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『虐殺機関』『ハーモニー』の評論会(中編 間奏)

 読み終えた直後の空気には、言葉では言い表せない重みがあった。


 ページを閉じた音さえ、どこか遠く感じるほど、談話室の空間は沈黙に満ちていた。

 蛍光灯の明かりが、明るく棚の影を長く引き延ばしている。


 机の上には、二冊の書物。

 一冊は黒に沈んだ『虐殺器官』、もう一冊は白で冷たく整えられた『ハーモニー』。

 シンプルだが、どちらも、触れてしまえば何かを引きずり出されそうな、そんな存在感を放っていた。


 言葉を発する者は誰もいなかった。


 雨が静かに降り続けている。

 その音だけが、まるで呼吸のように、天井の木材に染み渡っていた。


 そして――それは誰からともなく訪れた。

 一人、また一人と、体の力を抜くように床へと身を沈めていく。


 アイ、アール、そしてエヌ。


 異世界の床材から着想を得た繊維質の材質で出来た柔らかい床の上に、背中を預けた。

 

 「……まったく」


 ぽつりと呟いたのは、唯一立ったままのエルだった。


 窓の外、にじむ景色を見つめながら、彼はため息をひとつつく。


 「やれやれ、少し読むのに疲れる本だったな……」


 けれど、その横顔はどこか、やわらかく緩んでいた。


 雨が降る外の風景は、まるで今の彼らの気持ちを表すかのようだった。

 アイ、アール、そしてエヌは異世界の材質に覆われた床の上で静かに横になっていた。

 エルは、そんな彼らを見下ろすように、窓の外の雨を見ながら立っていた。

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