスを入れた。新しい仕事の仕方を整えている。
そして私は、ラル様の拗らせた熱く重い愛情にほだされて、すっかり心を掴まれて甘やかされる毎日だ。
「ラル様、そろそろ髪を離してください」
「断る。このひと房は俺のものだ」
コアが髪を掴むラル様の手にぴょんと飛び乗る。
私たちを結び付けてくれた幸せの白いカエルは 「ケロ」と小さな声でかわいく鳴いた。
~ 終わり ~
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