"交尾"
君の切開された、紅い内側に触れるたび
液躰音が、真っ白なタイル張りのこの部屋にはこだまする
その度に、君は汗ばんだ顔を僕に向けて吐息を漏らす
息の熱さが頬を何度も濡らしたが、躰の内から溢れた、誘うような絡み付く熱気に及ぶ程のものでは無かった
麻酔が効いてきたらしく、君は手術台の上で夢の世界の言葉を、呂律の回らない舌でうっとりと語り出す
良い音楽だ
僕は君の肉に指を差し込むと、確かめるように躰音の中を探った
君は苦しげに瞼を降ろした表情で背筋を引き攣らせ、死にかけた蛇のように身をくねらせる
あまり苛めても悪い
僕は手近な肉を摘み、軽く引き伸ばすと、メスでゆっくりと引き切った
まずは舌に載せる
苦味───或いは臭みなのかも知れない
雑味が強く、『生食には適さない』と瞬時に解った
間の悪いことに、君はもう麻酔に慣れてしまったらしく、ぼんやりと顔を起こし、僕を真っ直ぐ視詰めて居た
「お前が『食べたい』って言ったのにさあ」
「………なんで、そんな不味そうに食べるの?」
君の瞳が、濡れて居る
僕は少々の狼狽を覚えながらも、「直ぐに最良の調理など、視付かる訳が無いさ」と返した
もう一切れを、切り取る
君が「それは」「どう食べるの」と身を乗り出して聞き始めたので、僕は更に狼狽えた
「揚げたりとか……」
「臭いの?」
言えなかった
そもそも、幾ら麻酔が効いて居ても、あまり傷口を広げたり出血を増やすべきでは無い
君を宥める必要が在った
「なんか、調味料とか───」
「美味しくないの?」
気不味い沈黙が続いた為、僕は観念すると「………待って」「君も」「僕を食べてよ」と服をはだけ、いそいそと君の躰を縫合した
君の表情が、みるみる明るさを取り戻す
縫合が終わるや否や、君は僕に飛び付いてメスを取った
「あっ………」
「待って!先ず麻酔とかさ……」
床に組み敷かれた僕を、舌舐めづりの顔が視下ろして居る
そもそも君は麻酔の扱いを把握して居なかったし、使ってもく呉れ無かった




